奨学金の「生計維持者」とは、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度において、申込者本人の学費や生活費を負担する人を指します。父母がいる場合は、原則として父母2人が生計維持者です。
ただし、離婚・死別・再婚、父母から支援を受けていない、祖父母などから経済的支援を受けている、本人が独立して生計を立てているなど、家庭の状況によって生計維持者が1人になるケースや、父母以外の人になるケースがあります。
この記事では、JASSOの最新情報をもとに、奨学金における生計維持者の基本的な考え方から、家庭の状況別の判断方法、申告時の注意点まで解説します。
この記事のポイント
- 奨学金の生計維持者は、原則として父母2人
- 父母の収入の有無だけで生計維持者を決めるわけではない
- 離婚・死別・再婚などでは生計維持者が変わる場合がある
- 父母以外の親族や本人が生計維持者になるケースもある
- 判断が難しい場合は、JASSOの最新情報や学校の奨学金担当窓口で確認する
奨学金の「生計維持者」とは?原則は父母2人
JASSOの奨学金制度における「生計維持者」とは、申込者本人の学費や生活費を負担する人を指します。
父母がいる場合は、原則として父母2人が生計維持者です。
ここで注意したいのが、「生計維持者=収入が多い人」という意味ではないことです。父母の一方が無収入であっても、父母がともに生計維持者となるのが原則です。
また、JASSOの生計維持者の考え方は、税制上の扶養控除対象者や、民法上の扶養義務者などと必ずしも一致しません。
そのため、「税金上の扶養に入っている親だけを申告すればよい」と考えず、JASSOが定める基準で判断することが大切です。
父母がいる場合は原則として2人
父母がいる場合、原則として父と母の2人が生計維持者となります。
たとえば、父が会社員、母が専業主婦という家庭でも、母に収入がないことだけを理由に母を生計維持者から外すことはできません。
JASSOの奨学金申込みでは、生計維持者についてマイナンバーを提出し、所得の確認が行われます。また、給付奨学金では資産の申告も必要です。
したがって、申込みの際には、単純に「収入がある人」を選ぶのではなく、自分の家庭がどのケースに該当するかを確認しましょう。
奨学金の生計維持者が父母2人にならないケース
父母がいる場合は2人が原則ですが、家庭の状況によっては、生計維持者が父または母の1人になったり、父母以外の人になったりする場合があります。
| 家庭の状況 | 生計維持者の基本的な考え方 |
|---|---|
| 父母がいる | 原則として父母2人 |
| 父母の一方と死別 | 原則として残った父または母1人 |
| 離婚後、父母の一方と別生計 | 同一生計である父または母1人となる場合がある |
| 離婚した親が再婚し、本人と再婚相手が同一生計 | 親と再婚相手の2人となる場合がある |
| 父母から支援を受けず、親族から支援を受けている | 主たる支援者1人となる場合がある |
| 本人が独立して生計を立てている | 本人が生計維持者となる場合がある |
ここで重要なのは、「離婚しているから必ず母1人」「一人暮らしだから本人」というように、家庭の状況だけで機械的に判断できないことです。
JASSOは、実際の生活費や学費の負担状況、同一生計かどうかなどを踏まえて個別のケースを示しています。
離婚・死別している場合
父母の一方と死別している場合は、原則として生存している父または母1人が生計維持者となります。
一方、離婚の場合は少し注意が必要です。
離婚したという事実だけで、必ず父または母のどちらか1人になるわけではありません。離婚後も本人と父母の一方が同一生計であるか、どちらから学費・生活費の支援を受けているかなどによって判断されます。
たとえば、離婚した父と本人が別居しており、父から一切の支援を受けておらず、母が日常的に学費や生活費を負担している場合は、母1人が生計維持者となるケースがあります。
一方で、父母が離婚していても、父母双方が生計を維持している場合には、2人が生計維持者となる場合があります。
離婚後に親が再婚している場合
離婚した父または母が再婚しており、本人と再婚相手が同一生計の場合は、父または母と、その再婚相手の2人が生計維持者となるケースがあります。
この場合、再婚相手と本人が養子縁組をしているかどうかだけで判断するわけではありません。
JASSOは、同一生計である父または母と、その配偶者が生計維持者となるケースを示しています。
したがって、「義父・義母だから生計維持者ではない」とは限りません。
祖父母やおじ・おばなどから支援を受けている場合
父母が死亡している、父母から支援を受けていないなどの事情があり、祖父母やおじ・おばなどの親族から経済的支援を受けている場合は、父母以外の親族が生計維持者となるケースがあります。
複数の親族から支援を受けている場合でも、JASSOでは原則として、主たる支援者1人を生計維持者とします。
たとえば、祖母が食費を負担し、おじが住居を提供しているような場合には、誰が主として学費・生活費を負担しているのかを確認する必要があります。
このようなケースでは、後から事実関係を確認するための証明書類の提出を求められる場合があります。
学生本人が生計維持者になる場合
父母から支援を受けておらず、本人が自分の学費や生活費を負担している場合には、本人が「独立生計者」として生計維持者になるケースがあります。
ただし、単に一人暮らしをしている、アルバイトをしているというだけで、直ちに本人が生計維持者になるわけではありません。
JASSOでは、父母と絶縁状態にあり、日常的な学費や生活費を本人が負担している場合など、一定の条件に該当するケースを独立生計者として扱っています。
本人を生計維持者として申告する場合も、事実関係を確認できる証明書類の提出を後日求められることがあります。
生計維持者を判断するときに注意したい3つのポイント
1.「収入が多い人」だけを生計維持者にしない
最も注意したいのが、「父のほうが収入が多いから父だけを生計維持者にする」といった判断です。
父母がいる場合、原則として収入の多さにかかわらず父母2人が生計維持者です。
母が専業主婦で収入がない場合でも、父母2人を生計維持者として扱うのが基本です。
2.同居・別居だけで判断しない
一人暮らしをしているからといって、必ず本人が生計維持者になるわけではありません。
反対に、親と別居しているからといって、必ずその親が生計維持者から外れるわけでもありません。
重要なのは、父母や親族などからどのような経済的支援を受けているのか、同一生計と認められる状況なのかという点です。
3.税制上の扶養者と同じとは限らない
「健康保険の扶養に入っている」「税金上の扶養親族になっている」などの情報だけで、JASSOの生計維持者を判断することはできません。
JASSO自身も、生計維持者の考え方は、民法上の扶養義務や税制上の扶養控除対象者などと必ずしも一致しないとしています。
奨学金の申込みでは、JASSOが定める生計維持者の基準を確認してください。
生計維持者は奨学金の審査にどう関係する?
生計維持者を正しく申告する必要があるのは、奨学金の家計基準の判定などに関係するためです。
JASSOでは、奨学金の家計基準について、申込者本人や生計維持者の住民税情報などをもとに判定しています。
給付奨学金では、所得だけでなく資産についても申告が必要です。
そのため、生計維持者を誤って申告すると、本来とは異なる家計状況として判定される可能性があります。
注意
奨学金の家計基準は、単純な「世帯年収」だけで判定されるものではありません。奨学金の種類、申込時期、住民税情報、扶養状況、資産などによって確認内容が異なります。
「年収○万円なら必ず対象」といった形で判断せず、申込みを行う年度・制度に対応したJASSOの最新情報を確認しましょう。
2027年度に進学する人は生計維持者の情報をいつの所得で確認する?
現在は2026年9月のため、これから大学・短期大学・専門学校などへの進学を予定している人は、2027年度進学予定者向けの情報を確認する必要があります。
JASSOの2027年度進学予定者向け予約採用では、提出したマイナンバーをもとに、2025年(1月1日~12月31日)の収入に基づく2026年度住民税情報を使って給付奨学金の収入基準を判定します。
そのため、2026年中に収入が減った場合でも、予約採用の審査にそのまま反映されるわけではありません。
一方、在学採用や支援区分の見直しなどでは、対象となる住民税情報や申告時期が異なります。
「現在の親の収入」と「奨学金の審査に使われる所得情報」は同じとは限らないため、申込み年度と制度を確認することが重要です。
| 確認する情報 | ポイント |
|---|---|
| 申込み制度 | 予約採用か在学採用かを確認 |
| 進学年度 | 2026年度・2027年度など対象年度を確認 |
| 所得情報 | どの年の収入をもとにした住民税情報か確認 |
| 生計維持者 | 誰を生計維持者として申告するか確認 |
| 資産 | 給付奨学金では資産基準も確認 |
奨学金の生計維持者を申告するときの確認手順
生計維持者を誰にすればよいか迷った場合は、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
- 父母がいるか確認する
父母がいる場合は、まず原則として父母2人と考えます。 - 離婚・死別・再婚などの事情を確認する
家庭の状況によって、生計維持者が1人になるケースがあります。 - 父母から経済的支援を受けているか確認する
父母と別生計で、学費・生活費などの支援を受けていない場合は、扱いが変わることがあります。 - 父母以外から主な支援を受けているか確認する
祖父母やおじ・おばなどが主たる支援者となっている場合があります。 - 本人が独立して生計を立てているか確認する
一定の条件を満たす場合、本人が独立生計者として生計維持者になるケースがあります。 - 判断が難しい場合は公式情報と学校窓口で確認する
特殊な家庭事情がある場合は、自己判断で申告せず、JASSOの最新Q&Aや学校の奨学金担当窓口に確認しましょう。
奨学金の生計維持者についてよくある質問
母が専業主婦でも生計維持者になりますか?
父母がいる場合は、原則として父母2人が生計維持者です。母に収入がない場合でも、収入がないことだけを理由に母を生計維持者から外すことはできません。
父母が別居している場合、生計維持者はどちらですか?
別居しているという事実だけでは判断できません。父母がいる場合は原則として2人ですが、離婚等によって別生計となり、一方から一切の支援を受けていないなど、JASSOが示す条件に該当する場合は1人となることがあります。
離婚している場合は、母だけを生計維持者にすればよいですか?
必ずしも母1人になるわけではありません。離婚後の生活状況や父母からの支援状況によって判断が変わります。離婚しているだけで自動的に1人になるわけではないため、JASSOの最新のQ&Aを確認してください。
生計維持者は税金上の扶養者と同じですか?
必ずしも同じではありません。JASSOは、生計維持者の考え方が税制上の扶養控除対象者や民法上の扶養義務者などと必ずしも一致しないとしています。奨学金の申込みでは、JASSO独自の基準で判断してください。
生計維持者を1人として申告すると証明書が必要ですか?
家庭の事情によっては、後日、事実関係を確認できる証明書類の提出を求められる場合があります。特に、父母以外を生計維持者とする場合や、本人を独立生計者として申告する場合などは、JASSOの案内を確認しておきましょう。
まとめ|奨学金の生計維持者は原則「父母2人」、例外は家庭状況で判断
奨学金における生計維持者とは、JASSOの制度上、申込者本人の学費や生活費を負担する人を指します。
父母がいる場合は、原則として父母2人が生計維持者です。
ただし、離婚・死別・再婚、父母からの支援がない、親族から主に支援を受けている、本人が独立して生計を立てているなどの場合は、生計維持者が1人になったり、父母以外の人や本人になったりすることがあります。
また、「収入が多い人だけ」「同居している人だけ」「税金上の扶養者だけ」という考え方で判断すると、誤った申告につながる可能性があります。
特に家庭事情が複雑な場合は、JASSOの「生計維持者について」や最新のQ&Aを確認し、必要に応じて在籍校の奨学金担当窓口へ相談しましょう。