奨学金返済問題は、現在の日本社会において大きな課題となっています。その一例として、病気などで親と死別した遺児らを支援する「あしなが育英会」が挙げられます。今年の高校入学者向け奨学金の申請者数が前年の1.4倍に急増し、過去最多の1800人に達しました。しかし、その急増に伴い、資金不足で約1000人が奨学金を受けられない事態が発生しました。
あしなが育英会は、遺児らを支援する国内最大規模の民間団体であり、半世紀以上にわたり約11万人の遺児らに奨学金を支給してきました。しかし、昨年の制度変更が問題の背景にあります。2023年春入学から貸与を廃止し、返済不要の給付型奨学金に一本化しました。この変更により、これまで返済が心配で申請を躊躇していた家庭も積極的に申請するようになりました。しかし、給付額の増額(2万円から3万円)と貸与廃止により、支給人数が減少する結果となりました。
この制度変更は、低所得世帯が将来の返済を心配することなく奨学金を受け取れるようにするためでした。しかし、資金不足が深刻化し、支給対象者を大幅に減らさざるを得ない状況に陥っています。昨春の募集定員を650人に絞ったにもかかわらず、今春の申請者数は急増し、約800人を超える申し込みがありましたが、不採用者は2年間で1600人以上に上りました。
今春不採用となった約1000人に支給するには、卒業までの3年間で10億円以上の追加資金が必要です。しかし、あしなが育英会の寄付金収入は伸びておらず、さらなる増枠は困難です。以前の「貸与・給付一体型」に戻せば支給人数を増やせる可能性がありますが、低所得世帯を救うという本来の目的が達成できなくなる恐れがあります。
奨学金返済問題は、個々の学生の将来に大きな影響を与える重要な課題です。持続可能な支援策を実現するためには、多くの関係者が協力し、資金確保と制度の改善を進める必要があります。この取り組みが、将来の社会を支える若者たちの未来を守るために不可欠です。