奨学金を利用している人の多くが抱える疑問が「返済はいつから始まるのか」という点です。卒業してすぐに返済が始まるのか、少し猶予があるのかが分からず不安に感じる人も少なくありません。社会人生活のスタートと同時に返済が始まる場合、家計への影響も気になりますよね。
この記事では、奨学金返済がいつから始まり、いつまで続くのかをわかりやすく解説します。日本学生支援機構(JASSO)の制度を中心に、返済スケジュールの仕組みや注意すべきポイント、返済が厳しいときに使える制度なども紹介します。
返済時期をきちんと把握しておけば、無理のない資金計画が立てやすくなります。これから返済が始まる人も、まだ先の人も、安心して準備を進めるための参考にしてください。
奨学金返済はいつから始まる?返済開始時期の目安
奨学金の返済は、卒業や退学などで貸与が終了した時点から一定期間を経て始まります。多くの人が利用している日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は、原則として「卒業の7か月後」から返済が始まります。
社会人としての生活が落ち着く時期に設定されているため、無理のないスタートが切れます。ただし、準備を怠ると初回の支払いで慌ててしまうこともあるため注意が必要です。
JASSO奨学金は卒業の7か月後から返済開始
JASSOの奨学金は、原則として「卒業または貸与終了の7か月後」に返済が始まります。例えば、3月に卒業した場合、初回の返済は10月です。これは新生活の立ち上げや就職準備にかかる期間を考慮した猶予とされています。7か月の間に返還誓約書を確認し、口座振替(リレー口座)の登録を済ませておく必要があります。登録が完了していないと引き落としが行われず、延滞扱いとなることもあるため注意が必要です。初回の引き落としは自動的に行われますが、残高不足だと手続きが止まる可能性があります。返済開始の通知が届いたら、口座に十分な残高を用意し、引き落とし日をカレンダーなどに記録しておくと安心です。
第一種・第二種で異なる返済条件の違い
第一種奨学金は無利子、第二種奨学金は利子付きという違いがあります。どちらも卒業の7か月後から返済が始まりますが、返済総額や期間に差があります。例えば、第二種奨学金では貸与額が多くなる傾向があり、完済まで15〜20年かかるケースも珍しくありません。金利は固定方式と見直し方式の2種類があり、選択したタイプによって返済総額が変わります。返済中に繰り上げ返済を行うことで利息を減らすことも可能です。返済計画を立てる際は、奨学金の種類だけでなく、貸与金額・返済期間・金利方式の3つを必ず確認しておきましょう。これらを把握しておくことで、毎月の支払いに無理がなく、安心して返済を続けられます。
大学院進学・留学した場合の返済開始時期
大学を卒業後に大学院へ進学する場合、返済はすぐには始まりません。JASSOに「在学猶予」の申請を行えば、大学院在学中は返済を止めることができます。この制度は進学時点で自動的に適用されるわけではなく、申請と証明書類の提出が必要です。留学の場合も、留学先の学校に在籍していることを証明できれば、同様に猶予を受けられます。申請の受付は返済開始予定月の3か月前までに行うのが望ましいです。猶予を利用することで返済負担を先送りできますが、将来的な支払い総額が減るわけではありません。卒業後に返済が再開する時期をしっかり把握し、生活設計に反映しておくと安心です。
返済開始前に届く案内通知の内容を確認
JASSOからは返済開始前に「返還開始のお知らせ」という通知が郵送で届きます。この書類には返済開始年月、月々の返済額、引き落とし日などの重要情報が記載されています。通知が届いたら、内容を必ず確認しておきましょう。住所変更をしている場合は、旧住所に送られてしまうことがあるため、早めに「スカラネット・パーソナル」で登録情報を更新しておくと安心です。もし通知が届かない場合でも、スカラネット上で返済スケジュールを確認できます。また、初回引き落としの前月には「返還開始案内メール」も送信されるため、登録したメールアドレスも最新の状態にしておきましょう。手続きに不備があると延滞の原因になるため、細かい確認が欠かせません。
奨学金返済はいつまで続く?完済までの期間と目安
奨学金の返済は、借りた金額や返済方式によって期間が変わります。一般的には10年から20年ほどかけて返済する人が多く、長期にわたる支払いになります。そのため、完済までの期間を具体的に把握しておくことが大切です。期間の目安を理解しておくと、毎月の支出を計画しやすくなり、将来の家計設計にも役立ちます。
貸与額・返済回数ごとの期間をシミュレーション
JASSOの奨学金では、貸与額や種類によって返済期間が異なります。例えば、月に3万円を4年間借りた場合の貸与総額は約144万円で、返済期間は10年程度が目安です。一方、第二種奨学金で月10万円を4年間借りた場合は総額480万円となり、返済期間が15〜20年に及ぶこともあります。返済は「定額返還方式」と「所得連動返還方式」のどちらかを選択でき、所得連動型を選ぶと収入が少ない時期の負担を軽くできます。
JASSOの公式サイトでは、貸与金額や利率を入力するだけで返済回数や月額を確認できる「返還シミュレーション」が利用できます。完済までの年数や支払総額を具体的に知ることで、家計の中でどれくらいの負担になるかを把握しやすくなります。自分の収入見込みに合わせて、無理のない返済計画を立てておくことが安心につながります。
繰り上げ返済や一括返済を検討するタイミング
余裕があるときに繰り上げ返済や一括返済を行うことで、利息を減らし総支払額を抑えることができます。特に第二種奨学金のように利息が発生するタイプでは、早めの返済が有利に働きます。ボーナスや臨時収入を使って一部を前倒しで返済する方法もおすすめです。ただし、生活資金まで無理に充ててしまうと、思わぬ出費への対応が難しくなるため注意が必要です。
繰り上げ返済はJASSOの「スカラネット・パーソナル」から申し込みが可能で、手数料もかかりません。返済を続けながら少しずつ元金を減らせるため、長期的に見ると大きな節約につながります。目標を決めて計画的に返済を進めることで、完済までの期間を短縮でき、精神的にもゆとりが生まれます。
返済が始まる前に準備しておきたいこと
奨学金の返済は、卒業後にいきなり始まるわけではありません。社会人としての生活が始まる前に必要な手続きを済ませておくことで、安心して返済を迎えられます。特に口座登録や返還誓約書の確認を怠ると、初回の引き落としができず延滞扱いになるおそれがあります。
ここでは、返済開始前に必ず確認しておきたいポイントを整理しておきましょう。
返還誓約書・口座登録を忘れずに確認
まず確認しておきたいのが、貸与終了時に提出した「返還誓約書」です。この書類には返済金額や回数、金利、支払い方法などの詳細が記載されています。内容を理解しておくことで、返済が始まったときに混乱することがありません。もし紛失してしまった場合は、JASSOへ再発行を依頼できます。
また、口座振替(リレー口座)の登録も重要です。登録が完了していないと、引き落としが行われず延滞扱いになる可能性があります。口座登録は卒業前でも申請できるため、早めに手続きを済ませておくのがおすすめです。初回の引き落とし前に残高を確認し、引き落とし日を手帳やスマートフォンにメモしておくと安心です。
給与振込口座との連携で支払いをスムーズに
返済用の口座は、給与振込口座と同じにしておくと管理がしやすくなります。別口座にしてしまうと、入金を忘れて残高不足になるケースが少なくありません。引き落とし日前に残高が不足していると延滞扱いとなり、信用情報に影響する場合もあります。こうしたトラブルを防ぐために、返済口座は日常的に利用する銀行口座に設定しておきましょう。
また、給与が入金された直後に自動で引き落とされるようにしておくと、支払いを忘れる心配がありません。家計簿アプリなどで「奨学金返済」という項目を作っておくと、支出を可視化でき、月々の資金管理がしやすくなります。生活リズムに合わせて返済管理を仕組み化することが、無理のない返済を続けるコツです。
家計に無理のない返済プランを立てるコツ
返済を滞りなく続けるには、事前に家計全体を見直しておくことが欠かせません。社会人になりたての頃は収入が安定しにくく、家賃や交通費などの支出も増えがちです。まずは毎月の固定費をリスト化し、手取り収入の中から返済額を確実に確保できるようにしましょう。
収入に余裕ができたときは、繰り上げ返済を検討するのも有効です。返済期間を短縮でき、利息の負担を軽減できます。ただし、貯蓄や生活資金を圧迫しない範囲で行うことが前提です。返済を「負担」と捉えるよりも、自分への投資と考えることで前向きに取り組めます。将来を見据えて、無理のないペースを見極めておくことが長く続けるポイントです。
返済が厳しいときに利用できる支援制度
奨学金の返済は長期間にわたるため、予期せぬ事情で返済が難しくなることもあります。収入の減少や失業、出産、病気など、生活状況が変わったときに無理をして返済を続けると、延滞につながるおそれがあります。そんなときは、JASSOが用意している支援制度を利用することで、返済を一時的に軽減したり、一定期間止めたりできます。
ここでは返済が厳しいときに利用できる代表的な3つの制度を紹介します。
返還期限猶予制度の対象と申請方法
返還期限猶予制度は、経済的な理由や健康上の問題で返済が難しい人を対象に、返済を一時的に止められる制度です。対象となるのは、失業中、収入の大幅な減少、病気やけがで就労できない場合などです。猶予期間は最長で1年単位で認められ、申請を繰り返すことで最長10年まで延長できます。申請には所得証明書や診断書などの書類が必要で、JASSOの「スカラネット・パーソナル」からオンラインで提出できます。
この制度を利用しても、信用情報に傷がつくことはありません。無理に支払いを続けて延滞になるより、早めに申請しておく方が安心です。返済を再開する際は、JASSOから新しいスケジュールが案内されるため、再スタートの準備もしやすくなります。
減額返還制度の利用条件とメリット
減額返還制度は、収入が一定以下の人を対象に、毎月の返済額を半分または3分の1に減らせる制度です。返済総額自体は変わりませんが、月々の負担を軽くすることができます。利用期間は1回あたり1年で、申請を継続すれば最長15年まで延長が可能です。申請には前年の所得証明書が必要で、会社員だけでなく個人事業主やフリーランスも対象になります。
生活が安定したら通常の返済に戻すこともできるため、一時的に収入が減ったときに非常に有効です。特に育児休業中や転職直後など、収入が不安定な時期に利用する人が多く見られます。減額返還は延滞を防ぐための仕組みでもあるので、返済が苦しいと感じた段階で早めに検討しておくことが大切です。
進学・出産・病気など状況別の救済措置
返済を一時的に止めたい理由は人それぞれですが、進学・出産・病気といった事情に応じた救済措置も用意されています。大学院や専門学校に進学する場合は「在学猶予」を申請することで、在学中の返済を停止できます。出産や育児によって休職している場合も、所得証明や母子健康手帳のコピーなどを提出すれば、返済猶予や減額返還の対象になります。
また、病気やけがで長期間働けない場合は、医師の診断書を添えて申請すれば、返済を止めることができます。これらの制度は「延滞してから」では利用できないケースもあるため、支払いが難しいと感じたら早めに相談することが大切です。制度を上手に使うことで、生活の安定を保ちながら確実に返済を続けられます。
奨学金返済を滞納するとどうなる?延滞のリスクと対処法
奨学金の返済を滞納すると、延滞金の発生や信用情報への登録など、将来に影響するトラブルにつながるおそれがあります。社会人になりたての頃は支出が多く、つい後回しにしてしまう人もいますが、放置してしまうと返済負担が増えてしまいます。
ここでは、滞納によって起こる具体的なリスクと、返済が遅れそうなときの正しい対応方法を解説します。
延滞金や信用情報への影響を解説
返済日を過ぎても入金が確認できない場合、JASSOでは延滞金が発生します。延滞金は「返済額の年5%以内」で計算され、支払いが遅れた日数分が加算されます。延滞が長期化すると、JASSOから督促状が届き、さらに返済がない場合は信用情報機関に延滞記録が登録されます。いわゆる「ブラックリスト」に載る状態となり、クレジットカードや住宅ローンの審査が通らなくなることもあります。
延滞金は元金とは別に発生するため、支払いが遅れるほど返済額は増えていきます。たとえ1回の支払いでも遅れると記録に残る可能性があるため、引き落とし日の前に残高を確認しておくことが大切です。早めの対応が、信用へのダメージを防ぐ最善の方法です。
返済が遅れたときの連絡・相談先
返済が難しいと感じたときは、できるだけ早くJASSOに連絡をしましょう。延滞前であれば、「返還期限猶予制度」や「減額返還制度」を案内してもらえることがあります。これらの制度は、延滞してしまう前に申請することでスムーズに利用できます。
もし延滞が続いてしまった場合でも、連絡を取らずに放置しないことが何より重要です。状況を説明すれば、分割での返済や支払い計画の見直しを相談できます。無断で放置していると、最終的に債権回収会社へ移行され、法的手続きに進むケースもあります。早めの連絡が、自分の信用を守る第一歩になります。
延滞を防ぐための管理と心構え
延滞を防ぐには、日常の管理と心構えが欠かせません。まず、返済日は必ずカレンダーやスマートフォンのスケジュールアプリに登録しておきましょう。給与日直後の引き落とし日に設定しておくと、残高不足を防ぎやすくなります。
また、生活費の見直しも有効です。固定費を削減したり、支出を記録したりするだけでも返済資金を確保しやすくなります。返済を「義務」と捉えるよりも、「将来の自分への責任」と考えることで前向きに続けられます。もし不安を感じたときは、家族や金融相談窓口に相談してみるのも良い方法です。小さな意識の積み重ねが、延滞を防ぐ確実な一歩になります。
まとめ|奨学金返済の開始時期を理解して無理なくスタートしよう
奨学金の返済は、原則として卒業から7か月後にスタートします。第一種・第二種の違いや、進学・留学による猶予の有無によって時期が前後するため、自分のケースをしっかり確認しておくことが大切です。返済が始まる前に返還誓約書や口座設定を見直し、初回の引き落としに備えておくと安心です。
社会人生活の始まりと同時に返済が始まる人も多く、家計に影響が出やすい時期です。無理のない返済を続けるためには、給与振込口座と返済口座を同じにする、家計簿アプリで支出を管理するなど、日常生活の中で「仕組み化」する工夫が欠かせません。こうした準備を早めに整えることで、延滞のリスクを減らし、安定したスタートが切れます。
もし返済が厳しいと感じた場合は、ためらわずに「返還期限猶予制度」や「減額返還制度」を利用しましょう。状況に応じた制度を活用すれば、返済を一時的に軽くしたり、生活を立て直す時間を確保したりすることが可能です。JASSOの相談窓口では、個別の事情に応じたアドバイスも受けられるので、一人で抱え込む必要はありません。
奨学金は、未来の自分への投資として借りた大切なお金です。返済時期や制度を理解しておくことで、焦らず計画的に対応できます。小さな一歩の積み重ねが、確実な完済と安心につながります。自分のペースを大切にしながら、前向きに新しい生活をスタートさせましょう。