奨学金を借りて進学した多くの若者が、卒業後にその返済に苦しんでいる日本。進学は夢や希望への第一歩であるはずなのに、社会に出ると同時に「借金生活」が始まるという現実に、多くの人が違和感を覚えています。そうした中、企業や団体による返済不要の奨学金制度が、若者たちにとって光となっています。
全国でビジネスホテルを展開するルートイングループが設けた「ルートイングループ奨学金」は、まさにその一例です。この制度は、長野県内の児童養護施設や里親の元で暮らす高校生年代の若者たちが、大学・短大・専門学校に進学した際に、月額5万円の奨学金と、入学時には一時金10万円を給付するというものです。しかも、これらはすべて返済不要。経済的な不安を抱えながらも進学を目指す若者たちにとって、これは非常に大きな支えとなります。
ルートイングループは2015年度から長野県への寄付を通じて同様の支援を続けてきましたが、2025年度からはグループ独自の制度として再スタート。これまでの10年間で85人の学生を支援してきた実績があります。「未来を担う学生を支え、地域社会への貢献を継続したい」という思いが込められたこの制度は、企業による教育支援の好例として注目されています。
奨学金は、本来「学ぶ意志のある若者の背中を押す」ものであるはずです。しかし現実には、多くの学生が奨学金という名の借金を背負い、数百万円という金額を20年近くかけて返済することも珍しくありません。卒業後の進路や働き方、さらには結婚・出産といった人生設計にも影を落とす存在になっていることが、たびたび社会問題として取り上げられてきました。
だからこそ、ルートイングループのような返済不要型の奨学金制度が持つ意味は大きいのです。特に、児童養護施設出身者や里親の元で育った若者は、社会的・経済的なサポートが限られていることが多く、進学をあきらめざるを得ないケースもあります。そんな中で、「学びたい」と願う気持ちに寄り添い、返済の心配なく進学を後押しする制度は、人生そのものを変える力を持っています。
奨学金のあり方は、これからの社会のあり方とも深く関わっています。すべての若者が経済的事情によって夢をあきらめずに済むように。そして、学んだ知識や経験を、将来社会に還元できるように。返済不要型奨学金のさらなる拡充と、それを支える社会的な仕組みづくりが求められています。企業、行政、そして私たち一人ひとりがその意義を理解し、関心を持つことが、教育と未来を守る第一歩となるでしょう。
