若者支援を行う奨学金プラットフォーム運営企業の株式会社ガクシーと、新卒採用コンサルティングのシーズアンドグロース株式会社(SAG)が提携し、学生支援と企業の採用活動を融合させた新たなサービスを開始した。この取り組みは、学生に「働くことを前向きに捉えるきっかけ」を、企業には「これまで出会えなかった学生層との接点」を提供することを目的としている。
新サービスの背景には、経済的理由で夢を諦める学生が後を絶たないという現実がある。現在、学生の約半数が奨学金を利用している一方で、高等教育費用のうち奨学金が占める割合はわずか1割程度。ガクシーの試算によると、年間16兆円の教育費に対して、奨学金の支給額は約1.6兆円に過ぎない。また、アルバイトの影響で企業研究やインターンシップに十分に取り組めないなど、就職活動に必要な“機会”を失っている学生も多い。
一方、企業側も採用市場の売り手化によって「自社を志望する学生を集められない」といった課題に直面している。知名度や業界格差、仕事内容の見えにくさが、採用活動における大きな障壁となり、採用単価の上昇にもつながっている。
こうした課題に対する解決策として、両社が開発したのが「カレッジ型イベント(R)」と「シン・奨学金」の連携による新サービスだ。企業は奨学金スポンサーとして「シン・奨学金」を創設し、SAGが主催する「カレッジ型イベント(R)」に参加した学生の中から選考を行い、給付型奨学金を提供する。奨学金の設計から運用、支給までのプロセスはガクシーが一括でサポートする。
「カレッジ型イベント(R)」は、学生が社会人としての基礎知識や就職先選びの判断基準を学ぶ場として設計されており、企業による一方的なPRではなく、第三者であるSAGが学生の不安払拭や企業の魅力訴求を行う点が特徴。開催数は初年度の約15倍にまで増加しており、企業・学生双方から高い評価を得ている。
「シン・奨学金」は、企業や個人の支援意志を形にするオーダーメイド型の奨学金制度で、設立数は前年比約50倍と急成長している。企業にとっては、採用にかけていたコストを直接的な学生支援に充てることで、より確かな採用母集団の形成が期待できる。
学生にとっては、イベント参加を通じて業界や企業選びの視野を広げるとともに、奨学金による経済的支援を得ることができる。一方で企業にとっては、支援を通じて学生と信頼関係を築き、より深いマッチングが可能となる。
奨学金が単なる経済支援の枠を超え、学生と企業をつなぐ新たな接点となる時代。今後はこのような「出会いの創出型奨学金」が、採用活動と教育支援の両輪として、さらに広がっていく可能性がある。