日本経済は緩やかな回復傾向にあると言われていますが、一方で倒産する企業も相次いでいます。
奨学金を返済している方の中には、倒産などが原因で無職になり、奨学金の返済どころか生活費の捻出が難しくなっている方もいるでしょう。
この記事では、奨学金返済ができない無職の方に向けて、返済負担を減らす制度や対処法について解説します。
無職になり奨学金返済ができない場合にまず確認すべきこと
会社の経営不振などが原因で無職になってしまった場合は、冷静に状況を把握して、しかるべき相手に相談することが大切です。
まずは、奨学金返済が困難な状況を正確に把握して、これ以上の不安やストレスを抱えずに済むように、さまざまな協力を得ましょう。
奨学金返済が困難な状況を正確に把握する方法
まずは借入中の奨学金に関する状況を把握しましょう。
日本学生支援機構(JASSO)から奨学金を借りている場合は、スカラネット・パーソナルから奨学金の総額や残債を確認できます。
月々いくら返済する必要があるのか、そして返済が今後どのくらいの期間にわたって続くのかを把握しましょう。
次に、現在の収入と支出について整理します。
収入から家賃や水道光熱費、食費、通信費といった生活費を差し引き、どのくらいの資金が残るのかを確認しましょう。
これにより、奨学金を全額返済する余裕があるのか、一部なら返済できるのか、返済する見込みが一切ないのかを判断できます。
日本学生支援機構(JASSO)の相談窓口を利用する重要性
日本学生支援機構(JASSO)では、奨学金の返済が困難になった方に向けた相談窓口を設けています。
相談窓口では、後述する支援制度の紹介や支援制度を利用するための条件などを教えてくれるため、滞納や延滞を防ぐ可能性を高められるでしょう。
家族や支援者に相談するメリット
無職になったことや奨学金などの支払いが困難になったことを、家族など周囲の人に相談するのは勇気が必要でしょう。
しかし、支援者に相談することにより、不安やストレスを一人で背負う必要がなくなり、精神的なゆとりを得られます。
真摯な姿勢で相談をすれば、家族や親族が一時的に生活費を支払ってくれたり、奨学金の返済を肩代わりしてくれたりするかもしれません。
また、自分では思いつかなかったような解決策を授けてくれる可能性もあります。
お金に関する悩みは一人で抱え込まず、誰かに相談して共有することが大切です。
奨学金返済負担を軽減するための支援制度とは?
奨学金の返済が困難になった場合、支援制度を利用して返済負担を軽減できる可能性があります。
ここでは、日本学生支援機構(JASSO)が提供する返済猶予制度の申請方法や延滞金の支払いを避けるための対策などをご紹介します。
返済猶予制度の仕組みと申請方法
日本学生支援機構(JASSO)では、一定期間にわたり奨学金の返済を一時停止できる「返還期限猶予」という制度を設けています。
これは、なんらかの事情により経済的な困窮状態にある方を対象にした制度であり、無職の方も利用可能です。
申請が認められると、最長で10年間にわたる猶予期間が設けられ、その間は奨学金の引き落としが行われません。
また、利息も発生しないため、支払総額が増加しないこともメリットです。
返還期限猶予制度を利用する場合は、まずJASSOの公式ホームページから「返還期限猶予願」をダウンロードしましょう。
これに必要事項を入力し、雇用保険受給資格者証や離職票のコピーを添えて提出します。
申請方法は、スカラネット・パーソナルを利用したオンライン、もしくは郵送のいずれかです。
返済額を減額する制度の活用方法
日本学生支援機構(JASSO)が提供する「減額返還制度」も利用を検討する価値があります。
これは、月々の奨学金返済額を最大で4分の1にまで減額できる制度です。
月々の返済額が2万円と仮定した場合、4分の1の減額が認められると、月々の返済額を5,000円に抑えられます。
減額返還制度も、無職になって返済ができない方が利用できる制度です。
申請する場合は、JASSOの公式ホームページから「減額返還願」をダウンロードしましょう。
必要事項を記入し、所得がないことを証明する書類のコピーを添えてJASSOに郵送すると審査を受けられます。
延滞金を回避するための事前対策
奨学金の返済が遅れた場合、偏差期日の翌日から返済日までの延滞金が発生します。
延滞金の支払いを回避するためには、できるだけ早く日本学生支援機構(JASSO)の相談窓口に連絡しましょう。
少しでも早く支援制度を申請し、適用することにより、延滞金の発生を防ぎやすくなります。
無職の状態でも奨学金返済を進めるための対処法
無職になって現時点では奨学金の返済ができない方でも、行動を起こすことにより、素早く奨学金の返済を再開させやすくなります。
そのための具体的な対処法をご紹介しましょう。
副収入を得るための具体的な方法
無職になり、再就職先が見つかるまでの間に時間がある場合は、単発や短期間のアルバイトを行うと良いでしょう。
求人サイトを活用すると、日払いの仕事が見つかる場合もあります。
Uber EATSなどのフードデリバリーサービスを利用して副収入を得ることも有効です。
仕事をするのが難しい場合は、フリマアプリを利用して、不用品を販売するのも良いでしょう。
節約して返済資金を確保するコツ
節約をする場合は、まず高額な出費となる固定費を見直しましょう。
家賃が安い賃貸物件に引っ越したり、格安SIMに乗り換えてスマホ代を浮かせたりすると、返済資金を確保しやすくなります。
不要なサブスクリプションに加入している場合は解約したり、外食を控えて自炊を増やしたりする節約術も有効です。
小額ずつ返済を続けるメリット
先述した支援制度を活用すると、月々の返済額を少額に抑えられます。
返済期間が長引くことはデメリットですが、返済実績を維持できることや返済期間を着実に短縮させられることはメリットです。
また、無理のない範囲で返済を続ければ自己肯定感も高めやすいため、前向きな気持ちで奨学金残債と向き合いやすくなるでしょう。
奨学金返済ができない状態を放置するとどうなる?
無職になり、奨学金返済ができない状態で最も避けるべきなのは、返済をせずに放置することです。
ここでは、奨学金返済ができない状態を放置するリスクについて解説します。
延滞が信用情報に与える影響
奨学金の延滞を続けると、債権者は信用情報機関に滞納の事実を伝えるため、いわゆる「ブラックリスト」に登録されてしまいます。
この場合、その後の生活に与える影響は甚大です。
信用情報に傷が付くと、将来的に住宅ローンや自動車ローンを申請した際の審査が不利になり、ローンを組めなくなる可能性が高いでしょう。
また、クレジットカードの新規発行や更新、携帯電話の割賦購入が難しくなることも信用情報に傷が付くデメリットです。
延滞金が発生する仕組みとそのリスク
日本学生支援機構(JASSO)では、返済期日の翌日から返済完了までの期間において、年利3%の延滞金を請求しています。
延滞金は日割り計算で加算され、延滞期間が長引くほど金額が増えるため、注意しなければなりません。
延滞金は、元金や利息とは別に請求され、返済負担がさらに増えます。
法的措置を避けるための行動とは?
延滞が長引くと、訴訟や差し押さえといった法的措置を執られる可能性があります。
これを避けるために重要なのは、債権者への連絡をせずに延滞を放置しないことです。
無職になり返済ができないことを相談窓口に伝えると、適切な支援制度の紹介を受けられる場合があり、法的措置を避けやすくなります。
奨学金返済を再開するための計画の立て方
先述した支援制度を活用できたとしても、奨学金の支払いが免除されるわけではなく、将来的には奨学金の返済を再開する必要があります。
ここで重要なのは、返済困難な状況に逆戻りしないように、綿密な資金計画を立てることです。
そのためのポイントを見てみましょう。
返済計画を再構築するステップ
返済計画を再構築する流れをご紹介します。
<返済計画を再構築するステップ>
・ステップ1:奨学金の残債や月々の返済額を確認する
・ステップ2:支出と収入を整理して、返済に充てられる金額を把握する
・ステップ3:日本学生支援機構(JASSO)などの債権者に相談する
・ステップ4:月々に無理なく返済できる金額や完済できる時期を再設定する
無職の方の場合、再就職先で得られる給与によって返済できる金額が変動します。
定期的に上記の手順で返済計画を再構築し、返済に充てられる金額を見直しましょう。
就職活動と返済計画を両立する方法
安定した収入を得ることが最優先のため、まずは就職活動を優先しましょう。
採用が決まるまでの間は、アルバイトなどで収入を得ておくと、生活費や奨学金の返済額を捻出しやすくなります。
また、再就職が決まり、新しい給与がわかれば、具体的な返済計画を立てやすくなります。
長期的な返済目標を設定する重要性
奨学金の支払いは最長で20年間と長く、支援制度を利用する場合はさらに長期間に及びます。
そのため、長期的な視野を持ち、無理のない返済目標を設定することが重要です。
奨学金の返済期間中には、結婚や出産、住宅の購入といったライフイベントも発生するでしょう。
奨学金の返済に充てる金額を増やしすぎると、これらのライフイベントに必要な資金を捻出できません。
反対に、返済期間が長すぎると、中高年になった後も奨学金を返済しなければならず、老後の生活に影響を及ぼす可能性もあります。
これらの将来設計を意識して、繰り上げ返済も検討しながら、自分自身と家族にとって最適な返済目標を設定しましょう。
奨学金返済をサポートしてくれる相談窓口や機関
無職になると、将来の見通しが暗くなり、奨学金の返済が続くという現実が重くのしかかります。
先述したように、家族など身近な人に相談することも大切ですが、より専門的なサポートを受けられる窓口や機関に相談することも有効な解決策の一つです。
ここでは、奨学金返済をサポートしてくれる相談窓口や機関をご紹介します。
日本学生支援機構(JASSO)の返済相談窓口
日本学生支援機構(JASSO)から奨学金を借りている場合は、まずJASSOの「奨学金相談センター」に相談しましょう。
JASSOへの相談は、電話やWebサイトの「スカラネット・パーソナル」、または各地域に設置されているJASSOの対面窓口から行えます。
JASSOが行っているサポートの内容はさまざまです。
減額返還制度などの支援制度を適用できるか確認したり、今後の返済計画について専門的な目線からアドバイスを受けたりもできます。
無職で返済ができないことを打ち明けるのは勇気が必要ですが、親身になって相談に応じてくれるため、まずはJASSOの返済相談窓口に連絡しましょう。
金融機関の相談窓口でできること
日本学生支援機構(JASSO)以外の金融機関から奨学金を借りている場合は、債権者である金融機関の担当窓口に相談しましょう。
サポートの内容は金融機関によって異なりますが、返済期間の延長や返済額の一時的な減額といった返済条件の変更に応じてもらえる可能性があります。
また、奨学金以外のローンを返済している場合は、すべてのローンを合算した借り換えローンの利用が可能な場合があります。
無職の状態では審査が不利なため、再就職後の申請を求められる可能性もありますが、低金利なローンに組み直すことにより、返済総額を抑えられることが借り換えローンのメリットです。
地域の社会福祉協議会での支援制度
社会福祉協議会とは、無職になり生活が困窮している人を支援する団体です。
社会福祉協議会では、奨学金だけではなく、生活全般の支援を行っています。
例えば、生活再建までの間にかかる家賃や生活費を負担する「総合支援資金」や、一時的に少額の資金を提供する「緊急小口資金」といった支援制度は大いに役立つでしょう。
また、生活相談や家計相談、就労支援などのサービスをワンストップで行っていることも社会福祉協議会の特徴です。
奨学金以外の支払いも困難になっている場合や、再就職の目途がつかない場合は、地域の社会福祉協議会に相談すると良いでしょう。
無職でも奨学金返済を乗り越えるための心構え
無職の方が奨学金返済と向き合うことは、精神的に大きな負担になります。
しかし、ここまでにご紹介したように、奨学金や当面の生活費の支払いをサポートする機関や団体は少なくありません。
生活の立て直しに向け、この難局を乗り越えるために必要な心構えを確認しておきましょう。
不安を軽減するための考え方
無職の方は、「スムーズに再就職できるだろうか」「奨学金の滞納でブラックリストに載らないだろうか」など、さまざまな不安を抱えてしまいがちです。
そのような不安を軽減するためには、思い切って周囲の人たちに現状を打ち明けましょう。
奨学金問題は社会問題の一つでもあり、多くの人が返済困難な状況に直面しています。
日本学生支援機構(JASSO)などが相談窓口を設けて救済にあたっているのもそのためです。
一人で抱え込むのではなく、家族や専門の相談員と話す機会を設けて、どうすれば状況を打開できるのか一緒に考えてもらいましょう。
小さな成功体験を積む重要性
たとえ小さな出来事でも、成功体験を重ねることにより自己肯定感を高められます。
相談窓口に電話をしたり、アルバイトで数千円を稼いだりすることも、生活再建に向けた立派な一歩です。
小さな成功体験を積み、モチベーションを維持・向上させながら無職からの脱却を目指しましょう。
助けを求めることの大切さ
勇気を持って助けを求めることにより、孤独にならずに済みます。
孤独になるとネガティブな感情が生まれやすくなり、専門家に相談したり、副収入を得たりといった行動に移りにくくなるでしょう。
そのような悪循環を避けるためにも、信頼できる人に助けを求めてください。
まとめ
無職になり、奨学金の返済ができない状態に追い込まれた場合は、まず支出と収入を洗い出したうえで、債権者の相談窓口に連絡しましょう。
日本学生支援機構(JASSO)などの機関は、さまざまな支援制度を用意しているため、素早く相談することにより支払いの遅延・延滞を防ぎやすくなります。
不安やストレスを一人で抱え込まず、身近な人に相談することが生活再建に向けた重要なポイントです。