医学部でも、JASSOや大学・財団の給付型奨学金を利用できます。ただし、対象大学・学年・家計・学力などの条件があります。また、指定地域や病院で働くことで返還が免除される貸与制度は、給付型とは異なり、条件を満たさなければ返済が必要です。
この記事では、主に医学部医学科への進学予定者・在学生に向けて、利用できる制度の例と、返済不要になる条件の確認方法を紹介します。
※2026年度の在学生向け情報と2027年度の募集情報を区別して記載しています。応募前に、対象年度の公式募集要項を確認してください。
医学部の「返済不要」は、給付型と条件付き返還免除に分けて考える
医学部の奨学金を探すときは、最初に「給付型」か「勤務などを条件に返還が免除される貸与型」かを確認しましょう。どちらも返済負担を減らせますが、将来の進路に関わる条件が異なります。
| 比較項目 | 給付型奨学金 | 勤務条件付きの貸与・返還免除制度 |
|---|---|---|
| 基本的な仕組み | 原則として返還不要のお金を受け取る | 資金を借り、所定の条件を満たすと返還が免除される |
| 主な確認事項 | 対象大学・学年、家計・学力、給付期間、継続条件 | 応募条件に加え、勤務先・地域・期間・診療科など |
| 卒業後の進路 | 制度ごとの募集要項で確認する | 指定された勤務条件に従う必要がある |
| 返済が必要になる場合 | 不正受給など、制度で定められた例外 | 免除条件を満たさなかった場合など |
| 選ぶ際のポイント | 自分が応募・継続できるか | 希望する医師としての進路と両立できるか |
「無利子」と「返済不要」も別の意味です。 JASSOの第一種奨学金は無利子の貸与型であり、給付型ではありません。利息が付かなくても、原則として借りた元金の返還が必要です。
給付型も、あらゆる場合に返還義務がないわけではありません。国の修学支援新制度では、不正な手段で支援を受けた場合や、著しい学業不振などで、受け取った支援の返還を求められることがあります。
出典:JASSO「給付奨学金」、文部科学省「学生向けQ&A」
医学部で利用できる給付型奨学金と対象条件
医学部で検討できる給付型には、学部を問わないJASSOの制度、大学独自の制度、医学を学ぶ学生を対象とした財団の制度があります。
以下は代表例です。全国の制度を網羅した一覧ではなく、募集年度や対象者もそれぞれ異なります。
| 制度・運営主体 | 対象年度・募集状況 | 主な対象 | 給付額・期間 |
|---|---|---|---|
| JASSO給付奨学金 | 2026年度在学採用、2027年度進学者向け予約採用など。学校の受付状況を確認 | 修学支援新制度の対象校に進学・在学し、申込資格や家計・学力基準を満たす人 | 支援区分・国公立/私立・通学形態で異なる。原則、採用後から正規の卒業時期まで |
| 大学独自の給付・特待生制度 | 志望校・在籍校の最新募集を確認 | 入試成績、在学成績、家計など、大学所定の条件を満たす人 | 大学・制度によって異なる |
| ベル財団 | 2027年度給付。募集は2026年9月1日~10月20日 | 東京都と周辺の指定地域にある医学部・医学研究科の学生など | 月額2万5,000円、年額30万円。2027年4月~2028年3月 |
| 杜の都医学振興財団 | 2026年度募集は終了 | 指定7大学の医学部医学科。募集対象学年は2026年4月時点の新1~4年生 | 月額6万円相当、年額72万円。原則、正規の最短修業年限内 |
出典:JASSO「給付奨学金」、ベル財団「2027年度募集要項」、杜の都医学振興財団「2026年度募集要項」
JASSOの給付奨学金は医学部も対象になり得る
医学部という理由だけで、JASSO給付奨学金の対象外になるわけではありません。進学先・在籍校が修学支援新制度の対象校であり、本人が申込資格、家計・学力などの基準を満たす必要があります。
主な確認項目は次のとおりです。
- 進学先・在籍校が制度の対象校か
- 高校卒業から進学までの期間や、国籍・在留資格などの申込資格を満たすか
- 本人と生計維持者の収入・資産が基準内か
- 学業成績または学修意欲に関する基準を満たすか
学力基準も「高校の評定平均が3.5未満なら必ず対象外」とは限りません。予約採用では、評定平均3.5以上という基準のほか、学修意欲を文書・面談などで確認する経路があります。在学採用は学年に応じて基準が異なるため、在学生は在学採用の条件を確認してください。
出典:文部科学省「支援対象校一覧」、JASSO「予約採用の申込資格」、「予約採用の学力基準」、「在学採用の学力基準」
給付額は、支援区分、国公立・私立、自宅・自宅外通学によって決まります。例えば、第1区分の大学生に対する通常の月額は次のとおりです。
| 大学の設置区分 | 自宅通学 | 自宅外通学 |
|---|---|---|
| 国公立 | 月額2万9,200円 | 月額6万6,700円 |
| 私立 | 月額3万8,300円 | 月額7万5,800円 |
※2026年10月4日に確認した現行の通常課程・第1区分の金額です。生活保護を受ける生計維持者との同居など、所定の条件では自宅通学の金額が異なります。自宅外通学の認定には要件・手続きがあります。ほかの支援区分の金額や2027年度の適用内容は公式案内で確認してください。
医学科の6年課程でも、支給期間は原則として採用後から正規の卒業時期までです。ただし、途中の学業・家計の確認によって支援内容が変わる場合があり、6年間同じ金額が保証されるわけではありません。
大学独自の給付・特待生制度は志望校と在籍校で確認する
大学独自の支援では、現金を給付する奨学金と、授業料などを減免する制度を分けて確認しましょう。
例えば、日本大学医学部の公式ページには、学部2年次以上を対象とする「日本大学特待生」などの給付制度が掲載されています。ただし、掲載人数には過去年度の実績が含まれるため、現在の採用枠や金額は最新の学内募集で確認する必要があります。
進学前なら入試要項・入学前予約型の案内、在学中なら学生向けポータルや学生課の募集通知を確認してください。特待生という名称だけで判断せず、支援期間、進級時の審査、ほかの奨学金との併用条件まで調べることが大切です。
財団の給付奨学金は対象大学・学年・募集年度で絞る
財団の奨学金は、対象地域や学年が限定されることがあります。制度名と金額だけでなく、自分が応募できる年度・学年かを先に確認しましょう。
ベル財団の2027年度奨学金は、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・群馬県・茨城県・栃木県・山梨県の医学部・医学研究科に在学する学生などが対象です。
公式要項では、2026年4月1日時点で学部2年生以上または大学院生、30歳以下などの条件があり、経済的な修学困難、学業・人物、過去の受給期間も審査対象です。給付年度と学年・年齢の基準年が異なるため、自己判断で2027年の条件に読み替えず、不明点は財団に確認してください。
2026年10月4日時点では募集中で、締切は2026年10月20日23時59分です。大学等の推薦書、成績証明書、所得証明書、住民票などの準備が必要です。卒業後の進路に制約を課さないことも公式要項に明記されています。
杜の都医学振興財団の2026年度奨学金は、弘前大学、岩手医科大学、秋田大学、東北大学、東北医科薬科大学、山形大学、福島県立医科大学の医学部医学科が対象です。
募集対象は新1~4年生で、学業・人物などの条件があります。年額72万円を原則として正規の最短修業年限内で給付し、進級時の証明書提出などが求められます。2026年度募集は終了しており、2027年度の条件・募集予定は最新情報を確認してください。
勤務条件付き奨学金は、免除条件と条件未達時の返済を確認する
自治体や大学・医療機関の修学資金には、卒業後の勤務などを条件に返還が免除される制度があります。これらは、最初から返還不要の給付型とは区別して検討してください。
例えば、広島県医師育成奨学金の公式説明では、県が設定する大学医学部地域枠の入学生について、卒業後12年間のうち9年間、指定公的医療機関で医師として勤務する条件があります。
さらに、県内初期臨床研修の2年間を除いた7年間のうち4年間以上を、指定された中山間地域等の医療機関、または指定診療科で勤務するなどの条件もあります。一般募集の奨学生には別の要件があり、同じ制度でも募集区分によって扱いが異なります。
「医学部を卒業すれば免除」「どの病院でも9年働けば免除」とは限りません。 自分の採用年度・募集区分に適用される規程や契約を確認しましょう。
| 確認する項目 | 具体的に確認したいこと |
|---|---|
| 勤務先・地域 | 指定医療機関がどこか。県外勤務が認められるか |
| 必要な勤務期間 | 何年間必要か。いつまでに勤務を終える必要があるか |
| 研修・診療科 | 初期・専門研修が勤務年数に算入されるか。診療科の指定があるか |
| 中断・猶予 | 病気、出産・育児、介護、留学などの扱い |
| 条件未達時の返済 | 全額・一部返還、一括・分割、利息、返還期限 |
| 免除の手続き | 勤務実績の報告や免除申請が必要か |
勤務条件付き制度を選ぶときは、受け取れる金額とあわせて、希望する地域・診療科・研修先との両立を考えましょう。応募前に運営主体へ相談し、口頭説明だけでなく適用される規程・募集要項でも確認すると判断しやすくなります。
応募前に確認したい家計・併用・継続・学費不足の条件
家計基準は親の年収だけで判断しない
JASSOの給付奨学金は、親の年収だけで採否が決まる制度ではありません。申込者本人と生計維持者の住民税情報から収入基準を判定し、資産基準も確認します。
2027年度進学予定者向け予約採用では、2025年の所得に基づく2026年度住民税情報を使用します。また、申込日時点の本人と生計維持者の資産合計が5,000万円未満であることが必要です。対象資産には預貯金や株式・投資信託などが含まれ、住宅ローン等の負債とは相殺できません。
在学採用も、申し込む時期によって参照する税情報が異なります。
| 申込区分 | 所得の対象期間 | 参照する住民税の年度 |
|---|---|---|
| 2026年春の在学採用 | 2024年1~12月 | 2025年度 |
| 2026年秋の在学採用 | 2025年1~12月 | 2026年度 |
| 2027年度進学者向け予約採用 | 2025年1~12月 | 2026年度 |
出典:JASSO「給付奨学金の選考結果について(在学採用)」、「予約採用の家計基準」
家計が急変した場合などには別の申込方法があるため、現在の収入だけで対象外と決めつけず、学校の奨学金窓口へ相談してください。
併用と継続の条件は制度ごとに確認する
複数の奨学金を使えるかは、双方の制度で確認が必要です。ベル財団と杜の都医学振興財団は他の奨学金との併用を認めていますが、併用相手の制度に制限がある場合は、その条件にも従う必要があります。
出典:ベル財団「2027年度募集要項」、杜の都医学振興財団「奨学金給付」
JASSOの給付奨学金と第一種奨学金を併用すると、第一種の貸与月額が調整されます。第二種には給付受給による貸与月額の調整はありませんが、第二種は返済が必要な貸与型です。
継続条件も制度ごとに異なります。1年ごとに応募・選考が必要か、進級時の成績審査や報告があるかを確認し、給付終了後の費用も見込んでおきましょう。
給付と授業料減免だけで学費全額を賄えるとは限らない
給付奨学金は現金を受け取る支援、授業料・入学金減免は大学への納付額を減らす支援です。この2つを分けて費用を計算する必要があります。
修学支援新制度の減免には上限があります。特に私立医学部では、「制度の対象だから学費がすべて無料になる」と考えず、減免後に残る学費や施設設備費、教材費、生活費などを確認してください。
多子世帯への支援も、授業料等減免と給付奨学金では条件が同一ではありません。多子世帯の授業料等減免が所得制限なしで受けられる場合でも、毎月の給付奨学金まで所得に関係なく受け取れるとは限りません。
出典:文部科学省「修学支援新制度の概要」、JASSO「多子世帯支援について」
支援総額だけでなく、入学金・授業料の支払日と奨学金の初回入金日も確認しましょう。受給予定があっても、支払時点では資金を用意する必要がある場合があります。
自分が応募できる奨学金を確認する4つの手順
1.大学・学科・学年・対象年度を整理する
志望校または在籍校、医学部医学科、現在の学年、支援を受けたい年度を整理します。高校生が応募できる制度と、入学後の在学生だけが応募できる制度を分けてください。
2.JASSO・大学・財団の公式情報から候補を探す
JASSOの対象校を確認したうえで、大学の奨学金ページ、学生向けの募集通知、財団の最新要項を調べます。募集終了の制度は、次年度の公表予定も確認しましょう。
3.応募条件と受給後の条件を比較する
対象大学・学年、家計・学力、給付期間、併用、継続条件を比べます。勤務条件付き制度では、卒業後の勤務条件と条件未達時の返済も確認してください。
そのうえで、支援後に残る学費・生活費と支払時期を整理します。
4.学校窓口や財団へ確認し、書類を準備する
JASSOの予約採用は在籍する高校等、在学採用は在籍大学の窓口で受付日程を確認します。在学採用は原則として春・秋に募集されますが、学校が定める締切に従う必要があります。
財団の奨学金は、大学の推薦や証明書の発行に時間がかかることも考慮して準備してください。
収入基準の見通しを確認したい場合は、JASSOの進学資金シミュレーターも利用できます。ただし、試算結果は実際の採否や支援区分を保証するものではありません。
出典:JASSO「申込みに関する手続き」、「申込手続きについて(在学採用)」
医学部の返済不要奨学金に関するよくある質問
医学部の奨学金は6年間ずっと返済不要で受け取れますか?
制度によります。JASSOは原則として採用後から正規の卒業時期までが支給対象ですが、継続条件があります。財団には1年間の給付や正規修業年限内の給付などがあるため、受給期間と次年度の扱いを確認してください。
出典:JASSO「給付奨学金の支給額」、ベル財団「2027年度募集要項」、杜の都医学振興財団「奨学金給付」
地域枠の奨学金は、卒業すれば返済不要になりますか?
卒業だけで免除になるとは限りません。指定医療機関での勤務など、制度所定の条件を満たす必要があります。地域枠と修学資金の関係、対象となる勤務・研修、免除申請の方法は、大学・自治体の規程で確認してください。
給付型奨学金を複数併用できますか?
併用できる制度もありますが、一律ではありません。応募する制度と、すでに受給している制度の両方で併用条件を確認してください。給付と貸与を組み合わせる場合は、貸与部分には返済義務が残り、JASSOの第一種には併給調整もあります。
まとめ|給付型を探し、勤務条件付き制度は進路と合わせて判断する
医学部で返済不要の奨学金を探すときは、JASSO、大学独自、財団の給付型から、自分の大学・学年・家計に合う候補を確認しましょう。
勤務によって返還が免除される制度を検討する場合は、金額だけでなく、勤務先・期間・診療科と希望する進路が合うかも確認する必要があります。
候補を絞ったら、対象年度の公式募集要項を読み、学校窓口や制度運営主体へ相談してください。応募条件、受給後の条件、支援後に残る費用を整理することが、無理のない進学・修学計画につながります。