獣医学部では、日本学生支援機構(JASSO)の給付・貸与奨学金に加えて、獣医学生を対象とした自治体の修学資金や、大学・民間団体が実施する奨学金を利用できる場合があります。
特に獣医学部では、卒業後に指定された地域や機関で獣医師として勤務することなどを条件に、返還が免除される修学資金制度もあります。
この記事では、獣医学部で検討できる主な奨学金・修学資金を整理し、それぞれの特徴や注意点、制度の探し方を解説します。
この記事の要約
- 獣医学部でもJASSOの給付・貸与奨学金を利用できる
- 私立大学の獣医学課程では、JASSO第二種奨学金の増額制度がある
- 多子世帯に該当すれば、所得制限なしで授業料・入学金の減免を受けられる場合がある
- 自治体には獣医学生向けの修学資金があり、条件を満たすと返還免除になる制度もある
- 制度を選ぶときは、金額だけでなく返還条件・勤務条件・申込時期まで確認することが重要
獣医学部でも奨学金は利用できる?
獣医学部でも、JASSOの給付・貸与奨学金を利用できます。
また、獣医学部にはJASSO以外にも、大学独自の奨学金、民間団体の奨学金、自治体の獣医師修学資金などがあります。
特に確認しておきたいのが、卒業後の進路と結び付いた「獣医師修学資金」です。農林水産省は、地域の産業動物獣医師を目指す学生などを対象として、最大月18万円の修学資金制度を案内しています。一定の条件を満たした場合には、貸与・給付された修学資金の全額が返還免除となる制度もあります。
そのため、獣医学部の学費を奨学金で補いたい場合は、JASSOだけでなく「大学」「自治体」「獣医師確保を目的とした制度」まで調べることが重要です。
JASSOの給付・貸与奨学金を利用できる
JASSOでは、大学生を対象として、返済不要の給付奨学金と、卒業後に返還する貸与奨学金を実施しています。
給付奨学金は、所得や資産などの家計基準を満たす必要があります。貸与奨学金には、原則として無利子の第一種奨学金と、有利子の第二種奨学金があります。
ただし、どの制度でも「獣医学部なら必ず利用できる」という意味ではありません。学力、家計、資産、学年など、制度ごとの条件を確認する必要があります。
獣医学生向けの修学資金もある
獣医学部には、一般的な学生向け奨学金とは別に、獣医師の確保を目的とした修学資金があります。
代表的なのが、自治体などが実施する獣医師修学資金です。制度によっては、卒業後に自治体の獣医師として勤務することや、産業動物獣医師として一定期間勤務することなどが条件になります。
こうした制度は、単純に「返済不要の奨学金」と考えるのではなく、卒業後の勤務条件とセットになった支援制度として確認することが大切です。
獣医学部で利用できる奨学金・修学資金の種類
獣医学部で検討できる主な制度を整理すると、次のようになります。
| 制度 | 返還 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| JASSO給付奨学金 | 原則不要 | 家計基準などを満たした学生が対象 |
| JASSO第一種奨学金 | 必要 | 原則無利子の貸与奨学金 |
| JASSO第二種奨学金 | 必要 | 有利子の貸与奨学金。私立獣医学課程には増額制度あり |
| 授業料等減免 | 不要 | 多子世帯などを対象とした授業料・入学金の減免 |
| 自治体の獣医師修学資金 | 制度による | 卒業後の勤務などの条件を満たすと返還免除になる場合がある |
| 大学独自の奨学金 | 制度による | 大学ごとに対象者・金額・募集時期が異なる |
| 民間団体の奨学金 | 制度による | 獣医学生を対象とした制度もある |
JASSOの給付奨学金
JASSOの給付奨学金は、返還を必要としない奨学金です。
ただし、誰でも受給できるわけではありません。収入・所得に基づく家計基準に加えて、資産基準なども確認されます。
たとえば2027年度に進学する予定で、進学前に予約採用を申し込む場合は、原則として2025年1月から12月までの所得と、それに基づく2026年度の住民税情報などを使って家計基準が判定されます。
そのため、単純に「親の年収が○万円だから対象」と判断するのは適切ではありません。世帯構成や各種控除などによって判定結果が変わるため、JASSOの公式情報やシミュレーターで確認しましょう。
JASSOの第一種・第二種奨学金
貸与型の奨学金には、第一種奨学金と第二種奨学金があります。
| 種類 | 特徴 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 第一種奨学金 | 原則として無利子 | 学力・家計などの基準、貸与月額 |
| 第二種奨学金 | 有利子 | 貸与月額、利率、返還総額 |
第二種奨学金は、貸与終了後に利子を含めて返還する必要があります。利率は貸与終了時に決定されるため、申し込み時点で将来の返還総額が確定しているわけではありません。
奨学金を借りる場合は、「毎月いくら受け取れるか」だけでなく、卒業後にいくら返還することになるのかまで考えて利用することが重要です。
私立獣医学課程は第二種奨学金の増額が可能
私立大学の獣医学課程には、JASSO第二種奨学金の増額制度があります。
大学の第二種奨学金は月額2万円から12万円まで選択できますが、私立大学の薬学・獣医学課程では、12万円に2万円を増額して、月14万円とすることが可能です。
ただし、増額分も貸与奨学金であるため、卒業後に返還する必要があります。また、増額部分には通常の基本月額とは異なる利率の扱いがあります。
「獣医学部だから14万円を必ず借りられる」という制度ではないため、申込資格や家計基準などを確認したうえで利用を検討しましょう。
多子世帯なら授業料・入学金の減免を受けられる場合がある
奨学金を探すときは、貸与・給付だけでなく、授業料等の減免制度も確認しましょう。
JASSOの多子世帯支援では、要件を満たす場合、所得制限なしで一定額を上限として大学の授業料・入学金の減免を受けられます。
2026年度の制度では、大学の場合、私立大学の支援上限は入学金26万円、授業料70万円です。
ただし、これは「私立大学の授業料がすべて無料になる」という意味ではありません。制度上の上限額までが支援対象となるため、実際の授業料との差額が発生する場合があります。
また、多子世帯に該当するかどうかの判定や手続きについても確認が必要です。
自治体の獣医師修学資金は「返還免除の条件」を確認する
獣医学部の奨学金を探す際に、特に注意したいのが自治体の獣医師修学資金です。
これらの制度は、獣医師不足への対応や地域の獣医療体制を支えることなどを目的として実施されています。
そのため、一般的な学生向け奨学金とは異なり、卒業後の勤務先・勤務地域・勤務期間などが条件になる場合があります。
条件を満たせば返還が免除される制度もありますが、条件を満たさなかった場合に返還が必要になる可能性があります。
修学資金を見るときは「金額」だけで比較しない
- 貸与なのか給付なのか
- 卒業後の勤務条件があるか
- 何年間勤務する必要があるか
- 途中で条件を満たせなくなった場合の返還方法
- 他の奨学金と併用できるか
- 募集対象となる学年
産業動物獣医師を目指す人向けの修学資金
農林水産省は、地域の産業動物獣医師への就業を志す学生などを対象として、修学資金制度を案内しています。
制度によって内容は異なりますが、最大18万円/月の修学資金が給付され、条件を達成すると全額返還免除となる制度があります。
対象者には、地域枠入試を受験して獣医学課程へ進学予定の高校生や、獣医学課程で学ぶ大学生などが含まれます。ただし、実際の募集対象や条件は募集団体によって異なります。
産業動物獣医師を進路の候補として考えている場合は、一般的な奨学金だけでなく、こうした獣医師確保を目的とした制度も確認しておくとよいでしょう。
自治体によって金額や勤務条件は異なる
獣医師修学資金は、自治体によって内容が大きく異なります。
たとえば茨城県では、2026年度の募集内容として、獣医学生向けに私立大学は月額18万円以内、国立大学は月額10万円以内としています。大学卒業後に茨城県農林水産部の獣医師職員として従事する意思などが条件となっています。
一方、香川県では、県職員としての就業を希望する獣医学専攻の大学生を対象として、国公立大学は月12万円、私立大学は月22万円を貸し付ける制度を案内しています。
このように、同じ「獣医学生向け修学資金」でも、対象者・金額・返還免除条件は自治体ごとに異なります。
また、募集期間も年度によって変わります。気になる自治体がある場合は、必ずその自治体の最新の募集要項を確認してください。
獣医学部の奨学金を選ぶときに確認したい5つの条件
獣医学部の奨学金を比較するときは、金額だけで決めないことが重要です。
1.返還が必要か、返還免除があるか
最初に確認したいのが、卒業後の返還義務です。
JASSOの給付奨学金は原則として返還不要ですが、第一種・第二種などの貸与奨学金は返還が必要です。
一方、自治体の獣医師修学資金には、卒業後の勤務など一定の条件を満たすことで返還免除となる制度があります。
「返済不要」という言葉だけを見るのではなく、なぜ返還不要なのか、そのために何を満たす必要があるのかを確認しましょう。
2.申込時期と申込窓口
奨学金は、制度によって申し込み方法や時期が異なります。
高校生が進学前にJASSOの予約採用を申し込む場合は、原則として在籍している高校を通して手続きを行います。
一方、大学進学後の在学採用では、大学の奨学金担当窓口を通して申し込む場合があります。
自治体の修学資金では、自治体へ直接申し込む制度もあるため、募集要項で確認してください。
3.他の奨学金と併用できるか
複数の奨学金を利用したい場合は、必ず併用条件を確認しましょう。
制度によっては、他の奨学金との併用が認められていない場合があります。また、JASSOでも給付奨学金や授業料等減免との組み合わせによって、第一種奨学金の貸与月額が調整される場合があります。
「複数申し込めるか」と「複数を同時に受け取れるか」は別なので注意が必要です。
4.卒業後の勤務条件があるか
自治体の獣医師修学資金では、卒業後に自治体職員として勤務することや、指定された地域・機関で獣医師として勤務することなどが条件になる場合があります。
たとえば青森県の獣医師修学資金では、貸付額に応じて、卒業後に獣医師となり、一定期間県に勤務することで全額返還免除となる仕組みが設けられています。
したがって、修学資金を選ぶときは、「将来その勤務先・地域で働きたいか」まで考えて判断する必要があります。
5.対象学年・成績・家計基準を確認する
奨学金によって、対象となる学年や学力基準、家計基準などが異なります。
特にJASSOは、単純な世帯年収だけで対象かどうかが決まるわけではありません。
たとえば2027年度進学予定者の予約採用では、2025年の所得と2026年度の住民税情報などをもとに家計基準が判定されます。
また、収入・所得の目安が掲載されている場合でも、世帯構成や各種控除などによって実際の判定結果は変わる可能性があります。
獣医学部の奨学金は「JASSO・大学・自治体」の3方向から探す
獣医学部の奨学金を探すときは、1つの制度だけを調べるのではなく、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
- JASSOの給付・貸与奨学金を確認する
- 志望大学・在籍大学の奨学金や授業料減免制度を確認する
- 出身地や大学所在地などに関係する自治体の制度を確認する
- 獣医師確保を目的とした修学資金を確認する
- 民間団体の獣医学生向け奨学金を確認する
進学前ならJASSOの予約採用を確認する
高校生など、これから獣医学部への進学を予定している場合は、JASSOの予約採用を確認しましょう。
予約採用では、進学前に奨学金の利用について申し込み、採用候補者として決定される仕組みがあります。
2027年度に大学へ進学する予定者についても、JASSOは予約採用に関する家計基準や申込資格などを公開しています。
申込時期や学校ごとの締切は異なる場合があるため、早めに在籍高校へ確認することが重要です。
在学中なら大学の奨学金窓口を確認する
すでに獣医学部へ進学している場合は、大学の学生課や奨学金担当窓口を確認しましょう。
大学独自の給付金や授業料減免、大学を通じて募集される民間団体の奨学金などが案内されている場合があります。
大学ごとに制度や募集時期が違うため、「獣医学部の学生なら全国どこでも利用できる制度」と「その大学の学生だけが対象となる制度」を分けて確認することがポイントです。
自治体の獣医師修学資金を確認する
将来、自治体の獣医師や産業動物獣医師として働くことを考えている場合は、自治体の修学資金も確認しましょう。
農林水産省の「産業動物獣医師について」では、地域の産業動物獣医師への就業を志す学生向けの修学資金制度が紹介されています。
また、各自治体でも独自の制度が設けられています。
ただし、募集人数や対象学年、金額、勤務条件、返還免除の条件などは自治体ごとに異なります。申し込み前には必ず最新の募集要項を確認してください。
獣医学部の奨学金に関するよくある質問
獣医学部でもJASSOの奨学金は利用できますか?
はい。獣医学部の学生も、JASSOの給付奨学金や第一種・第二種奨学金の対象になり得ます。
ただし、それぞれに学力・家計・資産などの条件があります。獣医学部だから自動的に対象になるわけではないため、JASSOの最新の申込資格や家計基準を確認してください。
私立の獣医学部はJASSOから多く借りられますか?
JASSOの第二種奨学金では、私立大学の薬学・獣医学課程について、通常の月額12万円に2万円を増額し、月14万円とすることが可能です。
ただし、貸与型の奨学金なので、卒業後には返還が必要です。増額すればその分だけ返還負担も大きくなるため、必要な金額を慎重に検討しましょう。
獣医学生専用の奨学金はありますか?
あります。
自治体が獣医師確保を目的として実施する修学資金のほか、民間団体などが獣医学生を対象として実施する制度があります。
ただし、対象となる学年、大学、進路、成績、勤務条件などは制度ごとに異なります。JASSOだけでなく、大学や自治体の公式情報も確認しましょう。
返済不要の獣医学部向け奨学金はありますか?
あります。
代表的なのがJASSOの給付奨学金です。また、自治体の獣医師修学資金には、卒業後の勤務など一定の条件を満たすことで返還免除となる制度があります。
ただし、自治体の制度は「最初から無条件で返済不要」という意味ではありません。返還免除の条件を満たせなかった場合の扱いまで確認する必要があります。
まとめ:獣医学部は一般奨学金と専用の修学資金を組み合わせて探そう
獣医学部の学費を支える奨学金には、JASSOの給付・貸与奨学金だけでなく、大学独自の制度、民間団体の奨学金、自治体の獣医師修学資金などがあります。
特に確認したいのが、獣医師確保を目的とした修学資金です。卒業後の勤務先や勤務期間などの条件を満たすことで、返還免除となる制度もあります。
一方で、制度によって対象者・金額・募集時期・返還条件が異なるため、「月額が高い」「返済不要」といった一つの条件だけで選ぶのはおすすめできません。
獣医学部の奨学金を探すときのチェックポイント
- JASSOの給付・貸与奨学金を確認する
- 私立獣医学課程の第二種増額制度を確認する
- 多子世帯なら授業料等減免の対象になるか確認する
- 大学独自の奨学金・授業料減免を確認する
- 自治体の獣医師修学資金を確認する
- 卒業後の勤務条件と返還免除条件を確認する
- 申込期限と申込窓口を確認する
これから獣医学部へ進学する場合は、まずJASSOの予約採用について在籍高校に確認し、そのうえで志望大学と自治体の公式情報を確認しましょう。
すでに獣医学部へ在学している場合は、大学の奨学金担当窓口に加えて、自治体や獣医師確保を目的とした修学資金も確認すると、利用できる制度を見つけやすくなります。