奨学金という制度は、経済的な事情で進学をためらう若者にとって大きな助けとなります。しかしその一方で、卒業後の返済負担が人生設計に重くのしかかり、進学をためらわせる原因にもなっています。とくに、社会的養護のもとで育った若者にとっては、経済的な支えを得にくく、進学や自立への道がより険しいものとなりがちです。
そうした状況の中、日本財団が実施する「夢の奨学金」は、返済の必要がない給付型奨学金として注目されています。この制度は、18歳から30歳までの社会的養護の経験を持つ若者を対象に、学費だけでなく生活費や転居費、教材費、さらには留学費まで支援するという手厚い内容です。大学や専門学校などの正規の最短修業年限までを対象とし、生活費についても、高等教育修学支援新制度の対象か否かに応じて3万円または10万円を毎月支給する仕組みです。
また、引っ越しの初期費用となる転居費30万円の支給や、年12万円の教材費、さらには条件付きながら最大70万円までの留学費もカバーされており、学びの機会を広げるための配慮が随所に見られます。さらに、奨学金を受給する若者にはソーシャルワーカーによる継続的なサポートも提供され、単なる経済的支援にとどまらず、生活や精神面での伴走型の支援が行われる点も大きな特徴です。
このような制度の存在は、奨学金の返済という現実的な問題から若者を解放し、安心して学びに専念できる環境を整える重要な一歩となります。とくに、家庭的な支援を受けにくい環境にあった若者にとっては、将来の選択肢を自らの努力と希望によって切り拓く大きなチャンスとなります。
日本財団「夢の奨学金」第11期生の募集は、2025年6月2日から6月30日まで。採用予定人数は20名程度と限られていますが、ただ経済的な支援をするだけでなく、生活全体をサポートしようという理念に基づいたこの制度は、まさに「夢」を現実に変えるための強力な後押しとなるでしょう。
奨学金返済に悩む時代から、支え合いによって学びが保障される時代へ。こうした制度がもっと広まり、より多くの若者が自立に向けた一歩を踏み出せる社会の実現が期待されます。
