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貸与型奨学金とは?第一種・第二種の違いと返済の仕組み・借り過ぎ防止のポイント

大学や専門学校への進学には、授業料だけでなく入学金や通学費、生活費など多くの費用がかかります。「学びたい気持ちはあるけれど、家計だけで払えるか不安」という高校生・保護者も少なくありません。そこで進学を支える代表的な制度が「奨学金」、なかでも利用者の多くを占めるのが返済が必要な貸与型奨学金です。一方で「貸与型奨学金とは結局どんなお金?」「給付型との違いは?」「どれくらい借りると危ないの?」といった疑問や不安の声も多く聞かれます。本記事では、日本学生支援機構(JASSO)や文部科学省など公的機関の情報をもとに、貸与型奨学金の仕組み・種類・採用基準から返済方法、借り過ぎを防ぐ考え方まで、専門家の立場でわかりやすく整理します。自分に合った奨学金を選び、卒業後も無理のない返済計画を立てるための「基礎知識+実践のポイント」を、一つずつ確認していきましょう。

貸与型奨学金とは?まずは基本の仕組みをおさえる

貸与型奨学金の定義 ― 在学中に借りて卒業後に返す「進学ローン」

貸与型奨学金とは、大学や専門学校などに在学している間に必要な学費・生活費を「借りて」賄い、卒業後に返済していくタイプの奨学金です。返済不要の給付型とは異なり、借りた金額を将来的に返す義務がある点が最大の特徴です。
一般的な教育ローンと比べると、利率が低く、学生でも申し込みやすいよう制度が整えられているため、進学時に多くの家庭で活用されています。また、借入名義は「学生本人」であり、将来の返済計画を早い段階から考える必要があることもポイントです。

奨学金の主な用途 ― 学費だけでなく生活費・通学費にも使えるお金

奨学金というと「授業料にしか使えない」と誤解されがちですが、実際には用途が細かく限定されていない場合がほとんどです。入学金・授業料はもちろん、教科書代、パソコンの購入、家賃、食費、通学費など、学生生活に必要な幅広い費用に充てることができます。
特に自宅外通学の学生にとっては、生活費の負担が大きくなるため、奨学金が進学継続の重要な支えとなっています。

「無利子型」と「有利子型」の違い ― 第一種・第二種の基本

貸与型奨学金には、大きく分けて「無利子型(第一種)」と「有利子型(第二種)」の2種類があります。
第一種奨学金(無利子)は利子がつかず、家計・成績の基準を満たしている学生が対象。返済負担を最小限にできる分、採用基準が比較的厳しい傾向があります。
一方、第二種奨学金(有利子)は利子がつくものの、幅広い学生が申し込みやすく、貸与月額の選択肢も多いのが特徴です。進学に必要な費用に合わせて柔軟に活用できます。

なぜ貸与型奨学金の利用者が多いのか ― 背景にある学費高騰と家計負担

日本の大学生の約半数が奨学金を利用していると言われる背景には、近年の学費上昇と世帯収入の伸び悩みがあります。親世代と比べても授業料は大きく上昇し、特に私立大学では年間100万円以上かかるケースも珍しくありません。
そのため、多くの家庭にとって奨学金は「進学のために欠かせない制度」となっており、貸与型はその中でも最も利用しやすい選択肢として広く活用されています。無利子・有利子を組み合わせることで、必要な進学資金を確保する学生も増えています。

給付型奨学金との違い:どちらが自分に合う?

給付型奨学金の特徴 ― 返済不要だが採用基準は厳しめ

給付型奨学金は、返済不要で進学を大きく後押ししてくれる制度です。しかしその一方で、採用基準は貸与型よりも厳しく設定されています。代表的なJASSOの給付型奨学金では、住民税非課税世帯またはそれに準じる世帯であることが大きな要件となり、加えて高校1年生から申込時点までの評定平均3.5以上といった学力基準も求められます。
支援が手厚い分、対象となる学生が限られており、採用人数も比較的少ない制度です。家計状況が厳しく、かつ学修意欲が高い学生には非常に有効ですが、全員が利用できるタイプではありません。

貸与型奨学金の特徴 ― 利用しやすさと返済リスク

貸与型奨学金は、給付型に比べて採用基準が緩やかで、より多くの学生が利用しやすい制度です。無利子の第一種、有利子の第二種など選択肢が豊富で、貸与月額も細かく設定されているため、家庭の状況に合わせて必要な額を調整できます。
ただし、貸与型はあくまで「借りるお金」であるため、卒業後には必ず返済が発生します。返済が20年以上続くケースもあるため、将来の負担を見越した計画的な利用が不可欠です。

給付型+貸与型+条件付き給付の「組み合わせ」で考える

奨学金は「どれか1つを選ぶ」ものではなく、制度によっては複数を組み合わせることも可能です。たとえば、地域医療の確保を目的とした医学部地域枠、地方自治体が行う保育士・介護福祉士の修学支援など、特定の条件を満たすことで返還免除が受けられる制度もあります。
文部科学省をはじめ、自治体・大学・業界団体が用意する奨学金は種類が豊富で、要件も多様です。給付型・貸与型に加え、条件付き給付(返還免除型)を組み合わせることで、進学費用を最適化できるケースもあります。

家計・成績・進路で変わる「向いている奨学金」のパターン

奨学金は「その家庭に最適な組み合わせ」を選ぶことが重要です。たとえば、以下のようなパターンが一般的です。

  • 家計が厳しい × 成績良好:給付型+第一種(無利子)を優先
  • 家計中間層:第二種(有利子)+大学・自治体の独自奨学金も併用検討
  • 医療系・地域定着型の進路:条件付き給付・返還免除制度の確認が必須
  • 自宅外通学・生活費が高くなる場合:貸与月額の上限を検討しつつ借り過ぎに注意

このように、奨学金選びは家庭の経済状況・成績・進路希望によって大きく変わります。「とりあえず借りておく」ではなく、自分のケースに合わせた最適解を選ぶことが、将来の負担を軽くするカギになります。

JASSOの貸与型奨学金(第一種・第二種)の仕組み

第一種奨学金(無利子)の条件・貸与月額・対象校

JASSOが提供する第一種奨学金(無利子)は、返済時に利子がつかないもっとも負担の少ない奨学金です。
採用基準として代表的なのは高校での評定平均値3.5以上という学力要件ですが、住民税非課税世帯など家計状況が厳しい学生には基準が緩和される場合があります。
また、貸与月額は「国公立・私立」「自宅・自宅外」によって選択肢が細かく分かれており、必要に応じて無理のない金額を設定できます。

  • 国公立(自宅):2万円、3万円、4万5,000円
  • 国公立(自宅外):2万円、3万円、4万円、5万1,000円
  • 私立(自宅):2万円、3万円、4万円、5万4,000円
  • 私立(自宅外):2万円、3万円、4万円、5万円、6万4,000円

無利子で借りられる分、採用基準は慎重に設定されていますが、返済負担を最小限に抑えたい学生にとってもっとも有利な選択肢といえます。

第二種奨学金(有利子)の特徴 ― 金利上限・利率の選び方

第二種奨学金(有利子)は、第一種よりも広い学生が申し込める奨学金で、成績基準も「平均水準以上」と比較的緩やかです。貸与月額は1万円刻みで2万〜12万円まで選択でき、進学費用に応じて柔軟に調整できます。
金利は上限年3.0%に設定されており、返済方式に合わせて「利率固定方式」または「利率見直し方式」を選びます。

  • 利率固定方式:貸与終了時に決まった利率が返済完了まで変わらない
  • 利率見直し方式:市場金利に応じておおむね5年ごとに利率が変動する

一般的な教育ローンより低金利で借りられるため、必要な費用を確保しやすい点が第二種のメリットです。

入学時特別増額貸与奨学金とは?入学金の山を越えるための一時金

入学時は「入学金」「初期費用」「引っ越し費用」など、まとまったお金が必要になります。こうした負担を緩和するために設けられているのが、入学時特別増額貸与奨学金です。
これは入学月に1回だけ受け取れる一時金で、第一種または第二種を利用している学生が対象となります。利用にあたっては、日本政策金融公庫の国の教育ローンを申し込んだが利用できなかった場合などの条件があります。

まとまった支出が集中する入学時に強い味方になる制度であり、家計の急な負担を軽減する役割があります。

第一種+第二種の併用貸与 ― 借入額が膨らみやすいパターンに注意

JASSOの奨学金は、第一種と第二種を併用して借りることも可能です。無利子と有利子を組み合わせることで必要な費用を確保しやすくなる一方、総借入額が大きくなりやすい点には注意が必要です。
特に「生活費が足りないから上限額で借りる」「第二種を最大月額で併用する」といったケースでは、卒業後の返済額が大きくなり、長期間の返済負担につながります。

併用を検討する際は、返済シミュレーションを必ず実施し、「毎月いくら返すことになるか」「返済期間が何年に及ぶか」を具体的に把握することが重要です。

JASSO以外の貸与型奨学金・条件付き給付制度

地方自治体の奨学金・返還支援制度の例

奨学金はJASSOだけでなく、全国の地方自治体も独自の給付型・貸与型制度を多数設けています。自治体によっては、大学進学時にまとまった資金を支給する「給付型奨学金」のほか、家計基準に応じて返済が必要な「貸与型制度」も整備されています。
さらに近年増えているのが、地域への定住や指定職種での就業を条件に返還額の一部または全額を自治体が支援する『返還支援制度』です。たとえば、地方に就職した若者を対象に、数年間の定住を条件に年間10〜30万円を補助する制度があるなど、内容は自治体ごとに多様です。
文部科学省も各自治体の返還支援事業をまとめており、「地元で働く予定がある」「地方就職を検討している」学生にとって大きなメリットとなります。

大学・短期大学の独自奨学金 ― 成績優秀者・経済支援・特定分野向け

大学や短期大学も、学生を支援するために独自の奨学金制度を数多く用意しています。代表例として、東北大学の給付型奨学金、近畿大学の成績優秀者向け奨学金などが挙げられ、その他にも多くの大学が「経済支援」「入学前予約型」「特定分野の学生向け」など、目的に応じた制度を備えています。
自校の学生を対象にしているため採用人数が比較的安定しており、JASSOと併用できるケースも多いのが特徴です。
多くの受験生は国の奨学金ばかりに目が向きがちですが、実際には大学独自制度のほうが採用の可能性が高いことも多いため、志望校の奨学金ページを事前にチェックしておくことが重要です。

民間財団・企業・業界団体の奨学金(キーエンス財団・トヨタ女性技術者基金など)

民間財団や企業、業界団体による奨学金も、進学家庭にとって大きな選択肢です。たとえば、月額10万円が4年間給付されるキーエンス財団の給付型奨学金、女性技術者を目指す学生を支援するトヨタ女性技術者育成基金などがあります。
これらは返済不要の給付型が多い一方、学業成績や将来のキャリアに関する基準が設定されていることがあります。また、条件付き貸与型として「一定条件を満たすと返還免除」となる制度を採用している団体もあり、非常に手厚い支援が受けられます。

知名度が高くないため見落とされがちですが、内容が優れている制度が多く、「知らないと損」をしやすいカテゴリでもあります。ベスト進学ネットなどの情報サイトでも多数紹介されているため、早めの情報収集が効果的です。

福祉系貸付制度 ― ひとり親世帯・交通遺児・社会的養護など特定事情向け

家庭状況に特別な事情がある学生に対しては、福祉系の貸付制度が用意されています。たとえば、母子・父子家庭を支援する母子父子寡婦福祉資金、交通事故で保護者を亡くした子どもを支援する交通遺児育英会、保護者が障がいを抱える家庭向けの貸付制度などがあります。
これらは無利子または非常に低利子で利用でき、返済期間も長く設定されていることが多いのが特徴です。経済的に困難な状況にある学生を対象としており、ほかの奨学金ではカバーできない範囲を支える重要な制度といえます。

対象条件は団体ごとに異なるため、家庭の状況に応じて該当する制度がないか確認しておくことが大切です。

貸与型奨学金の採用基準と申込みステップ

学力基準 ― 第一種と第二種の違い・「評定3.5」の意味

貸与型奨学金の採用基準には、まず「学力基準」があります。もっとも代表的な基準は第一種奨学金の評定平均値3.5以上です。これは、高校1年生〜申込時点までの全履修科目を対象にした成績基準で、一定以上の学修意欲があることを示す指標とされています。
ただし、住民税非課税世帯や生活保護世帯など、家計状況が特に厳しい場合には例外的に基準が緩和されることがあり、「3.5未満」でも第一種を申し込めるケースがあります。

第二種奨学金は、第一種よりも幅広い学生が対象で、学業成績は「おおむね平均以上」が目安とされる比較的緩やかな基準です。多くの学生に開かれている制度であり、必要に応じて第一種と併用することも可能です。

家計基準 ― 世帯人数・収入・資産で判断されるライン

奨学金の採用基準で最重要となるのが家計基準です。JASSOでは世帯人数や収入状況に応じた細かな基準が設けられており、世帯年収が一定額以下であるかどうかが判断されます。
たとえば、3人世帯・4人世帯・5人世帯では許容される収入ラインが異なり、給与所得か自営業(給与所得以外)かによっても基準が変わります。文部科学省やJASSOが公開している「進学資金シミュレーター」を使えば、自分の家庭がどの奨学金に該当するかを簡単に確認できます。

家計基準は奨学金の種類によっても変動するため、必ず最新の公式情報で確認することが重要です。

予約採用と在学採用の違い ― 高校経由か、大学からか

貸与型奨学金には、申し込み時期に応じて予約採用在学採用の2種類があります。
予約採用は高校在学中に申し込む方式で、高校を通して手続きが行われます。進学後の学費計画を早めに立てられるため、多くの学生が利用する方法です。採用候補者になると「採用候補者通知」が高校から配布され、大学入学後に正式に採用が確定します。

一方、在学採用は大学入学後に申し込む制度で、大学の奨学金担当部署を通じて手続きします。春と秋など年2回の申し込み機会があるのが一般的で、進学後に家計状況が変わった学生や、予約採用に間に合わなかった学生の利用が多いのが特徴です。

家計急変時の緊急採用・応急採用 ― 失業・災害などのセーフティネット

奨学金には、突然の家計悪化に対応するための緊急採用(第一種)応急採用(第二種)といった制度があります。
たとえば、以下のような事情が発生した場合に申し込みが可能です。

  • 保護者(生計維持者)の失業
  • 病気や事故による収入の急減
  • 家計の破産・倒産
  • 火災・災害などによる生活環境の変化

これらの制度は随時申し込み可能で、困ったときのセーフティネットとして非常に重要です。家計が急に厳しくなった場合でも、「もう無理だ」と諦める必要はありません。早めに学校やJASSOへ相談すれば、適切な支援を受けられる可能性が高まります。

貸与型奨学金の返済の仕組み:返還方式・期間・救済制度

返済はいつから?社会人1年目以降に始まる返還スケジュール

貸与型奨学金の返済は、大学卒業後すぐに始まるわけではありません。JASSOの場合、貸与終了後から一定期間をおいて返済がスタートします。具体的には、卒業後7か月後(社会人1年目の10月)から口座振替による返還が始まるのが一般的です。
卒業時には「貸与奨学金返還確認票」が学校経由で配布され、これに返済総額・返済回数・月々の返済額が明記されます。この内容をもとに、返済計画を立てることになります。

返済開始のタイミングを正しく理解し、社会人生活の収支計画に組み込んでおくことが重要です。

定額返還方式と所得連動返還方式の違い

JASSOの奨学金には、「定額返還方式」「所得連動返還方式」の2種類があります。返済負担を大きく左右するため、それぞれの特徴を理解して選択することが大切です。

●定額返還方式 – 毎月一定額を返すもっとも一般的な方式

  • 返済期間中、毎月の返済額がずっと一定。
  • 返済計画を立てやすく、将来の見通しが明確。
  • 収入が低い時期でも一定額の返済が必要なため、負担が大きくなることも。

●所得連動返還方式 – 年収に応じて返済額が変わる方式

  • 前年の所得に応じて返済額が自動的に変動。
  • 収入が少ない年は返済額が小さくなるため、生活への影響が抑えられる。
  • 収入が高い年は返済額が増える可能性がある。
  • キャリアの初期など収入が安定しない人に向いている方式。

どちらを選ぶかは、将来の進路・収入見込み・働き方によって大きく変わります。「安定収入のある職種なら定額」「キャリア初期に収入が低くなる見込みなら所得連動」など、ライフプランから逆算して選ぶことが重要です。

返済期間の目安と総返済額 ― 借入額×利子でどこまで増える?

奨学金の返済期間は、借入額と返済方式によって大きく変わります。たとえば、月5万円 × 4年間借りた場合、総借入額は約240万円になります。定額方式で返済すると、返済期間は10〜20年に及ぶことが多く、場合によっては30代後半〜40代まで返済が続くケースもあります。

第二種奨学金などの有利子型の場合、利息が加算されるため、実際の総返済額は借りた金額よりも大きくなる点にも注意が必要です。借りる前に必ず、返済シミュレーションを行い、毎月の負担と総返済額を把握しておきましょう。

返済が難しくなったときの救済制度 ― 減額返還・返還期限猶予・免除等

返済が厳しくなった場合でも、すぐに滞納する必要はありません。JASSOでは、さまざまな救済制度を用意しており、状況に応じて返済負担を軽減することができます。

  • 減額返還制度:収入が少ないときに、一定期間返済額を減らせる制度。
  • 返還期限猶予:失業・病気・災害などで返済が困難な場合に、返済を一定期間猶予。
  • 利息の一部免除:条件によって利息が軽減される場合がある。
  • 返還免除:障がい・死亡など、やむを得ない事情がある場合に免除される制度。

返済が難しくなったと感じたら、延滞する前に早めにJASSOへ相談することが最も重要です。適切な制度を利用すれば、社会人生活を守りながら返済を続けることができます。

貸与型奨学金のメリット・デメリット・よくある誤解

メリット ― 「お金が理由で進学を諦めない」を支える制度

貸与型奨学金の最大のメリットは、経済的な事情に左右されず「学びたい」という意思を実現できる点です。学費や生活費の負担が大きい家庭でも、奨学金を活用することで進学の選択肢が広がります。
また、第一種奨学金(無利子)は返済時に利息がつかず、第二種奨学金(有利子)も教育ローンより金利が低めに設定されています。
さらに、在学中は返済が一切発生しないため、学生生活に集中できるのも大きなメリットです。

  • 進学機会の平等を支える制度である
  • 第一種は無利子、第二種も低金利で利用しやすい
  • 在学中の返済が不要で、学業に専念できる

デメリット ― 長期にわたる返済負担と心理的ストレス

一方で、貸与型奨学金には確実に「返済」が伴います。特に第二種奨学金を多額に借りた場合、返済期間が20年以上に及ぶケースも珍しくありません。
社会人になってからは、結婚・出産・住宅購入などのライフイベントが続き、家計への負担が増えます。そのなかで毎月一定額の返済が必要になるため、精神的にも家計的にも負荷を感じる人は少なくありません。

  • 返済が20年以上続くケースがある
  • ライフイベントと返済が重なり、家計を圧迫する
  • 心理的ストレス(「借金を抱えている」という不安)につながる

よくある誤解①「後からなんとか免除になる」→基本はならない

「卒業して働いたら、なんとかなる」「免除制度があるから大丈夫」と考える学生もいますが、これは大きな誤解です。
JASSOの返還免除制度は死亡・障がいにより労働が困難な場合など、極めて限定的な状況に限られます。通常の家計苦や生活の厳しさでは免除にはなりません。
そのため、貸与型奨学金はあくまで「必ず返すべきお金」という前提で利用する必要があります。

よくある誤解②「とりあえず最大額で借りておけば安心」→借り過ぎリスク

奨学金は必要最低限の額で利用することが基本です。
「とりあえず最大月額で借りておきたい」「生活費にも余裕が欲しい」と安易に借りると、卒業後の返済総額が膨らみ、手取り収入を圧迫してしまいます。
たとえば月8万円を4年間借りると、総額は384万円。第二種(有利子)であれば利子がつき、総返済額はさらに増えます。

初任給が手取り18〜20万円程度の場合、毎月1.5万円〜2万円の返済は大きな負担となり、「思っていた以上に生活が苦しい」と感じるケースも珍しくありません。
奨学金は「余裕のために借りる」ものではなく、必要な分だけ借りることが重要です。

  • 借り過ぎると返済総額が大幅に増える
  • 手取り収入の10〜15%を占めることもあり、生活が苦しくなる
  • 返済額をシミュレーションし、適正額を見極めることが重要

借り過ぎを防ぐ!貸与型奨学金の選び方と返済計画の立て方

まず「必要な進学費用と家計のギャップ」を見える化する

奨学金を安全に利用するための第一歩は、「いくら必要で、いくら不足しているのか」を明確にすることです。 多くの家庭では、なんとなくの感覚で奨学金を申し込んでしまいがちですが、借り過ぎを防ぐためには次の3ステップが必須です。

  • ①学費:授業料、入学金、施設費、実習費などを大学の募集要項から確認
  • ②生活費:家賃、光熱費、食費、教材費、通学費などを年間で計算
  • ③家計から出せる額:家庭負担・アルバイト収入・給付型奨学金などを差し引く

この「必要額 − 入ってくるお金 = 奨学金などで補う額」の計算が、借入額の基準になります。 感覚ではなく具体的な数字で見える化することで、余計な借入を防ぐことができます。

第一種・第二種・給付型・自治体・大学を組み合わせて最適化

奨学金はひとつの制度だけで考えるのではなく、複数の制度を組み合わせて最適化することが重要です。 借り過ぎを防ぐための基本方針は次の通りです。

  • ① 返済不要のお金(給付型)を最大化:住民税非課税世帯など、該当すれば最優先。
  • ② 無利子の第一種を優先:返済額を最小限に抑えられる。
  • ③ 自治体・大学独自の支援を確認:返還支援・条件付き免除がある制度も。
  • ④ 最後に有利子(第二種)を必要最低限だけ借りる:借入額を抑える重要ポイント。

この順番で検討すれば、返済総額を大きく抑えることができ、卒業後の負担も軽減できます。

進路別の考え方 ― 地方就職・専門職・大学院進学を見据えた借入額

進路によって初任給・生活費が大きく変わるため、借入額は「卒業後の収入で無理なく返済できるか」を基準に考える必要があります。

●地方就職の場合

  • 初任給が都市部より低めになる傾向
  • 返済額は「手取り収入の10%以内」を目安に

●専門職(医療・保育・福祉など)の場合

  • 資格取得費用や必要経費を見込みつつ、返済額を抑える
  • 自治体の返還支援や条件付き給付制度を必ず確認

●大学院進学を視野に入れている場合

  • 学部+大学院で借入額が大きくなりがち
  • 長期返済を前提に「無利子中心+有利子最小限」で設計

いずれの進路でも、返済額が給与の大部分を占めてしまうと生活に支障が出るため、「返済比率10〜15%以内」を一つの目安にすると安全です。

簡易シミュレーションのやり方 ― 月額×年数から返済負担を逆算しよう

借り過ぎを防ぐ最も簡単な方法は、「借りたらいくら返すことになるのか」を事前に計算しておくことです。 以下の手順で簡易シミュレーションができます。

  • 例:月5万円 × 4年間 = 総額240万円
  • 定額返還(20年返済) → 毎月1万円前後
  • 利子がつく第二種の場合 → 総返済額が250万〜270万円に増加

このように、借りる段階でざっくりとした返済イメージを持つだけで、借入額の判断が大きく変わります。 正確に知りたい場合は、文部科学省・JASSOの「進学資金シミュレーター」の活用がおすすめです。

チェックリスト&Q&A:貸与型奨学金を申し込む前に確認したいこと

申し込み前チェックリスト(10〜15項目)

貸与型奨学金は一度借りると長期間の返済が続くため、申し込み前に「本当に必要か」「借りる額は妥当か」を丁寧に確認しておくことが重要です。以下のチェックリストを参考に準備を進めましょう。

  • 給付型・自治体・大学独自の奨学金を調べたか
  • 家計状況がどの基準に当てはまるか確認したか(非課税・準ずる世帯など)
  • 高校での成績が第一種・第二種のどちらに該当するか確認したか
  • 必要な学費・生活費・入学時費用を計算し、不足額を明確にしたか
  • 家庭からの仕送り・アルバイト収入など「返さなくてよいお金」を最大化したか
  • 複数の奨学金(JASSO・自治体・大学・財団)を比較したか
  • 月々の返済額をシミュレーションしたか
  • 返済方式(定額返還方式/所得連動返還方式)の違いを理解したか
  • 卒業後の進路と初任給の見込みを把握したか
  • 就職地域(都市部・地方)による生活費の違いを考慮したか
  • 借入額が将来のライフイベント(結婚・出産・住宅購入)に影響することを理解したか
  • 「最大額を借りる」という判断をしていないか
  • 家計急変時の制度や猶予制度を把握しているか
  • 返済が厳しくなった際の相談窓口(JASSO・大学)を確認したか

Q&A① 保証人・機関保証は必要?親が返済することもある?

JASSOの貸与型奨学金を利用する場合、「人的保証」「機関保証」のどちらかを選択します。

  • 人的保証:親・親族などが保証人/連帯保証人となる方式
  • 機関保証:保証料を支払って保証機関に依頼する方式(親族に依頼不要)

どちらを選んでも、返済義務の主体は学生本人です。 ただし、返済が滞ると保証人に負担が及ぶ可能性があるため、家族とよく話し合うことが重要です。 本人が返済できない場合でも、原則として親が返済義務を負うものではありません。

Q&A② 複数の奨学金は併用できる?「借り過ぎ」にならないラインは

結論として、JASSO・自治体・大学・民間財団など、複数の奨学金は併用可能です。ただし、給付型は併用不可のケースもあるため、制度ごとの要件を確認する必要があります。

借り過ぎを防ぐためには、以下のラインをひとつの目安にできます。

  • 返済比率(毎月の返済額):手取り収入の10〜15%以内
  • 総借入額:300万円を超えると負担感が一気に増える(生活費地域差・進路により調整)

特に第二種奨学金は借入上限が高いので、必要額を超えて申し込まないことが大切です。

Q&A③ 大学を中退・留年・休学したら、貸与型奨学金はどうなる?

中退・留年・休学は奨学金に直接影響します。JASSOの場合の一般的な扱いは次の通りです。

●中退した場合

  • その時点で貸与が停止
  • 一定期間後に返済が開始される

●留年した場合

  • 成績不振による留年でも学内在学扱いのため、貸与は「在学する年限まで」継続
  • ただし延長分の学費は奨学金が出ないため負担増

●休学した場合

  • 原則として貸与が一時停止
  • 返済開始を延期するためには「在学猶予」の手続きが必要

どの場合でも、速やかに大学の奨学金担当・JASSOに相談し、必要な届出を行うことが大切です。

Q&A④ 返済が厳しくなったらすぐ相談すべき窓口

返済が難しいと感じたら、延滞する前に必ず相談しましょう。利用できる窓口は次の通りです。

  • JASSO「奨学金返還相談センター」:減額返還・返還期限猶予・支援制度の相談
  • 大学の奨学金担当窓口:制度変更・休学時の手続き・猶予申請のサポート
  • 自治体の奨学金窓口:返還支援制度・地域就職支援などの相談

返済の悩みを放置すると延滞扱いとなり、信用情報に傷がつく可能性もあります。 「返済が難しい」と感じたら、まずはすぐに相談することが最も重要です。

まとめ:貸与型奨学金は「正しく知り、計画的に使えば」強力な味方になる

貸与型奨学金は、進学の機会を広げる重要な制度です。学費負担が大きくても「学びたい」という意欲を後押しする一方で、将来にわたって返済が続く点は、しっかり理解しておく必要があります。給付型・無利子・有利子の違いや、自治体・大学独自の制度を比較し、返済不要のお金を最大化することが負担軽減の第一歩です。また、借入額は「必要な費用と家計のギャップ」から算出し、手取り収入の10〜15%以内に返済が収まるラインを目安にすると安全です。借り過ぎれば、結婚・出産・住宅購入など将来のライフイベントに影響する可能性もあります。返済が難しくなった場合は、延滞する前にJASSOや大学窓口へ相談することが大切です。制度を正しく理解し、計画的に利用することで、貸与型奨学金はあなたの進学と将来を支える大きな力になります。

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