犯罪被害者の子どもを支援するために生まれた「まごころ奨学金」制度が、振り込め詐欺などの被害金をもとに活用され、その給付総額は2013年度からの10年間で約7億6000万円に上ります。この制度は、犯罪に巻き込まれた家族の子どもたちが、経済的な支援を受けながら学び、社会への一歩を踏み出す手助けをしています。
「まごころ奨学金」は、詐欺等で金融機関が凍結した被害者の口座の資金から、返金申請が無かった分などを活用しており、自身や保護者が犯罪被害に遭った高校生から大学院生までが対象となっています。月に1万7000円から5万円までの学費と、5万円から30万円の入学一時金が支給されます。この支援の実務は、「日本財団」が担当しており、被害者相談員が奨学生に専門知識を提供し、申請時には家族の悲劇に関連する事情にも精神的なサポートが行われています。
制度の特徴的な変遷として、2017年度からは返済不要の給付型に変更され、その後も奨学生数が増加し続け、2022年度には約1億3000万円が支給されました。しかしながら、被害者相談員の不足や育成の課題などもあり、支援の充実が求められています。
一方で、国や自治体からの給付金や見舞金があるものの、被害者支援の体制はまだ十分ではなく、昨年警察庁が給付金の増額を議論するなど、課題も浮き彫りになっています。全国知事会も自治体への財政支援を求め、被害者支援策の充実を提言しています。奨学金を通じた支援が広がる中で、社会全体での被害者支援の強化が喫緊の課題とされています。