複数の奨学金を借りていた人の中には、「返済はどうやって進めたらいいの?」と迷う方も多いのではないでしょうか。特に、日本学生支援機構(JASSO)の第一種と第二種を併用していた場合は、「併用返還」という制度を理解しておくことが大切です。
この記事では、奨学金の併用返還とは何か、その仕組みや手続きの流れをわかりやすく解説します。さらに、利用するメリットや注意点、申請時によくある疑問についても紹介します。
複数の奨学金を借りた人が、無理なく返済を進められるようになるためのポイントをまとめています。返還を控えている人や、手続きを確認したい人はぜひ参考にしてください。
奨学金返済の併用返還とは?基本の仕組みを解説
奨学金返済の「併用返還」とは、第一種奨学金と第二種奨学金など、複数の奨学金を借りた人が返済をまとめて行う制度です。日本学生支援機構(JASSO)で複数の奨学金を利用した場合、それぞれを別々に返す「個別返還」と、ひとつにまとめて返済する「併用返還」のどちらかを選べます。
どちらを選ぶかで返済管理のしやすさや支払総額に影響することもあるため、まずは制度の仕組みを理解しておきましょう。
第一種・第二種の併用返還とはどういうこと?
第一種奨学金は利息のかからない無利子貸与、第二種奨学金は利息のつく有利子貸与という違いがあります。どちらも日本学生支援機構(JASSO)の制度ですが、返済方法や契約内容が異なります。大学在学中に第一種と第二種を同時に借りていた場合、卒業後はそれぞれの契約に基づいて2本の返済が始まります。そのままでは返済口座や引き落とし日が別々になり、支払い管理が煩雑になりやすい点が課題です。
併用返還を選ぶと、この2つの奨学金をまとめて1つの返済として扱うことができ、月1回の引き落としで完了します。返済金額や利息の計算方法自体は変わりませんが、管理の手間を減らせるのが大きな利点です。さらに、支払履歴が一本化されることで返済状況を把握しやすくなり、生活設計の見通しを立てやすくなります。社会人になって家計の管理が増える時期でも、安心して返済を続けやすい仕組みといえるでしょう。
個別返還との違い
個別返還は、第一種と第二種をそれぞれ独立して返済する方法です。この場合、引き落とし口座が2つに分かれたり、支払日がずれることもあります。残高不足や入金の遅れによって、どちらか一方が延滞になるリスクもあるため、注意が必要です。
一方の併用返還では、2種類の奨学金を1本にまとめて管理できるため、引き落としは月1回で済み、残高確認の手間も少なくなります。スカラネット・パーソナル上でも併用返還として統一管理されるため、支払状況を確認しやすく、家計管理の効率化にもつながります。
ただし、併用返還を選ぶと「第一種だけを先に返す」「第二種のみを繰上返還する」といった部分的な対応ができなくなります。手間を減らすか、柔軟性を優先するかを比較したうえで、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
併用返還の対象となる人と条件
併用返還の対象になるのは、JASSOで2種類以上の奨学金を借りている人です。主に第一種と第二種を同時期に受けていたケースが多く、貸与期間が重なっている場合に利用できます。大学と大学院で別々に奨学金を受けている場合や、自治体・大学独自の奨学金を併用していた場合は対象外となることもあります。
申請は返還開始前に行う必要があり、返還開始後に申し出ても原則として受け付けられません。申請期限や提出書類はJASSOから送られる「返還確認書類」に記載されているため、届いたらすぐに内容を確認しておきましょう。
また、併用返還を選ぶと返済が一括管理されるため、毎月の引き落とし額や返済残高が見やすくなります。制度を上手に活用すれば、複数の奨学金を抱えている人でも無理なく計画的に返済を進められるでしょう。
併用返還を選ぶときに知っておきたいポイント
併用返還は返済管理を簡単にできる一方で、返済総額や期間はそれぞれの奨学金契約に基づいて計算されます。便利な制度ではありますが、返済総額が減るわけではないため注意が必要です。利用前に、生活費や収入の見込みをもとに無理のない返済計画を立てておくと安心です。
JASSOの返還シミュレーションを利用すれば、併用返還と個別返還の支払い額や期間を比較できます。数値で確認することで、自分にとってどちらが負担の少ない方法かを具体的に判断できます。さらに、申請のタイミングを逃すと自動的に個別返還扱いになるため、案内書類が届いたらすぐに確認し、期限内に提出を済ませましょう。事前の準備と理解が、安心して返済を始めるための第一歩になります。
併用返還を利用するメリット
併用返還の大きなメリットは、複数の奨学金をまとめて管理できる点にあります。返済手続きを一本化することで、支払い忘れや二重引き落としなどのトラブルを防ぎやすくなります。
また、JASSOのマイページ上でも返済残高や支払い履歴をまとめて確認できるため、家計管理のしやすさが格段に上がります。
ここでは、併用返還を利用することで得られる具体的なメリットを詳しく解説していきます。
返済口座や支払日を一本化できる
併用返還を利用すると、第一種と第二種など複数の奨学金の支払いを1つの口座・1つの引き落とし日にまとめることができます。これにより、毎月の支払日をそれぞれ管理する必要がなくなり、残高不足による延滞リスクを大幅に減らせます。特に社会人になって給与日や生活費の支出が増えると、複数の引き落とし日を把握するのは手間がかかりますが、一本化しておけば支出管理が格段に楽になります。
また、家計簿アプリや銀行の通知機能と連携すれば、入出金の管理もスムーズに行えます。月1回の支払いにまとめることで、家計の見通しを立てやすくなり、将来的な繰上返還や貯蓄計画にも反映しやすくなります。生活リズムに合わせて返済をシンプルに管理できるのが、併用返還の大きなメリットといえるでしょう。
返済管理の手間が減り、延滞リスクを防げる
複数の奨学金を個別に返していると、それぞれの返済額や引き落とし日を管理する必要があり、うっかり支払いを忘れてしまうケースもあります。併用返還では1回の引き落としで済むため、確認作業が少なくなり、返済ミスを防ぎやすくなります。特に、支払いが複雑になるほど延滞リスクが高まる傾向にあるため、管理をシンプルにすることは長期的な安心にもつながります。
さらに、延滞を防ぐことは信用情報を守ることにもつながります。延滞が記録されると、クレジットカードや住宅ローンの審査に影響することがあるため、安定した自動引き落とし環境を整えることが重要です。併用返還を利用すれば、返済を「忘れず・滞らず」に続けられるため、精神的な負担も軽くなります。
繰上返還や減額返還の手続きもまとめて行える
併用返還を選んでいる場合、繰上返還(早期返済)や減額返還の申請をまとめて行える点も利便性の高いポイントです。個別返還では、奨学金ごとにそれぞれ申請書を用意して提出する必要がありますが、併用返還なら1回の手続きで済みます。忙しい社会人でも、時間や書類準備の負担を減らしながら対応できるのが大きな魅力です。
また、繰上返還を活用すれば、第二種奨学金の利息負担を軽減でき、結果として返済総額を抑えることにつながります。減額返還制度を利用する場合も、併用返還であれば一括申請ができるため、家計の状況に応じて柔軟に返済方法を見直すことが可能です。こうした制度を一元的に扱える点は、長期間の返済を見据えたときに大きな安心材料となります。
併用返還の申請方法と手続きの流れ
併用返還を希望する場合は、返済が始まる前に日本学生支援機構(JASSO)へ申請を行う必要があります。返還開始後の申し込みは原則できないため、スケジュールを確認して早めに準備しておくことが大切です。手続き自体は難しくありませんが、提出書類の不備や期限の遅れで併用が認められないこともあります。確実に完了させるために、流れをしっかり把握しておきましょう。
併用返還を希望する際の申請方法
併用返還の申請は、JASSOから届く「返還確認書類」に沿って進めます。書類内の返還方式の選択欄で「併用返還」を選び、必要事項を記入して期日までに返送します。提出先や締切は書類に明記されているため、到着後すぐに開封し、カレンダーやリマインダーに期限を登録しておくと安心です。
不明点がある場合や書類を紛失した場合は、早めに返還相談センターへ問い合わせましょう。スカラネット・パーソナルで提出状況や返還情報を確認できるため、郵送後の到着確認や記入漏れのリスクを抑えられます。返還開始が近づく時期は問い合わせが集中しやすいため、余裕を持ったスケジュールを心がけるとスムーズに進みます。
必要書類と提出期限の確認ポイント
主な必要書類は、JASSOから送付される返還確認書類一式と、口座振替に関する書類、必要に応じた本人確認書類の写しです。記入の際は、氏名・生年月日・住所・口座情報の表記ゆれや誤記、押印の不一致に注意してください。数字は読み違えが起きやすいため、口座番号や支店コードは通帳や公式アプリを見ながら丁寧に転記すると間違いが減ります。
提出期限は原則「返還開始前」で、遅れると個別返還扱いとなる場合があります。大型連休や年末年始は郵便・金融機関の処理が遅延しやすいため、期日の1〜2週間前には投函するのが目安です。郵送が不安な場合は追跡サービスを利用し、控えのコピーや送付記録を保管しておくと後日の照会がしやすくなります。
申請後に手続き内容を変更したい場合
併用返還は、返還開始後に原則として個別返還へ変更できません。申請後に住所・氏名・口座など登録情報を修正したいときは、スカラネット・パーソナルや案内に記載の方法で速やかに更新してください。名義変更や口座変更は反映まで時間がかかることがあるため、その間は旧情報での引き落としに備えて残高を確保しておくと安心です。
収入減少などで返済が難しくなった場合は、併用返還のまま減額返還や返還期限猶予の申請が可能です。無理を続けて延滞になる前に、必要書類を整えて早めに相談すると、家計に合わせた現実的な計画へ見直しやすくなります。
併用返還の注意点とデメリット
併用返還は便利な制度ですが、すべての人にとって最適とは限りません。仕組みを十分に理解せずに申し込むと、後から変更できずに困るケースもあります。
ここでは、利用する前に知っておきたい注意点やデメリットを紹介します。
あらかじめ理解しておくことで、安心して制度を活用できます。
併用できないケースがある
すべての利用者が併用返還を選べるわけではありません。併用返還の対象となるのは、JASSOで同時期に複数の奨学金(主に第一種と第二種)を借りていた人に限られます。たとえば、大学と大学院で別々の時期に奨学金を受けた場合や、貸与期間が大きく離れている場合は併用できないことがあります。
また、自治体や大学などJASSO以外の奨学金は制度や管理主体が異なるため、併用返還の対象外です。
自分が併用返還の対象になるかどうかは、JASSOから届く「返還確認書類」や公式サイトの案内で確認できます。もし対象外であっても、個別返還として着実に返済を続ければ問題はありません。制度の範囲を正しく理解したうえで、自分の状況に合った返済方法を選ぶことが大切です。
返済期間や利息の負担に影響することがある
併用返還を利用しても、返済期間や利息の計算はそれぞれの奨学金の契約内容に基づいて行われます。ただし、複数の返済をまとめることで月々の支払い額が一時的に増える場合もあります。特に第二種奨学金を含む場合は利息が加算されるため、家計に与える影響が大きくなることもあります。
返済開始前にJASSOの返還シミュレーションを利用し、月々の支払額や総返済額を具体的に確認しておくと安心です。もし支払いが厳しいと感じたら、併用返還のままでも利用できる「減額返還制度」や「返還期限猶予制度」を検討してみましょう。制度を組み合わせて使うことで、長期間の返済も無理なく続けやすくなります。
申請忘れや期限切れで併用できなくなる
併用返還の申請は、返還開始前に行う必要があります。申請書の提出を忘れたり、期限を過ぎたりすると自動的に個別返還となり、返済をまとめることができません。返還開始後に併用へ切り替えることも原則できないため、申請時期を逃さないよう注意が必要です。
JASSOから案内書類が届いたら、すぐに内容を確認して提出準備を進めましょう。提出期限をカレンダーやスマートフォンに登録しておくと、うっかり忘れを防げます。もし書類を紛失してしまった場合は、返還相談センターへ早めに連絡すれば再発行の案内を受けられる場合があります。早めの行動が、制度を正しく活用するための第一歩です。
途中で個別返還に戻せない
一度併用返還を選ぶと、返済開始後に個別返還へ戻すことはできません。たとえば「第一種だけを先に繰上返還したい」「利息のある第二種を優先して返したい」と思っても、併用返還では2つを一体として扱うため、部分的な返済調整ができなくなります。
こうした制約を避けたい人は、あらかじめ個別返還を選択するのも一つの方法です。併用返還は管理を簡単にする制度であり、返済を柔軟に調整するための仕組みではありません。自分の収入見込みやライフプランを踏まえて、どちらの方法がより安心して続けられるかを慎重に検討することが大切です。制度の特徴を理解し、後悔のない選択を心がけましょう。
まとめ|併用返還を理解してスムーズな奨学金返済を
併用返還は、第一種・第二種など複数の奨学金をまとめて返済できる仕組みで、日々の管理負担を軽減できる便利な制度です。支払日や引き落とし口座を一本化できるため、返済ミスや延滞のリスクを防げる点が大きなメリットといえます。また、スカラネット・パーソナルで返済状況を一元管理できるため、家計の見通しを立てやすくなります。忙しい社会人や複数の奨学金を抱える人にとって、安定して返済を続けるための心強い仕組みといえるでしょう。
一方で、併用返還には「途中で個別返還に戻せない」「申請期限を過ぎると利用できない」といった注意点もあります。制度の特徴を理解せずに申し込むと、後から不便を感じる場合もあるため、申請前に条件や返済計画をしっかり確認しておくことが大切です。返還シミュレーションなどを活用して、月々の負担を把握しておくと安心です。
併用返還を上手に活用すれば、返済管理の手間を減らしながら長期的に安定した返済が可能になります。申請時期を逃さず、正しい手順で手続きを進めていきましょう。奨学金の返済は、未来への準備を整えるための大切な過程です。制度を正しく理解し、自分のペースで着実に進めていくことで、安心して次のステージへ歩み出せます。
無理のない計画と制度の理解で、安心して前向きな返済を続けていきましょう。