進学や就職のタイミングで地元を離れる若者が多い中、地域に根差した人材の育成と定着を目指した奨学金制度が注目を集めている。島根大学と地元企業による「県内定着奨学金」は、その好例と言えるだろう。
この奨学金は、島根大学が地元企業と連携して実施しているもので、寄付金を原資に3年生以降の学生に年間15万円が給付される。特徴的なのは、卒業後に島根県内で就職すれば返済義務が免除されるという点である。つまり、地元で働くことを選択すれば、奨学金が“給付型”となる仕組みだ。
2025年度には、出雲村田製作所が協定企業として新たに加わった。同社は既に島根大学から毎年10数人の学生を採用しており、大学と企業との結びつきは強い。こうした連携が、奨学金制度という形でさらに実を結びつつある。
現在、島根大学の卒業生における県内就職率は約3割にとどまっている。都市部の企業や進学先を選ぶ学生が多い現状ではあるが、地元に就職することが経済的なメリットにもつながるとすれば、選択肢のひとつとしてより現実味を帯びてくるだろう。
奨学金というと「借金」のイメージが根強い。しかし、こうした“返済不要”を条件に含む制度が増えつつあることは、学生にとって大きな希望だ。特に、就職という人生の大きな節目を考える際、自分のルーツや地域社会との関わりに目を向けるきっかけにもなり得る。
大学側も、奨学金のさらなる拡充に向けて産学連携の強化を進めている。研究開発だけでなく、奨学金という形で学生支援にも力を入れていく姿勢は、地域社会にとっても大きな財産だ。
地元で学び、地元で働く。そんな選択を後押しする「県内定着奨学金」は、若者と地域の未来を結ぶ大切な架け橋になっている。返済不要という条件のもと、自らの進路を考える一つの材料として、今後ますます多くの学生に知られてほしい制度である。
出典元:県内就職で返済必要なし年間15万円「県内定着奨学金」島根大学が出雲村田製作所と連携協定(島根)|FNNプライムオンライン