JASSO(日本学生支援機構)の給付奨学金にある「家計急変採用」を利用するには、生計維持者の死亡、3か月以上の就労困難、非自発的失業、災害など、所定の家計急変事由に該当する必要があります。
さらに、急変事由に該当するだけでなく、収入・資産・学力・入学時期などの条件も満たさなければなりません。申込みは年間を通じて受け付けられていますが、原則として家計急変事由の発生から3か月以内です。
この記事では、2026年度の家計急変採用について、対象となる事情、収入・資産・学力の基準、申込期限、手続きの流れを解説します。
※本記事は、返済不要の「給付奨学金の家計急変採用」を対象としています。貸与型の第一種奨学金における「緊急採用」や、第二種奨学金における「応急採用」とは別の制度です。
家計急変採用は「急変事由」と給付奨学金の条件を両方満たす人が対象
家計急変採用とは、生計維持者の死亡、病気、失職、災害など、予期できない事情によって家計が急変した学生を対象とする給付奨学金の申込区分です。
通常の給付奨学金は、在学中の春と秋に募集されます。一方、家計急変採用は年間を通じて申し込めます。急変後の収入状況が住民税情報に反映されるまで待たず、提出した収入証明書類などをもとに審査を受けられるのが特徴です。
ただし、収入が減った人すべてが対象になるわけではありません。家計急変採用を利用するには、次の条件をすべて確認する必要があります。
- JASSOが定める家計急変事由に該当する
- 急変事由に対応する証明書類を提出できる
- 給付奨学金の申込資格を満たす
- 学力・学修意欲の基準を満たす
- 収入基準と資産基準を両方満たす
- 原則として事由発生から3か月以内に申し込む
「以前から住民税非課税世帯だった」という場合は、家計急変採用ではなく、春または秋の通常の在学採用が適していることがあります。
制度の基本条件は、JASSOの被災・家計急変時の給付奨学金でも確認できます。
家計急変採用の対象となる5つの事由
JASSOの給付奨学金で家計急変として認められるのは、事由AからEのいずれかに該当し、その事実を証明できる場合です。
| 家計急変事由 | 主な条件 | 注意点 |
|---|---|---|
| 事由A | 生計維持者が死亡した | 亡くなった人が生計維持者に該当するか確認が必要 |
| 事由B | 生計維持者が事故・病気により3か月以上就労困難になった | 病気や休職だけではなく「3か月以上就労が困難」という条件がある |
| 事由C | 生計維持者が非自発的に失職した | 自己都合退職は原則として対象にならない |
| 事由D | 生計維持者が震災・火災・風水害などに被災した | 被災により死亡、就労困難、大幅な収入減少などが生じたことが必要 |
| 事由E | 学生本人が父母等による暴力などから避難した | 所定の機関などによる保護証明が必要 |
それぞれの条件を詳しく見ていきましょう。
生計維持者が死亡した
学生本人の生計を主に維持している父母等が死亡した場合は、事由Aに該当する可能性があります。
申込みでは、死亡した事実だけでなく、その人が学生の生計維持者に該当することや、事由が発生した日を確認されます。
必要書類は、家計急変が進学前に発生したのか、進学後に発生したのかによって異なる場合があります。必ず2026年度の事由別提出書類を確認してください。
生計維持者が事故・病気で3か月以上就労困難になった
生計維持者が事故または病気により、3か月以上働くことが難しくなった場合は、事由Bに該当する可能性があります。
重要なのは、単に通院している、医療費が増えた、収入が少し減ったということではなく、「事故・病気によって3か月以上就労が困難」という条件がある点です。
申込みでは、JASSO所定の休職証明書など、就労が困難な期間と状況を確認できる書類が必要になります。
生計維持者が非自発的に失職した
生計維持者が会社都合などにより非自発的に失職した場合は、事由Cに該当する可能性があります。
一方、自己都合による退職は、原則として家計急変採用の対象になりません。「退職して収入がなくなった」という結果だけでなく、離職理由が確認されます。
雇用保険受給資格者証など、離職理由を確認できる書類が必要になるため、書類を処分せず保管しておきましょう。
震災・火災・風水害などで収入が大きく減った
生計維持者が震災、火災、風水害などに被災し、次のいずれかに該当した場合は、事由Dの対象になる可能性があります。
- 被災により、生計維持者の死亡、3か月以上の就労困難、非自発的失業のいずれかが起きた
- 被災により、生計維持者が生死不明、行方不明、就労困難などになり、世帯収入を大きく減少させる事由が起きた
被災したという事実だけで採用が決まるわけではありません。罹災証明書などに加え、被災によって家計が急変したことを示す書類が必要です。
学生本人が父母等による暴力から避難した
学生本人が父母等による暴力などから避難した場合は、事由Eに該当する可能性があります。
申込みでは、JASSO所定の保護証明書などが必要です。安全確保に関わる事情であるため、申請方法や生計維持者の取扱いについて、在学校の奨学金窓口へ相談してください。
対象事由と書類は、JASSOの家計急変採用の申込資格と家計急変採用の申込み方法で確認できます。
家計急変事由だけでなく4種類の条件を確認する
家計急変事由A~Eのいずれかに該当しても、それだけで給付奨学金を受けられるわけではありません。
通常の給付奨学金と同様に、申込資格、学力基準、収入基準、資産基準などが審査されます。
在学先・入学時期・在留資格などの申込資格
家計急変採用では、通常の在学採用と同じ申込資格を満たす必要があります。
主な対象は、給付奨学金の対象校として確認を受けた次の学校に在学する学生です。
- 大学
- 短期大学
- 高等専門学校の第4学年以上
- 専門課程を置く専修学校
これに加えて、大学等への入学時期に関する条件や、国籍・在留資格に関する条件があります。
外国籍の場合も、永住者、特別永住者、日本人の配偶者等、一定の在留資格や要件を満たせば対象になる可能性があります。個別の申込資格は、在学校とJASSOの最新案内で確認してください。
学力・学修意欲の基準
家計急変採用の学力基準は、通常の給付奨学金の在学採用と同じです。
1年次は、原則として次のいずれかを満たす必要があります。
- 高校等の評定平均値が3.5以上
- 入学者選抜試験の成績が入学者の上位2分の1
- 高等学校卒業程度認定試験の合格者
- 学修計画書などにより、将来の目標と学修意欲が確認できる
2年次以上は、原則として次のいずれかを満たす必要があります。
- 累積GPAなどが所属学部等の上位2分の1
- 修得単位数が標準単位数以上で、学修計画書により学修意欲が確認できる
ただし、修業年限内で卒業できないことが確定している場合や、修得単位数・出席率が著しく低い場合などは、採用されないことがあります。災害や傷病など、やむを得ない事情がある場合は取扱いが異なる可能性があるため、学校へ相談してください。
詳しい基準はJASSOの進学後(在学採用)の給付奨学金の学力基準で確認できます。
急変後の収入を反映する家計基準
家計急変採用の収入基準は、単純な世帯年収だけでは決まりません。
学生本人と生計維持者について算出した「支給額算定基準額」の合計により、給付奨学金の支援区分が判定されます。
支給額算定基準額の基本的な計算式は次のとおりです。
支給額算定基準額=課税標準額×6%-市町村民税調整控除額等
実際の審査では、家計急変が起きた人と、それ以外の人で使用する情報が異なります。
- 家計急変事由に該当する生計維持者:提出した給与明細や帳簿などから推算した年間所得の見込額と、住民税情報を勘案して算出
- 家計急変事由に該当しない生計維持者と学生本人:マイナンバー等により取得した住民税情報をもとに算出
2026年度に家計急変採用へ申し込む場合、急変していない生計維持者と学生本人について参照される住民税情報は、スカラネットの入力時期によって異なります。
| スカラネット入力完了時期 | 使用する住民税情報 | 収入の対象期間 |
|---|---|---|
| 2026年4月~9月 | 2025年度住民税情報 | 2024年1月~12月の収入 |
| 2026年10月~2027年3月 | 2026年度住民税情報 | 2025年1月~12月の収入 |
家計急変事由に該当しない生計維持者と学生本人の支給額算定基準額の合計が15万4,500円以上の場合、急変した人の収入状況にかかわらず、給付奨学金の対象になりません。
支援区分の基準は次のとおりです。
| 支援区分 | 支給額算定基準額の合計 |
|---|---|
| 第1区分 | 100円未満 |
| 第2区分 | 100円以上2万5,600円未満 |
| 第3区分 | 2万5,600円以上5万1,300円未満 |
| 第4区分 | 5万1,300円以上15万4,500円未満 |
第4区分の給付奨学金は、多子世帯や私立理工農系など、対象者に別の条件があります。また、多子世帯では給付奨学金の対象外でも授業料等減免を受けられる場合があります。
JASSOが公表している年収表は、特定の世帯構成を前提とした目安です。同じ年収でも、家族構成、所得の種類、控除、学生本人の収入などによって判定が変わります。
通常の給付奨学金を含む判定の考え方は、奨学金の収入・資産基準と年収目安でも確認できます。家計急変採用では、通常の基準に加えて、急変事由と急変後の収入証明が必要です。
本人と生計維持者の資産合計は5,000万円未満
2026年度の資産基準は、申込日時点における学生本人と生計維持者の資産合計が5,000万円未満であることです。
主に次の資産が対象になります。
- 現金や投資用に保有する金・銀など
- 退職金
- 普通預金・定期預金
- 株式、国債、社債、地方債
- 投資信託
- NISA口座で保有する投資資産
- 満期や解約によって現金化した保険
土地や建物などの不動産は、資産基準の対象に含まれません。一方、住宅ローンなどの負債を資産額から差し引くことはできません。
収入・資産基準の最新情報は、JASSOの家計急変採用の家計基準で確認してください。
申込期限は原則として家計急変事由の発生から3か月以内
家計急変採用は年間を通じて申し込めますが、「いつでも過去の急変を申請できる」という意味ではありません。
原則として、家計急変事由が発生した日から3か月以内に申し込む必要があります。在学校には独自の書類提出期限が設けられることもあるため、3か月ぎりぎりまで待つのは避けましょう。
進学前に家計急変が起きていた場合
進学前に家計急変事由が発生した場合は、原則として進学後3か月以内に申し込みます。
2026年度の例は次のとおりです。
- 2026年4月に進学した場合:対象となる事由が2024年1月以降、2026年3月以前に発生していれば、2026年6月30日まで申請可能
- 2026年10月に進学した場合:対象となる事由が2025年1月以降、2026年9月以前に発生していれば、2026年12月31日まで申請可能
進学月によって、申請可能な事由発生月の範囲が異なります。また、高等専門学校第4学年の場合は「進学」を「進級」と読み替えます。
期限を過ぎているように見える場合も、自己判断で諦めず、事由発生日と進学月を伝えて在学校へ確認してください。
条件を確認したら在学校の奨学金窓口へ相談する
家計急変採用は、学生がJASSOへ直接申し込むのではなく、在学している学校の奨学金窓口を通じて申し込みます。
主な流れは次のとおりです。
- 家計急変事由と事由発生日を確認する
- できるだけ早く在学校の奨学金窓口へ相談する
- 事由証明書類と家計急変後の収入証明書類を用意する
- 学校の案内に従って必要書類を提出する
- スカラネットで申し込む
- インターネットでマイナンバーを提出する
- 「奨学金確認書兼地方税同意書」をJASSOへ郵送する
- 在学校の推薦後、JASSOの審査を受ける
- 在学校を通じて選考結果を受け取る
必要書類は、急変事由だけでなく、事由が進学前に発生したか、進学後に発生したかによっても異なります。
収入証明についても、給与所得者、自営業者、年金受給者などで提出書類が違います。給与や事業収入が複数ある場合は、課税対象となる収入を漏れなく申告する必要があります。
申込時には、JASSOの2026年度給付奨学金案内(別冊)家計急変採用と、学校から配布される案内を確認してください。
採用後も収入確認により支援区分や支給額が変わる
家計急変採用は、一度採用されれば卒業まで同じ金額を受け取れる制度ではありません。
採用後は原則として3か月ごとに「家計急変現況届」と収入証明書類を提出し、収入基準の審査を受けます。提出済みの収入証明書類が12か月分以上になった後は、原則として1年ごとの確認に変わります。
確認の結果、家計が回復した場合などには、次のような変更が行われる可能性があります。
- 支援区分が変更される
- 給付額が減る、または増える
- 給付奨学金の支給が止まる
収入証明書類が12か月分に満たない期間は、原則として対象期間の収入から1か月当たりの平均額を出し、それを12倍して年間所得見込額を算出します。12か月分以上そろった後は、12か月分の収入が年間所得として使われます。
採用後の提出期限や見直し時期は、在学校からの案内とJASSOの家計急変採用の適格認定で確認しましょう。
家計急変採用の条件に関するよくある質問
親の収入が減っただけでも対象になりますか?
収入が減っただけでは、必ずしも家計急変採用の対象になりません。
生計維持者の死亡、事故・病気による3か月以上の就労困難、非自発的失業、災害など、JASSO所定の事由に該当し、その事実を証明できることが必要です。
勤務時間の減少、売上減少、自己都合退職などが対象になるかは、事情を在学校へ伝えて確認してください。
すでに給付奨学金を受けていても申し込めますか?
通常の予約採用や在学採用ですでに給付奨学生になっている場合でも、その後に所定の家計急変事由が発生したときは、家計急変による支援区分の変更を申し込める場合があります。
この場合も、原則として事由発生から3か月以内に在学校へ相談する必要があります。
申込期限の3か月を過ぎたら申し込めませんか?
原則は、事由発生から3か月以内です。ただし、進学前に事由が発生した場合など、発生時期と進学月に応じた取扱いがあります。
期限を過ぎていると思っても、事由発生日を確認したうえで、まず在学校の奨学金窓口へ相談してください。
自己都合で退職した場合も対象になりますか?
給付奨学金の家計急変採用における失職は、非自発的失業に限られます。そのため、自己都合退職は原則として事由Cに該当しません。
ただし、病気による3か月以上の就労困難など、別の急変事由に該当する可能性がある場合は、学校へ状況を伝えて確認しましょう。
貸与型の緊急採用・応急採用とは何が違いますか?
家計急変採用は、原則として返還不要の給付奨学金です。
一方、緊急採用は無利子の第一種奨学金、応急採用は有利子の第二種奨学金で、いずれも貸与終了後に返還が必要です。対象となる急変事由や家計基準も給付奨学金の家計急変採用とは異なります。
条件に該当しそうなら期限を待たず学校へ相談しよう
JASSOの給付奨学金の家計急変採用を利用するには、所定の家計急変事由に該当したうえで、収入、資産、学力、申込資格などの条件を満たす必要があります。
特に注意したいのは、次の3点です。
- 収入減少だけでなく、事由A~Eのいずれかに該当する必要がある
- 申込みは通年でも、原則として事由発生から3か月以内
- 採用後も収入状況が確認され、支援区分や給付額が変わることがある
必要書類の準備や学校内の確認にも時間がかかります。対象になる可能性がある場合は、書類がすべてそろうまで待たず、家計急変事由と発生日を整理して在学校の奨学金窓口へ相談しましょう。
制度内容・書類・期限は変更される可能性があります。申込みの際は、JASSOの公式情報と在学校の最新案内を必ず確認してください。