奨学金といえば、「将来返さなければならない借金」として重くのしかかるイメージがいまだに強い。しかし、世界には「返済不要」で、学びたいという意志と社会への貢献意欲を重視して学生を支える奨学金制度も存在する。その代表格が、スタンフォード大学の「ナイトヘネシー奨学金」だ。
この奨学金制度は、世界中の優秀で多様な背景を持つ学生に、最大3年間の大学院教育を無償で提供するもの。特筆すべきは、単に経済的な支援を行うにとどまらず、リーダーシップ育成に焦点を当てた「キング・グローバル・リーダーシップ・プログラム」と呼ばれる独自の教育プログラムが用意されていることだ。奨学生はここで、多文化・多分野の仲間とともに学び、協働しながら、世界の課題に取り組む力を養っていく。
2025年度には、25か国から選ばれた84名が新たに加わった。これまでに合計597人がナイトヘネシー奨学金を受け、世界中の大学院課程で研究を進めている。奨学生の中には、家族の中で初めて大学を卒業した人も多く含まれており、経済的な背景に左右されず、志や可能性で選ばれる制度であることが分かる。
注目すべきは、この奨学金が完全に返済不要であることだ。これにより、卒業後に莫大な借金を背負うことなく、自分のキャリアや志を自由に選択できる。社会貢献性の高い道や、報酬よりも意義を重視した進路を選びやすくなるという点で、奨学生にとっては単なる「お金の援助」ではなく、「自由と選択肢を得る手段」となっている。
奨学金を「借金」ではなく「投資」と捉えるナイトヘネシー奨学金の理念は、世界が今求めている人材像にも直結する。多様性を尊重し、リーダーシップを育み、社会課題に立ち向かう若者たちを支えることは、長期的に見て社会全体への大きな還元につながる。だからこそ、この制度は世界最大級の寄付による大学院フェローシップとして、多くの注目と支持を集めている。
今、日本でも返済不要の給付型奨学金制度の拡充が求められている。スタンフォード大学のようなモデルを参考に、奨学金制度そのものの在り方を問い直す時期に来ているのかもしれない。経済的な壁を越えて、誰もが未来を描き、挑戦できる社会の実現へ──その第一歩が「返さなくてもよい奨学金」にある。
出典元:ナイトヘネシー奨学金制度(Knight-Hennessy Scholars)が、2025年度の新奨学生コホートを発表|KYODO NEWS PRWIRE