奨学金返済中の方にとって、転職は経済的なリスクを伴う重大な決断です。
月々の返済スケジュールが固定されている中での転職は、収入が一時的に途絶えることへの不安も頭をよぎりやすく、キャリアアップへの大きな障壁となるでしょう。
この記事では、奨学金返済中の転職活動スケジュールについて、退職から入社までの計画の立て方を詳しく解説します。
奨学金返済中の転職は、明るい未来へ向かうための前向きな投資になるため、転職を成功させるためのポイントを確認しましょう。
奨学金返済中の転職が難しいと感じる理由
まずは、多くの方が奨学金返済中の転職が難しいと感じる理由を整理します。
収入が一時的に途絶えることへの不安
転職を躊躇する理由として特に多いのは、収入が一時的に途絶えることへの不安です。
退職してから次の会社に入社し、初任給が振り込まれるまでの間には、通常1ヶ月半から2ヶ月程度の無収入期間が生じます。
この期間中も、家賃、食費などの生活費に加え、奨学金の返済が必要になるため、金銭面での不安を抱えやすいのです。
返済スケジュールが固定されているため自由度が低い
奨学金の返済スケジュールは長期的に固定されます。
そのため、支出をコントロールするための自由度が低いことも難点です。
「まずは退職して、ゆっくり転職先を探そう」という判断を下しにくく、これが奨学金返済中の転職は現実的ではないと考える原因になります。
生活費+返済で貯蓄がしづらく、転職資金が不足しがち
多くの奨学金返済者は、月々の返済に加えて生活費を工面する必要があるため、まとまった貯蓄ができません。
転職活動には、証明写真を撮影したり、面接用の衣服を揃えたりなどのコストがかかります。
貯蓄が少ない状況では、これらの転職活動費すら確保しにくくなるでしょう。
転職期間中の「減額返還・返済猶予制度」を知らない人が多い
経済的に困難な状況に陥った場合、奨学金の返済負担を軽減する減額返還制度や返還猶予制度を利用できる可能性があります。
しかし、これらの制度の存在や転職活動中にも利用できることを知らない方が多く、必要以上に経済的なリスクを恐れてしまいがちです。
奨学金返済中でも転職は可能【計画次第でリスクは抑えられる】
結論から申し上げますと、奨学金返済中でも転職は可能です。
ここでは、リスクを抑えて転職活動を行うためのポイントを4つご紹介します。
返済中でも転職は問題なし
奨学金の返済義務があること自体は、転職活動を行ううえでの障壁にはなりません。
毎月の引き落としを遅延なく行っていれば、個人の信用情報に影響が出ることもないのです。
自信を持って、キャリアアップを実現するための転職を目指しましょう。
大切なのは「返済+生活+転職活動費」のバランス設計
奨学金返済中に転職を成功させるカギは、緻密な資金計画にあります。
具体的には、奨学金返済額、無収入期間の生活費、そして転職活動費の資金バランスを整えることです。
貯蓄額や生活費を把握したうえで、転職活動の期間を明確に定めると、資金不足に陥るリスクを回避できます。
返済スケジュールを前倒し・一時停止など柔軟に調整できる
JASSOの救済制度を利用すれば、奨学金の返済を一時的にストップしたり、返済額を減額したりできる可能性があります。
また、資金に余裕がある場合は、返済スケジュールを前倒しする繰上返済も選択肢に加えられ、転職期間中の経済的リスクを大幅に抑えることが可能です。
転職を機に「奨学金返還支援制度」がある企業を選ぶのも有効
奨学金返還支援制度を導入する企業への転職を目指すのも一つの手です。
奨学金返還支援制度とは、従業員が返還する奨学金の一部または全額を会社が肩代わりする制度を指します。
この制度を導入する企業に転職すると、年収自体は上がらなくても可処分所得を増やせる可能性があります。
奨学金返済中に転職する際の理想的なスケジュール【全体像】
ここでは、奨学金返済中に転職する場合の理想的なスケジュールと活動期間ごとにすると良いことをご紹介します。
① 準備期間(3ヶ月前~)
転職の準備期間では、土台となる経済基盤を固めることが重要です。
そのためのポイントが3つあります。
・家計状況と返済スケジュールを見直す
・奨学金返済猶予の可否を確認
・転職エージェントとの面談を開始
まずは家計と奨学金の返済スケジュールを再確認して、転職活動中に使えるお金がいくらあるか整理しましょう。
経済的な理由で転職が難しい場合は、JASSOの救済制度を利用できるか確認してください。
転職エージェントに相談すると、日常業務に穴を開けることなく、適切な転職先を見つけられます。
② 転職活動期間(2~3ヶ月)
転職活動期間は、現職と並行しながらも特に力を入れて転職先を探す期間です。
この間のチェックポイントは3つあります。
・面接・内定までのスケジュール感
・在職中に活動するのが理想(収入を維持)
・退職時期を内定スケジュールに合わせる
面接から内定までにかかる期間は平均して2~3ヶ月です。
この間に転職エージェントと連携しながら日程を調整し、スケジュール感を整理しましょう。
収入を維持するために、在職中に転職活動を完了させるのが理想です。
内定が出たら、入社日と退社日を調整し、この期間をできるだけ近付けましょう。
③ 退職~入社準備期間(1ヶ月)
退職から入社までの谷間の期間は、無収入になりがちです。
金銭的な苦労を避けて転職を済ませるためのポイントが2つあります。
・有給消化と引継ぎを並行
・無収入期間中の返済対応を計画
前職の有給が残っている場合は、引継ぎを行いつつ、無駄なく消化して使い切りましょう。
有給消化後も無収入期間が続く場合は、減額返還制度などを利用したり、貯金を切り崩したりしながら、奨学金返済が滞らないように調整してください。
④ 入社後3ヶ月間
入社後の3ヶ月間は、新しい職場に適応するための期間です。
ポイントは2つあります。
・給与支給までの期間を想定して生活費を確保
・返済再開と家計リズムを整える
初任給が振り込まれるまでの生活費を貯蓄から確実に確保しましょう。
猶予制度を利用していた場合は、初任給が支払われるタイミングに合わせて、奨学金返済を再開することが重要です。
返済を後回しにすると、返済期間が延びてしまい、将来のライフプランに悪影響を及ぼす場合があります。
退職前に必ず確認すべき奨学金返済関連の手続き
退職前には確認すべき奨学金返済関連の手続きが4つあります。
それぞれが必要になるタイミングとポイントを見てみましょう。
① 返済口座の変更
転職後の給与口座が変わる場合は、奨学金返済口座と給与口座を合わせることをおすすめします。
残高不足による奨学金の滞納を防ぎやすくなるためです。
返済口座の変更は、JASSOが運営するスカラネット・パーソナルからオンラインで行えます。
② 引き落とし日と給与支給日のズレ対策
JASSOの引き落とし日は一般的に毎月27日です。
これが新しい職場の給与支給日とズレると、引き落とし日に残高不足が発生する場合があります。
特に転職直後の初任給支給前は、奨学金引き落とし口座を確認して、残金が不足していないか調べましょう。
③ JASSO「返還猶予・減額返還制度」の申請タイミング
返還猶予や減額返還制度は、利用したい月の1ヶ月前までには申請を終えましょう。
退職日が決まり、無収入期間が確定した時点で申請準備を進めることが大切です。
退職証明書などの必要書類も生じるため、時間に余裕を持って書類の収集と申請手続きを進めてください。
④ 奨学金の繰上返還・一部返済も検討可能
退職金や有給消化などでまとまった資金が手に入った場合は、転職を機に奨学金の繰上返還を検討するのも有効です。
繰上返還を行うと元金が減り、将来支払う予定の利息をカットできます。
繰上返還や一部返済は、返済負担の軽減とキャリアアップを並行できる優れた手段です。
転職活動中の家計管理と返済対策
転職活動中の家計管理と返済対策について、4つのポイントから解説します。
生活費の見直し
転職活動期間中は、一時的に収入が途絶えることを前提に、徹底した家計管理を行いましょう。
通信費、サブスクリプション、保険料などの固定費を見直すと効果的です。
また、外食費や娯楽費などの変動費も抑え、生活をシンプルにすることにより、無駄遣いを防ぎます。
返済額の一時的調整
毎月の返済が厳しい場合は、先述した減額返還制度を利用して月々の負担を軽減しましょう。
以前の勤務先でボーナスを奨学金返済に充てていた場合、転職後に賞与の支給タイミングが変わると、返済困難に陥る場合があります。
このようなリスクも見据えて、月々の返済額を調整しましょう。
転職活動費の確保
転職活動は、想定以上に出費がかさむものです。
面接のための交通費、企業訪問、新しい職種に合わせたスーツや資格取得費用など、活動にかかる費用を事前に算出し、貯蓄から確保しておきましょう。
活動費の出費を惜しむと、希望する企業への挑戦を諦めざるを得なくなる可能性があります。
転職期間が長引いた場合の備え
計画通りに転職が決まらない場合に備え、予備の貯蓄を確保しておきましょう。
また、時間に余裕がある場合は、就業規則で許される範囲で短期間のアルバイトや副業を行い、生活費や返済資金を補うことも有効です。
必要に応じて、失業保険など公的な支援制度の活用も検討してください。
奨学金返済を支援する企業の活用方法
ここでは、奨学金返済を支援する企業の活用方法を4つご紹介します。
奨学金返還支援制度とは
奨学金返還支援制度とは、企業が福利厚生の一環として、社員の奨学金返済額の一部または全額をサポートする仕組みです。
特に、JASSOの代理返還制度は、従業員に対して支援額が非課税となる税制上の優遇が適用されるため、実質的な手取り増加につながります。
企業が社員の奨学金を代理返済する仕組み
企業は、社員の同意を得たうえで、その社員の奨学金返済額を決定し、給与とは別にJASSOへ直接送金します。
社員にとっては、毎月の返済負担が軽減されるだけでなく、非課税による恩恵も受けられるため、可処分所得を増やせることがメリットです。
支援企業の増加背景
支援制度を導入する企業が増えている背景には、人材確保競争の激化があります。
奨学金返済という現代の若者が抱える課題を企業が解決することにより、採用市場における競争優位性を高め、優秀な人材の獲得や離職率の低下につながると認識されたため、支援企業が増えているのです。
転職時に「奨学金返還支援あり企業」を探すコツ
転職活動時には、求人情報の福利厚生、手当欄を詳細にチェックすることはもちろん、転職エージェントに「奨学金返還支援制度がある企業を優先したい」と明確に伝えることが重要です。
また、後述する奨学金バンクを活用すると、効率的に奨学金返還支援制度がある企業を見つけられます。
奨学金バンクとは?日本初の奨学金返還支援プラットフォーム
奨学金バンクとは、奨学金返済を行っている人や企業を支える、日本初の奨学金返還支援プラットフォームです。
ここでは、サービスの特徴を4つのポイントに分けてご紹介します。
奨学金返還型人材紹介サービス
奨学金バンクは、企業による奨学金返還支援の導入・運用をサポートし、奨学金返済を抱える求職者と支援企業とのマッチングを専門に行うプラットフォームです。
返済負担を軽減する優良企業への就職・転職を支援し、奨学金利用者が経済的な制約なくキャリア選択をできるよう後押ししています。
奨学金返還支援サービス
奨学金バンクは、支援制度を導入したい企業に対して、複雑な代理返還制度の導入・運用をトータルで代行します。
これにより、企業は制度導入の障壁をなくし、従業員支援に集中できるのです。
サステナ支援サービス
奨学金問題への取り組みは、企業の社会的責任(CSR)やSDGsの目標達成に直結します。
奨学金バンクは、企業がこの支援を単なる福利厚生で終わらせず、社会貢献によるブランディングを実現するための支援も行っています。
奨学金返済を抱える人のキャリアを後押しする仕組み
奨学金バンクは、奨学金返済を抱える人々が、経済的なプレッシャーから解放され、自身の能力や理想に基づいてキャリアを選択できるよう後押しする仕組みです。
一貫した支援体制を構築することにより、個々が理想とするキャリアを歩み、社会で活躍できるようサポートしています。
奨学金返済とキャリアアップを両立させるコツ
奨学金返済とキャリアアップを両立させるコツが4つあります。
それぞれのポイントを見てみましょう。
収入アップを狙える業界・職種を検討
奨学金返済を早期に完了させてキャリアアップを図るためには、成長性があり、自身のスキルが活かせる環境があり、さらに若手でも早期に高収入を得やすい業界や職種に転職しましょう。
たとえば、IT・Web系やコンサルティングといった専門性の高い技術職は、若手の昇給幅が大きい傾向にあります。
転職後の返済再設計
転職によって収入が増えた場合、その増収分を生活水準の向上に使うのではなく、まずは奨学金の繰上返還に充てることを検討しましょう。
特に第二種奨学金の場合、将来支払う利息を大幅にカットできるため、返済総額が下がります。
早期返済により、結婚・出産、住宅購入といったライフイベントにも備えやすくなるでしょう。
奨学金返済を理由に「挑戦しない」ことのリスク
奨学金返済は不安という理由だけで、成長できる環境や挑戦的なポジションへの転職を諦めることは、キャリアの機会損失という大きなリスクを負います。
目先の安定した収入に固執した結果、自身の市場価値を高められずキャリアアップに失敗する可能性があるため、奨学金返済中でも積極的に転職を検討しましょう。
返済をモチベーションに変えるキャリア思考
奨学金返済を単なる負債ではなく、教育への自己投資と捉え、その投資を早期に回収するためのモチベーションに変換しましょう。
返済完了という明確な目標を持つことにより、仕事への集中力やスキルアップへの意欲を高め、結果としてキャリアアップを加速させられます。
まとめ
奨学金返済中の転職は、無収入期間のリスクや資金的な不安が伴いますが、綿密な計画を立てることにより、そのリスクを大幅に抑えられます。
奨学金バンクを利用して転職先を探すと、奨学金返還支援を導入する企業を発見でき、転職後の返済負担を大幅に減らすことが可能です。