都市部の中学生が地方の公立高校へ進学する「地域みらい留学」を支援する新たな奨学金制度が創設された。一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォームは、「地域みらい留学奨学金」を2026年度入学予定の新入生約30名を対象に提供し、3年間で総額100万円を給付する。返済不要の給付型奨学金として、2025年6月22日から応募受付が開始される。
「地域みらい留学」は、都市部の中学生が地方の公立高校に進学し、その地域で生活しながら3年間学ぶ取り組みとして2018年にスタート。2019年度から本格的な受け入れが始まり、2025年度には全国169校が参加、留学生数は950人に達し、累計では4,000人を超えている。地域の公立高校の活性化と、都市部の生徒への新しい学びの選択肢提供を目的とした取り組みだ。
新たに創設された奨学金制度は、家庭の経済的事情により進学を諦めざるを得ないケースが存在する中、そうした障壁を取り除くことを目的としている。奨学金の内訳は1年次に40万円、2年次と3年次にそれぞれ30万円を支給。2026年3月に中学校を卒業予定で、居住する都道府県以外の地方公立高校へ進学する意思がある生徒が対象となる。
経済的な支援の必要性については、前年度の世帯年収が910万円未満を目安とし、奨学生としての活動(レポート提出や交流会参加など)への協力も求められる。応募は2025年8月31日まで受け付けられ、同年9月20日にオンライン面接、9月25日に結果が発表される。
「地域みらい留学」が注目される背景には、少人数教育による手厚い指導、地域課題に取り組む実践的な学び、多様な進路支援など、地方公立高校ならではの教育価値がある。実際に同制度を活用した生徒からは「将来を考える視野が変わった」との声も寄せられており、地域の教育資源の活用が個人の成長に繋がっていることがうかがえる。
専務理事の尾田洋平氏は、「経済的な理由で地域みらい留学を諦めることなく、すべての子どもたちが自分らしい成長を目指せるよう支援したい」と語っている。高校無償化が進む中でも、寮費や生活費といった現実的な負担は依然として大きく、今回の奨学金制度がその壁を取り除く手段として期待されている。
この新たな奨学金制度は、都市と地方の教育格差を埋め、すべての中学生に多様な進学の道を提示する重要なステップとなりそうだ。