全国の自治体では、奨学金を利用した人のUターン・Iターンや地域定着を支援するため、奨学金返還を支援するさまざまな制度が設けられています。
こうした取り組みの中には、地方交付税を活用した奨学金返還支援の仕組みもあります。
一方で、実際に制度を利用する側から見ると、「もう少し使いやすくできないのではないか」と感じるケースもあります。
今回は、奨学金返還支援制度について、奨学金バンクが考える「より利用しやすい制度」のあり方についてご紹介します。
自治体による奨学金返還支援が広がっている
奨学金返還支援制度は、自治体が地域への人材の定着などを目的として、奨学金の返還を支援する取り組みです。
たとえば、大学などを卒業した人が自治体の対象地域へUターン・Iターンし、一定期間その地域で勤務・居住することなどを条件として、奨学金の返還を支援する制度があります。
こうした制度は、若者の地域定着や人材確保を目的として、各地で設けられています。
しかし、制度の対象となる職種や条件などは自治体によって異なります。
「人材を呼び込みたい」という自治体のニーズと制度の条件
自治体によっては、薬剤師や医師、建設コンサルタントなど、特定の職種を対象として奨学金返還を支援する制度があります。
地域にとって不足している人材を呼び込むという目的を考えれば、こうした条件を設けることには一定の理由があります。
一方で、特定の職種だけではなく、「地域に戻ってきてほしい」「地域で活躍してほしい」と考える人材に対して、もう少し幅広く支援できる仕組みがあってもよいのではないでしょうか。
奨学金返還支援をきっかけに、Uターン・Iターンや地域での新しい挑戦につながる可能性もあります。
事前登録が必要な制度にも課題があるのでは?
もう一つ、奨学金バンクが気になっているのが、補助金を利用するために事前登録が必要となっているケースです。
行政側からすると、事前に登録してもらうことで、どの程度の企業や採用人数が制度を利用するのかを把握し、必要な予算を見積もりやすくするという考え方があります。
一方、企業側からすると、採用できるかどうか分からない段階で、あらかじめ制度への登録を行う必要があります。
特に、人材採用に苦労している企業にとっては、計画どおりに採用できるとは限りません。
そのため、「採用が決まった後に奨学金返還支援を申請できる仕組みのほうが利用しやすいのではないか」という考え方もできます。
予算と利用しやすさをどう両立するか
もちろん、行政の補助金には予算上の制約があります。
事前登録によって利用見込みを把握し、予算を適切に確保するという考え方にも理由があります。
ただ、制度を必要としている企業や人がいても、事前登録などの条件によって制度を利用できなければ、結果として用意された支援が十分に活用されない可能性があります。
「予算を管理すること」と「必要な人が使いやすいこと」。
この2つをどのように両立するかが、今後の奨学金返還支援制度を考えるうえで重要ではないでしょうか。
奨学金返還支援を、より地域の人材確保につなげるために
奨学金返還支援は、単に奨学金の負担を軽減するだけではなく、Uターン・Iターンや地域での就職、定着を後押しする可能性があります。
だからこそ、対象となる人材や職種、申請方法などについて、より多くの企業や人が利用しやすい制度にしていくことが重要だと考えています。
全国でさまざまな奨学金返還支援制度が広がる中、制度を「つくる」だけでなく、実際に利用される仕組みにしていくことも大切です。
奨学金バンクでは、今後も奨学金返還支援を取り巻く制度や社会の動きについて発信していきます。