日本学生支援機構が実施する奨学金制度において、約4万4千人の学生への支給が遅れていることが明らかになった。背景には、多子世帯向けの授業料減免制度の拡充による申請件数の急増があるとされている。
文部科学省によると、奨学金の支給は当初6月11日に約138万人分が予定されていたが、事務処理が追いつかず、うち約4万4千人への4~6月分の支給が遅れる事態となった。遅延分のうち約2万7千人分はすでに6月20日までに支給され、残る分も6月25日までには支給が完了する見込みだという。
支給の遅れによって、生活費の確保が困難になる学生も出ていることから、日本学生支援機構では事情に応じて個別対応を行っている。奨学金は多くの学生にとって生活の基盤となる重要な制度であり、支給遅延は生活や学業に直結する影響を及ぼしかねない。
今回の遅れの原因とされる多子世帯への支援制度は、今年度から所得制限が撤廃され、新たに約41万人の学生が対象となった。これにより、奨学金の申請件数は5月末時点で約51万件となり、前年同期比で31万件増加している。
文科省は、多子世帯支援の周知不足や申請手続きの煩雑さを踏まえ、「申請期間内に間に合わなかった」とする学生の声にも対応する形で、申請期限を6月末まで延長するよう各大学に通知を出している。
阿部俊子文部科学相は20日の閣議後会見で、「学生への支援が遅れるという事態はあってはならない。引き続き学生支援機構に対して迅速な対応を求める」と述べた。
今後も制度の拡充と事務処理体制の強化が求められる中、奨学金の安定的な支給体制の確立が急務となっている。奨学金制度は、多くの学生の進学や学業継続に欠かせない存在であり、制度拡充に伴う事務負担への対応が今後の課題として浮き彫りになっています。