人手不足が深刻化する中、九州・山口地域の企業が独自の福利厚生に力を入れ始めています。特に注目されるのが、新卒採用や社員定着を目指した「奨学金返済支援制度」の導入です。この制度は、単なる賃上げでは実現できない魅力を付加する手段として注目を集めています。
例えば、福岡市の電気・空調管工事会社である九電工は、新入社員を対象に奨学金の返済を月額1万5000円を上限に最長10年間肩代わりする制度を昨年からスタートしました。この取り組みは、奨学金という若年層の大きな経済的負担を軽減するだけでなく、「働きやすさ」をアピールする強力な武器となっています。
このような福利厚生の拡充は、単に社員の経済的支援を目的とするだけではありません。働きやすい環境の整備は、企業の魅力を高める手段として、新卒採用や社員の定着率向上に直結します。また、福利厚生が差別化要因となり、人手不足の解消に寄与することが期待されています。
実際、昨年12月に帝国データバンクが実施した調査では、全国の企業の52.6%が「人手不足を感じている」と回答しました。この現状を受けて、企業は奨学金返済支援や社員寮の新設といった待遇改善に力を入れるだけでなく、賃金面での競争も激化しています。2024年の春闘では、大手企業の賃上げ率が5.33%と、1991年以来の高水準に達しました。
今後も奨学金返済支援をはじめとする福利厚生の充実は、企業が「選ばれる存在」となるための重要な戦略となるでしょう。奨学金という負担を減らし、未来を支える若い人材の成長を支援する企業の動きは、働く人々にとっても社会全体にとっても大きな価値を生み出しています。
出典元:全室風呂トイレ付き社員寮・奨学金返済一部肩代わり・卵子凍結費用負担…福利厚生充実で「選ばれる企業」へ|讀賣新聞オンライン