大学院の第一種奨学金には、貸与期間中に「特に優れた業績」を挙げた学生を対象として、奨学金の全額または半額を返還免除する制度があります。
評価される業績は、学位論文や研究論文だけではありません。授業科目の成績、著作物、発明、TA・RAなどの研究・教育活動、芸術・スポーツ、社会貢献活動なども評価対象に含まれます。
ただし、どの業績をどの程度評価するかは大学院ごとに具体的な基準が異なります。そのため、「論文が1本あれば免除される」「GPAが一定以上なら免除される」と一律に判断することはできません。
この記事では、大学院の奨学金返還免除で評価される業績、修士・博士課程の違い、申請の流れ、確認しておきたいポイントを解説します。
この記事のポイント
- 大学院の第一種奨学金には、特に優れた業績による返還免除制度がある
- 論文だけでなく、成績、著作物、発明、TA・RA、社会貢献なども評価対象になる
- 具体的な評価項目や評価方法は大学院ごとに異なる
- 返還免除の申請は、原則として奨学金の貸与終了時に行う
- 博士課程では研究論文などの業績が特に重要になる
大学院の第一種奨学金には「業績による返還免除」がある
日本学生支援機構(JASSO)の大学院第一種奨学金には、「特に優れた業績による返還免除」という制度があります。
大学院で第一種奨学金の貸与を受け、貸与期間中に特に優れた業績を挙げた人としてJASSOから認定されると、奨学金の全額または半額が返還免除されます。
この制度では、研究論文などの学問分野における成果だけでなく、発明・発見、専攻分野に関連する文化・芸術・スポーツでの活動、ボランティアなどの社会貢献も評価対象となります。
ただし、返還免除を受けるためには、単に優れた業績を挙げるだけではなく、貸与終了時に大学へ申請し、大学からJASSOへ推薦されたうえで、JASSOの認定を受ける必要があります。
詳しくは、JASSOの「特に優れた業績による返還免除の概要」を確認してください。
返還免除の対象となる大学院生
対象となるのは、大学院の修士課程、専門職学位課程、博士課程で第一種奨学金の貸与を受け、当該年度中に貸与が終了する人です。
重要なのは、「大学院を修了する年度」と「奨学金の貸与が終了する年度」が必ずしも同じとは限らない点です。JASSOでは、貸与が終了した月が属する年度に大学へ申請する必要があると案内しています。
そのため、返還免除を希望する場合は、修了直前になってから確認するのではなく、所属大学院の奨学金担当窓口に申請時期を確認しておくことが大切です。
返還免除は全額または半額
返還免除の認定を受けた場合、奨学金の返還額について全額免除または半額免除となります。
どちらになるかは、大学院での選考やJASSOによる審議を経て決定されます。したがって、申請者自身が「この業績なら全額免除になる」と事前に確定させることはできません。
返還免除で評価される「業績」は論文だけではない
大学院の奨学金返還免除では、学位論文や研究論文だけが評価対象になるわけではありません。
JASSOが示している業績の種類と評価基準には、次のようなものがあります。
| 業績の種類 | 評価される例 |
|---|---|
| 学位論文その他の研究論文 | 学位論文の高い評価、学会発表、学術雑誌への掲載、表彰など |
| 特定の課題についての研究成果 | 特定の研究課題に関する優れた成果 |
| 試験・審査の結果 | 専門的な知識・能力などについての優れた評価 |
| 著作物 | 著書、データベースなどの優れた成果 |
| 発明 | 特許、実用新案など |
| 授業科目の成績 | 専門的知識や研究能力の修得などに関する優秀な成績 |
| 研究・教育に係る補助業務 | TA・RAなどによる教育・研究への貢献 |
| 芸術の発表会における成績 | 専攻分野に関連する音楽、演劇、美術などでの優れた成果 |
| スポーツの競技会における成績 | 専攻分野に関連する競技会などでの優れた成果 |
| 社会貢献活動 | 専攻分野に関連するボランティア活動など |
| その他 | 上記以外でJASSOが定める業績 |
なお、上記はJASSOが示す業績の種類と評価基準であり、実際に大学院でどの業績をどの程度評価するかは、各大学院が具体的な評価項目を設定します。
詳しい評価基準については、JASSOの「特に優れた業績と評価方法」で確認できます。
学位論文・研究論文は重要な評価対象
大学院の奨学金返還免除を考えるうえで、まず確認したいのが学位論文や研究論文です。
JASSOの評価基準では、学位論文の教授会などでの高い評価、関連する研究内容の学会発表、学術雑誌への掲載、表彰など、論文の内容が特に優れていると認められることが評価例として示されています。
ただし、「論文を1本発表すれば返還免除になる」という全国共通の基準ではありません。
論文の内容や評価、学会発表、掲載実績などをどのように評価するかは、所属する大学院の基準を確認する必要があります。
授業成績も評価対象になる
返還免除では、研究成果だけでなく授業科目の成績も評価対象の一つです。
JASSOの評価基準では、専攻分野に関する専門的な知識や研究能力を修得していること、特に優秀な成績を修めていることなどが評価の例として示されています。
ただし、これについても「GPAが○以上なら免除」という全国一律の条件ではありません。
GPAなどの成績指標を含め、具体的にどのような成績を評価するかは大学院ごとに確認しましょう。
TA・RAなどの研究・教育活動も評価対象
大学院生が行う研究・教育に関する補助業務も、返還免除の業績として評価される場合があります。
代表的なものが、TA(ティーチング・アシスタント)やRA(リサーチ・アシスタント)などです。
JASSOの評価基準では、研究・教育活動への貢献が評価対象として示されています。ただし、どの活動をどの程度評価するかは大学院によって異なるため、所属先の基準を確認する必要があります。
発明・著作物・芸術・スポーツ・社会貢献も対象になる
返還免除の評価対象は、研究論文や成績に限定されません。
著書やデータベースなどの著作物、特許・実用新案などの発明、専攻分野に関連する芸術・スポーツでの成果、ボランティアなどの社会貢献活動も業績として定められています。
そのため、「研究論文を発表していないから返還免除の対象にならない」と最初から判断するのではなく、自分が大学院在籍中に挙げた成果を幅広く整理することが重要です。
博士課程では研究論文などの業績が特に重要
修士課程と博士課程では、返還免除の業績評価について確認しておきたい違いがあります。
JASSOは、博士(後期)課程について、原則として「学位論文その他の研究論文」の業績を評価対象とする必要があるとしています。
そのため、博士課程の学生が返還免除を目指す場合は、研究論文や学位論文に関する成果を早い段階から整理しておくことが重要です。
一方で、博士課程だからといって「論文の本数だけで決まる」という意味ではありません。JASSOが示す評価基準と、大学院が定める具体的な評価項目を確認したうえで、自分の研究実績を整理する必要があります。
博士課程の業績評価については、JASSOの「特に優れた業績と評価方法」を確認しましょう。
返還免除の評価基準は大学院ごとに異なる
大学院の奨学金返還免除について、特に注意したいのが大学院ごとに評価基準が異なることです。
JASSOは業績の種類と評価基準を示していますが、具体的な評価項目は各大学が設定し、総合的な評価を行う仕組みとしています。
そのため、インターネット上の記事などで紹介されている「論文○本」「GPA○以上」といった情報だけを見て、自分が返還免除の対象になるか判断するのは避けましょう。
「論文1本」「GPA○以上」だけでは判断できない
例えば、ある大学院では学会発表や論文掲載を重視している一方、別の大学院では授業成績や研究活動なども含めて総合的に評価している可能性があります。
したがって、返還免除を目指す場合は、全国共通の「合格ライン」を探すよりも、自分が在籍する大学院の評価項目を確認することが重要です。
自分の大学院の評価項目を確認する方法
具体的な評価項目や申請書類、申請期限は、所属大学院の奨学金担当窓口や学生課などに確認しましょう。
確認する際は、次の4点を押さえておくとスムーズです。
- 返還免除の申請対象となる年度
- 大学院が設定している評価項目
- 業績を証明するために必要な資料
- 大学への申請期限
JASSOも、業績がどの程度高く評価されるかについては「各大学院で基準を定めています」と案内しています。
返還免除は貸与終了時に申請する
返還免除を受けるには、業績を挙げるだけでなく、所定の時期に申請する必要があります。
基本的な流れは次のとおりです。
- 大学院から返還免除の申請案内を確認する
- 業績と証明資料を準備する
- 大学へ返還免除を申請する
- 大学の学内選考を経てJASSOへ推薦される
- JASSOの認定委員会による審議を経て結果が決まる
JASSOによると、大学は学内選考委員会において申請者の業績を総合的に評価し、JASSOへ推薦します。その後、JASSOの業績優秀者奨学金返還免除認定委員会の審議を経て、返還免除者が決定されます。
詳細はJASSOの「貸与終了時の返還免除の申請から認定までの流れ」で確認できます。
申請期限は大学ごとに確認する
返還免除の申請時期について、JASSOが示すスケジュールだけでなく、所属大学院の案内を確認することが重要です。
大学では学内選考や推薦のための期限を設定するため、JASSOへの推薦期限よりも前に申請する必要があります。
「卒業してから申請すればよい」と考えず、貸与終了年度になったら大学院からの案内を確認しましょう。
業績を証明する資料を準備する
返還免除の申請では、自分が挙げた業績を確認できる資料の提出が必要になる場合があります。
例えば、論文、学会発表、表彰、著作物、発明、研究・教育活動など、自分がどのような業績を挙げたのかを整理しておきましょう。
ただし、必要な資料や提出方法は大学によって異なるため、大学院から指定された案内を優先してください。
認定結果は例年7月頃に通知される
JASSOでは、認定委員会による返還免除の認定結果を例年7月頃に大学および推薦された申請者へ通知すると案内しています。
なお、大学からJASSOへ推薦されなかった場合は、JASSOから本人への通知は行われないため、大学に確認する必要があります。
また、免除対象者となった場合は、スカラネット・パーソナルにも結果が表示されます。
大学院には返還免除の「内定制度」もある
大学院の奨学金返還免除には、貸与終了時に申請する制度だけでなく、一定の条件を満たす学生を対象に、将来の返還免除をあらかじめ内定する制度もあります。
JASSOでは、修士課程・専門職学位課程について進学時、博士課程について1年次の段階で、貸与終了時に決定する返還免除を内定する制度を設けています。
ただし、内定制度には対象者や申請時期、学業成績、経済状況、進学分野などの要件があります。
そのため、「大学院生なら誰でも申請できる制度」ではありません。
修士課程・専門職学位課程の内定制度については、JASSOの「返還免除内定制度」など、最新の公式情報を確認してください。
大学院の奨学金返還免除を目指すなら業績と申請期限を確認しよう
大学院の第一種奨学金では、特に優れた業績を挙げた学生を対象とする返還免除制度があります。
評価対象となる業績は、学位論文や研究論文だけではありません。授業成績、著作物、発明、TA・RAなどの研究・教育活動、芸術・スポーツ、社会貢献活動なども含まれます。
一方で、「どの業績がどの程度評価されるか」は大学院ごとに異なります。そのため、返還免除を目指す場合は、インターネット上の一般的な基準だけで判断せず、所属大学院の評価項目と申請期限を確認することが大切です。
特に、次の4点は早めに確認しておきましょう。
- 自分が第一種奨学金の返還免除制度の対象になるか
- 所属大学院ではどのような業績を評価しているか
- 業績を証明するために必要な資料は何か
- 返還免除の申請期限はいつか
制度の詳細や最新の手続きについては、JASSO公式サイトと所属大学院からの案内を確認してください。
返還免除について確認するなら
まずは所属大学院の奨学金担当窓口に、返還免除の評価基準・申請期限・必要書類を確認しましょう。制度の概要や評価方法については、JASSO公式サイトでも確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q. 論文が1本あれば大学院の奨学金は返還免除されますか?
いいえ、論文1本だけで全国一律に返還免除が決まるわけではありません。論文は評価対象の一つですが、具体的な評価項目や評価方法は各大学院が設定しています。学会発表、学術雑誌への掲載、論文の評価など、複数の要素が評価される場合があります。
Q. GPAが高ければ奨学金の返還免除を受けられますか?
授業科目の成績は返還免除における業績の一つですが、GPAだけで全国共通の免除基準が設定されているわけではありません。具体的な評価方法は所属大学院に確認してください。
Q. 博士課程では論文が重視されますか?
はい。JASSOは博士(後期)課程について、原則として「学位論文その他の研究論文」の業績を評価対象とする必要があるとしています。ただし、実際の評価項目や評価方法については、所属大学院の基準を確認する必要があります。
参考資料・公式情報
- 日本学生支援機構(JASSO)|特に優れた業績による返還免除の概要
- 日本学生支援機構(JASSO)|特に優れた業績と評価方法
- 日本学生支援機構(JASSO)|貸与終了時の返還免除の申請から認定までの流れ
- 日本学生支援機構(JASSO)|修士課程及び専門職学位課程の返還免除内定制度
- 日本学生支援機構(JASSO)|認定結果の公表
※返還免除の具体的な評価項目、申請期限、必要書類などは大学院によって異なる場合があるため、申請時は所属大学院およびJASSOの最新情報を確認してください。