現状の職場への不満が原因で転職を検討している方は多いでしょう。
しかし、奨学金返済の途中にある場合、転職により待遇が変わっても大丈夫だろうかと不安を抱えがちです。
「収入が下がったらどうしよう」「周囲になじめず再転職が必要になり、収入が途絶えたらどうしよう」といった不安から、一歩を踏み出せないでいるかもしれません。
しかし、奨学金返済中の転職は可能です。
収入が増えたり、充実した福利厚生を利用したりすることにより、奨学金返済の負担を軽減できる可能性もあります。
この記事では、奨学金返済の不安を抱えずに転職するために必要な事前準備について、チェックリスト形式で詳しく解説します。
奨学金返済中に転職を考える人が抱える不安とは
まずは奨学金返済中の転職でなぜ不安を抱えるのか、その正体を突き止めましょう。
多くの人が抱えている不安を、4つのポイントから解説します。
返済滞納のリスク
奨学金返済中の転職において、ほぼすべての方が抱える不安といえば「返済滞納のリスク」でしょう。
すでに退職している場合、転職活動が長期化すると、返済日に引き落としができないおそれがあります。
スムーズに転職できたとしても、転職後の給与が想定よりも少ないと、奨学金返済が困難になりがちです。
奨学金返済が滞ると、信用情報機関に延滞情報が登録される可能性があります。
結果として、将来的な住宅ローンや自動車ローンの審査に悪影響を及ぼしかねません。
信用に関わる問題が、将来のライフイベントに影響するリスクがあるため、奨学金返済中の転職を躊躇する方が多いです。
収入減少や生活費の圧迫
転職後は一時的に収入が減少する可能性があります。
試用期間がある企業に入社した場合、本採用時よりも給与が低くなるケースが多いでしょう。
査定期間の影響により、賞与が満額支給されないことや住宅手当などの条件が変わり、実質的な手取りが減ることも考えられます。
これらの要因が重なり、奨学金返済が困難になったり、生活費が圧迫されたりすることも想定しなければなりません。
新しい職場での奨学金への理解不足
新しい職場に在籍している従業員から、奨学金への理解を得られるかどうかわからず、精神的な不安を抱える可能性もあります。
奨学金返済を理由に、飲み会や旅行などのイベントを断ると、職場における人間関係に支障を来すリスクがあるでしょう。
特に奨学金返済支援制度を導入していない企業では、奨学金返済は個人の自己責任として扱われがちです。
転職先を選ぶ際は、社員の経済状況やライフプランへの理解度が深い企業を選ぶことをおすすめします。
転職活動中の資金繰りの心配
転職活動中に予期せぬ出費が発生する可能性があります。
面接会場までに交通費やスーツ代を捻出する必要に迫られる可能性もあるでしょう。
失業保険の給付資格があっても、給付開始までにはタイムラグが生じます。
収入を得られない期間が長引くことを想定すると、奨学金返済中の転職を決断しにくくなります。
奨学金返済中でも転職を可能にするための考え
奨学金返済中の転職には不安を抱えがちです。
しかし、転職に成功すると奨学金返済の負担を軽減できる可能性が高くなります。
ここでは、奨学金返済中の転職を可能にする考え方をご紹介します。
「返済計画」と「キャリア計画」を両立させる
奨学金返済中の転職を成功させるために大切なのは、返済計画とキャリア計画を両立させることです。
＜返済計画とキャリア計画とは＞
・返済計画：あと何年で奨学金返済を完了させるか計画すること
・キャリア計画：返済計画を実現するために、どのくらいの年収が必要か
2つの計画を連動させることにより、転職の妥当性を見極めやすくなるでしょう。
今の会社では達成が困難な計画でも、転職すれば実現に近付く可能性があります。
年収だけでなく福利厚生や支援制度を見る視点
転職先の条件を比較する際、多くの方が年収の差に注目します。
しかし、奨学金返済を控えている方は、年収だけでなく福利厚生や支援制度の内容も比較することが重要です。
たとえば、住宅手当により家賃を削減できれば、自由に使えるお金を意味する「可処分所得」が増えます。
また、奨学金返済支援制度を福利厚生に含めている企業への転職も有効です。
企業側が奨学金返済を肩代わりしてくれるため、実質的な手取りを増やす効果が得られます。
長期的な収入アップを狙ったキャリア選び
奨学金返済は長期間に及ぶため、長期的な収入アップを見越したキャリア選択をしましょう。
目先の給与の高さだけでなく、5年後、10年後の年収の推移を考慮することがポイントです。
たとえば、AIやIT、コンサルティングといった業種は、今後も市場成長が見込めるため、給与水準が上がり続ける可能性が高いでしょう。
また、転職市場において価値の高い専門的な資格やスキルを習得できる職場を選ぶと、数年後のさらなるキャリアアップに向けた土台を築けます。
転職前に確認しておきたい事前準備チェックリスト
奨学金返済を前提に転職する際、事前に確認しておくと良いチェックリストは次の通りです。
＜転職前に確認しておきたい事前準備チェックリスト＞
□現在の奨学金残高・毎月の返済額を把握する
□返済期限猶予や在学猶予制度の活用を検討する
□転職後の想定年収・生活費をシミュレーションする
□貯蓄や緊急時資金を準備する
□奨学金返済支援制度がある企業をリサーチする
ここからは、それぞれのポイントをさらに詳しくご紹介します。
現在の奨学金残高・毎月の返済額を把握する
最も重要なポイントは、現在の奨学金残高と月々の奨学金返済額を把握することです。
日本学生支援機構（JASSO）から奨学金を借りている場合、スカラネット・パーソナルから情報を確認できます。
有利子の奨学金を借りている場合は、繰上返済すると利息をどのくらいカットできるかについてもシミュレーションしましょう。
返済期限猶予や在学猶予制度の活用を検討する
転職活動中に資金がショートするおそれがあるため、返済期限猶予や在学猶予制度を活用できるか確認しましょう。
それぞれの制度の特徴は次の通りです。
＜返済期限猶予と在学猶予制度の内容＞
・返済期限猶予：最長10年間にわたり、一時的に返済をストップできる制度
・在学猶予制度：大学や専門学校在学中に奨学金返済が猶予される制度
これらの制度を活用する場合は、事前申請が必要です。
制度を活用できるか転職活動のスタートと並行して調べておき、適用可能な場合は早めに申請しましょう。
転職後の想定年収・生活費をシミュレーションする
求人票などに掲載されている年収をもとに手取り額を試算して、現在の生活費と比較しながらシミュレーションしましょう。
手取り額とは、額面上の年収から社会保険料や税金を引いた後に残る収入です。
生活費については、転職後の勤務地を踏まえて、引越しが必要になるかどうかを計算することがポイントです。
貯蓄や緊急時資金を準備する
転職活動を焦らずに進めるために、緊急時の資金を準備しておきましょう。
目安としては、3ヶ月分の生活費を緊急時資金として準備することが一般的です。
特に自己都合退職の場合は、失業保険を受け取れるまでにタイムラグが生じるため、ゆとりのある資金計画を立てることがポイントになります。
奨学金返済支援制度がある企業をリサーチする
転職先候補を探す際は、奨学金返済支援制度を用意している企業を中心にリサーチしましょう。
求人サイトの検索窓に「奨学金」と入力してリサーチする場合や転職エージェントに奨学金返済支援制度を利用したい旨を伝えてリサーチすると効果的です。
また、奨学金バンクのような専用プラットフォームを活用する方法もおすすめできます。
奨学金返済を支援する制度・企業を活用しよう
近年の転職は売り手市場ということもあり、企業は優秀な人材の確保と定着を目指し、福利厚生を充実させる傾向が見られます。
福利厚生の一環として、奨学金返済を支援する企業も増えているため、奨学金返済が有利に進む企業への転職を目指しましょう。
奨学金代理返還制度
奨学金代理返還制度とは、転職先の企業がJASSOに対して奨学金を直接送金する制度です。
企業が従業員の奨学金返済を肩代わりするため、転職後の奨学金返済負担を大幅に抑えられます。
一定の要件を満たした場合、代理返還された費用は非課税扱いとなるため、従業員は実質的な手取りを増やしやすくなるでしょう。
奨学金返済補助・手当を導入する企業
先述した奨学金代理返還制度ではなく、奨学金返済を手当として支給して補助する企業もあります。
奨学金代理返還制度との違いは、企業から支給された金額に課税されることです。
奨学金代理返還制度のように税制上のメリットは得られませんが、毎月の奨学金返済負担を軽減できます。
自治体による奨学金返還支援事業
奨学金返還支援事業を行う自治体もあります。
特に地方都市の自治体は、地域定着を目的として、Uターン・Iターンで転職する若者を支援するケースが多いです。
転職を機に地方への移住も視野に入れている場合は、奨学金返還支援事業を行っている自治体を調べてみましょう。
奨学金返済を福利厚生で支える企業の探し方
奨学金返済支援制度を導入している企業の探し方は、大きく分けて3つです。
＜奨学金返済を福利厚生で支える企業の探し方＞
・転職サイトから「奨学金支援制度あり」の企業を探す
・転職エージェントを利用して「奨学金支援制度を利用したい」と伝える
・奨学金バンクなどの専用プラットフォームを利用する
大企業の場合は、企業のIR情報からも奨学金返済支援制度の有無を確認できます。
奨学金返済と転職活動を両立するための工夫
原則として、転職活動中も奨学金返済は続きます。
奨学金返済と転職活動を両立するための工夫を3つのポイントに分けて解説します。
転職活動中の生活費・返済資金の管理術
転職活動中は、生活費と返済資金を別に管理しましょう。
奨学金引き落とし専用の口座を確保して、2～3ヶ月分の費用をプールしておくと、奨学金返済ができなくなるリスクを抑えられます。
生活費には、転職活動にかかる交通費や証明写真代といった費用を加えることがポイントです。
固定費を節約する場合は、食費やサブスクリプションサービスの内容を整理すると良いでしょう。
就職・転職サポートを活用して効率化する
在職したまま転職活動を行う場合は、現状の業務に支障を来さないように注意しなければなりません。
この場合は、就職・転職エージェントを利用すると、効率的に転職活動を進められます。
転職エージェントは無料で利用することが可能です。
希望する条件を担当者に伝えるだけで、膨大な求人情報の中から最適な転職先の紹介を受けられるでしょう。
また、面接の日程調整や内定後の給与交渉なども担当者に任せられるため、転職した経験がない方でも安心です。
奨学金返済支援企業に強いサポートを選ぶポイント
転職サポートを利用して、奨学金返済支援制度を導入する企業への転職を目指す場合は、若手・第二新卒に特化したサービスを選びましょう。
奨学金返済支援制度を導入する企業の多くが若手の採用を重視しているため、希望する条件を満たした企業とのコネクションを持つ可能性が高いです。
また、福利厚生に関する交渉実績が優れている転職エージェントを利用することもポイントです。
企業側との交渉力が強い転職サポートを利用すると、現状では奨学金返済支援制度を導入していない企業だとしても、特例として奨学金の支援を受けられる可能性があります。
奨学金バンクとは？返済とキャリア形成を同時に支援
奨学金バンクとは、奨学金返済を行っている若者のキャリア形成を支援するために誕生した新しいプラットフォームです。
ここでは、奨学金バンクの特徴について詳しく解説します。
日本初の奨学金返還を支援するプラットフォーム
奨学金バンクとは、奨学金返済支援制度を導入する企業に特化した求人情報や奨学金に関連するノウハウを提供する新しいプラットフォームです。
一般的な転職サイトや転職エージェントとは異なり、奨学金返済を控えている転職者に対して、経済支援・経済的安定をもたらす転職活動のサポートを行います。
物価高や生活費増加を踏まえた新しい支援の形
現代の日本社会が抱えている課題は、物価高に伴う生活費増加です。
学生時代のシミュレーションでは無理なく奨学金を返還できる計算だったにもかかわらず、物価高により支出が増え、奨学金返済が困難な状態に追い込まれている方は少なくありません。
このような方に支援を行うことも、奨学金バンクの目的の一つです。
奨学金バンクは、このような社会背景を踏まえて、企業側に「若手人材の確保や定着には、奨学金支援による可処分所得の増加が効果的である」との提案を行っています。
奨学金バンクの登場により、奨学金返済を行っている方に向けた福利厚生を充実させる企業が今後も増加する可能性が高いでしょう。
奨学金返済をラクにする「就職・転職活動支援」
奨学金バンクでは、求人の紹介だけではなく、就職・転職活動支援サービスを受けられます。
奨学金支援制度の特徴は、企業ごとに支給期間や支給額の上限などの条件が異なることです。
奨学金バンクを利用すると、企業ごとの細かな条件も比較しながら、最適な転職先を絞り込めるでしょう。
また、返済計画に合わせたキャリアプランを立てられることもメリットです。
たとえば、「あと10年で奨学金返済を完了させる」という目標を立てた場合、それを実現できる年収・昇給スピード・福利厚生がある企業の紹介を受けられます。
奨学金バンクを利用するメリット
奨学金バンクを利用するメリットは次の通りです。
＜奨学金バンクを利用するメリット＞
・奨学金支援制度を導入している企業の紹介を受けられる
・奨学金に関する知識が豊富なエージェントからキャリアプランのアドバイスを受けられる
・入社後の福利厚生に関するギャップを埋められる
奨学金バンクには奨学金への理解が深いキャリアアドバイザーが在籍しており、支援制度を導入する企業の情報も豊富です。
制度の適用条件なども事前に把握できているため、転職後に「聞いていた話と違う」といったギャップに悩まされる心配もありません。
まとめ
奨学金返済中に転職する場合は不安を抱えがちです。
しかし、しっかりとした準備を進めることにより可処分所得を増やし、奨学金返済にゆとりが生まれる転職を実現できます。
奨学金バンクのような専門性の高いプラットフォームを利用することにより、さらに転職の成功率を高められるでしょう。
