職業訓練を受けたいものの、「訓練期間中の生活費や受講費用を奨学金でまかなえるのか」と悩んでいる方もいるでしょう。
結論からいうと、職業訓練を受ける人が一律に日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を利用できるわけではありません。職業訓練の種類や雇用保険の受給状況などによって、利用できる支援制度が異なります。
代表的な制度として、職業訓練受講給付金、雇用保険の基本手当・受講手当、求職者支援資金融資、技能者育成資金融資、リ・スキリング等教育訓練支援融資などがあります。
また、職業訓練ではなく、奨学金の対象となる専門学校などへ進学する場合は、JASSOの給付型・貸与型奨学金を利用できる可能性があります。
この記事の要約
- 職業訓練を受けるだけでJASSOの奨学金を利用できるわけではない
- 雇用保険を受給できない人は「職業訓練受講給付金」を確認する
- 雇用保険の受給資格がある人は、基本手当などを確認する
- 生活費が不足する場合は「求職者支援資金融資」などの融資制度もある
- 専門学校などへの進学なら、JASSOの対象校・対象課程か確認する
職業訓練で奨学金は利用できる?まず知っておきたい基本
職業訓練と奨学金は、同じ「学ぶためのお金」に見えても制度上は別物です。
JASSOの奨学金は、大学・短期大学・高等専門学校・専門課程を置く専修学校など、一定の学校に在学する学生を対象としています。そのため、ハローワークなどを通じて受講する一般的な職業訓練について、「職業訓練だからJASSOの奨学金が使える」と考えることはできません。
JASSOの給付奨学金についても、進学先の学校が対象校として国または自治体の確認を受けていることが必要です。
一方、職業訓練を受ける人向けには、厚生労働省の制度を中心に、訓練期間中の生活を支援する給付金や融資制度が用意されています。
したがって、「職業訓練に奨学金があるか」だけを見るのではなく、自分が受ける訓練の種類と現在の雇用保険の状況を確認することが重要です。
職業訓練で利用できる主な給付金・融資制度
職業訓練に関係する主な支援制度を整理すると、次のようになります。
| 制度 | 主な対象 | 支援内容 | 返済 |
|---|---|---|---|
| 職業訓練受講給付金 | 一定の要件を満たす求職者など | 職業訓練受講手当 月10万円など | 原則不要 |
| 雇用保険の基本手当・受講手当など | 雇用保険の受給資格がある人など | 基本手当、受講手当、通所手当など | 原則不要 |
| 求職者支援資金融資 | 職業訓練受講給付金を受給する人など | 生活費を融資 | 必要 |
| 技能者育成資金融資 | 一定の職業訓練を受ける訓練生 | 訓練に必要な資金を融資 | 必要 |
| リ・スキリング等教育訓練支援融資 | 一定の教育訓練を受ける人 | 教育訓練費用・生活費を融資 | 必要 |
| JASSO奨学金 | 対象となる学校・課程の学生 | 給付・貸与 | 制度による |
どの制度を利用できるかは、職業訓練の種類、雇用保険の受給資格、収入、世帯状況などによって異なります。
職業訓練受講給付金とは?月10万円の給付を受けられる場合がある
職業訓練を受けながら生活費の支援を受けたい場合、まず確認したいのが職業訓練受講給付金です。
厚生労働省の求職者支援制度では、雇用保険を受給できない人などが、一定の要件を満たすことで月10万円の職業訓練受講手当を受けながら、無料の職業訓練を受講できます。
さらに、要件を満たせば通所手当や寄宿手当も支給されます。
2026年度の主な支給内容は以下のとおりです。
| 手当 | 内容 |
|---|---|
| 職業訓練受講手当 | 月10万円 |
| 通所手当 | 訓練施設への通所に必要な交通費など。月額上限42,500円 |
| 寄宿手当 | 月10,700円 |
ただし、月10万円を受け取るには一定の支給要件を満たす必要があります。本人の収入や世帯収入、金融資産、出席状況などが確認されるため、単純に「失業していれば受給できる」という制度ではありません。
また、支給要件を満たさない場合でも、職業訓練自体を無料で受講できるケースがあります。
最新の対象要件や手続きについては、厚生労働省の「求職者支援制度のご案内」を確認してください。
雇用保険を受給できる人は基本手当などを確認
離職後に職業訓練を受ける場合、雇用保険の受給資格があるかどうかによって利用できる制度が変わります。
雇用保険の受給資格がある人は、一定の要件を満たすことで基本手当を受給しながら公共職業訓練などを受講できる場合があります。
訓練中には、基本手当のほか、受講手当や通所手当などが支給される場合もあります。
一方、雇用保険を受給できない人については、求職者支援制度の利用を検討します。
つまり、職業訓練を申し込む前に、「雇用保険を受給できるのか」「求職者支援制度の対象になるのか」をハローワークで確認することが重要です。
求職者支援資金融資は生活費が不足するときの選択肢
職業訓練受講給付金を受給していても、訓練期間中の生活費が足りない場合があります。
そのような場合に利用できる可能性があるのが、求職者支援資金融資です。
厚生労働省によると、貸付額は単身者の場合は月5万円、扶養家族がいる場合は月10万円を上限として、給付金の受講予定訓練月数に応じて融資されます。
ただし、これは給付金ではなく返済が必要な融資です。利率などの条件もあるため、利用前に返済額まで確認しましょう。
制度の詳細は、厚生労働省の求職者支援制度の案内で確認できます。
技能者育成資金融資とは?対象となる職業訓練で利用できる
技能者育成資金融資は、一定の公共職業能力開発施設などで職業訓練を受ける訓練生を対象とした融資制度です。
経済的な理由によって訓練を受けることが難しい訓練生を対象に、労働金庫から有利子・無担保で一定額まで融資されます。
2026年度の融資上限額は、訓練課程や自宅通校・自宅外通校によって異なります。
| 訓練課程 | 自宅通校 | 自宅外通校 |
|---|---|---|
| 普通課程の普通職業訓練 | 年36万円 | 年41万円 |
| 総合課程・専門課程・応用課程の高度職業訓練 | 年60万円 | 年69万円 |
| 指導員養成課程・高度養成課程 | 年60万円 | 年69万円 |
融資利率は年2%の固定金利で、返済期間は訓練終了後10年間が上限です。
ただし、すべての職業訓練が対象になるわけではありません。自分が受講する訓練が対象となるかを事前に確認してください。
リスキリング等教育訓練支援融資も選択肢になる
職業訓練や教育訓練にかかる費用だけでなく、訓練期間中の生活費も借りたい場合には、リ・スキリング等教育訓練支援融資があります。
この制度では、一定の要件を満たす人を対象に、教育訓練費用と訓練期間中の生活費を融資します。
| 項目 | 融資上限 |
|---|---|
| 教育訓練費用 | 年間120万円 |
| 生活費 | 年間120万円(月10万円) |
原則として最大2年間分が対象ですが、年収200万円未満の人や離職者、収入証明がない人は最大1年間分となります。
融資利率は年2%の固定金利です。また、訓練を修了して就職し、一定の賃金上昇などの条件を満たした場合には、債務残高の一部が返済免除となる仕組みもあります。
ただし、この制度も「誰でも利用できる奨学金」ではなく、対象となる教育訓練や申込要件が定められています。
専門学校などに進学するならJASSO奨学金を確認
ここまで紹介した制度とは別に、職業訓練ではなく専門学校などの学校に進学して資格や技能を身につける場合は、JASSOの奨学金を利用できる可能性があります。
JASSOでは、大学・短期大学・高等専門学校・専門課程を置く専修学校などに在学する人を対象とした給付型・貸与型奨学金があります。
ただし、専門学校であればすべての学科が自動的に対象になるわけではありません。特に給付奨学金については、進学先の学校が対象校として確認を受けていることが必要です。
そのため、専門学校への進学を考えている場合は、学校名だけで判断せず、希望する学科・課程が奨学金の対象となるかまで確認しましょう。
JASSO「給付奨学金は、全ての大学・短大・高専・専門学校が対象ですか」
JASSO「大学・短大・専門課程を置く専修学校・高等専門学校に在学中の方」
職業訓練の費用を支援してもらうための確認手順
制度が多いため、「結局、自分は何を確認すればいいのか」と迷う人もいるでしょう。次の順番で確認すると整理しやすくなります。
- 受講する訓練の種類を確認する
求職者支援訓練なのか、公共職業訓練なのか、公共職業能力開発施設などで行われる訓練なのかを確認します。 - 雇用保険の受給資格を確認する
雇用保険の基本手当を受給できる状態なのか、求職者支援制度の対象になるのかをハローワークに確認します。 - 職業訓練受講給付金の要件を確認する
本人収入、世帯収入、金融資産、出席状況など、給付金の支給要件を確認します。 - 生活費が不足する場合は融資制度を確認する
求職者支援資金融資など、利用できる融資制度があるかを確認します。 - 専門学校などへの進学ならJASSOを確認する
学校・学科がJASSOの対象となるか、学校の奨学金担当窓口に確認します。
特に重要なのは、訓練に申し込む前にハローワークや訓練実施機関へ相談することです。
職業訓練と奨学金についてよくある質問
職業訓練なら誰でも月10万円もらえますか?
いいえ。職業訓練受講給付金の月10万円は、一定の支給要件を満たした場合に受け取れるものです。本人や世帯の収入、金融資産、訓練への出席状況などが確認されます。
職業訓練を受ければJASSOの奨学金を借りられますか?
職業訓練を受けることだけを理由に、JASSOの奨学金を利用できるわけではありません。JASSOの対象となる学校・課程に在学していることなど、制度ごとの要件を満たす必要があります。
給付金と融資は何が違いますか?
給付金は、要件を満たして支給された場合、原則として返済する必要がありません。一方、融資は借りたお金なので、原則として返済が必要です。
「職業訓練中のお金が足りない」という理由だけで融資を選ぶのではなく、まず利用できる給付制度がないか確認することが大切です。
職業訓練の支援制度はどこに相談すればいいですか?
求職者支援制度や公共職業訓練については、まずハローワークへの相談がおすすめです。受講予定の訓練がどの制度に該当するのか、雇用保険の給付を受けられるのかなどを確認できます。
まとめ|職業訓練では「奨学金」だけでなく給付金・融資を確認しよう
職業訓練を受ける場合、一般的な学生向け奨学金であるJASSOをそのまま利用できるとは限りません。
一方で、職業訓練を受ける人を対象として、さまざまな経済的支援が用意されています。
- 雇用保険を受給できない人は「職業訓練受講給付金」を確認する
- 雇用保険の受給資格がある人は基本手当などを確認する
- 生活費が不足する場合は「求職者支援資金融資」を確認する
- 対象となる職業訓練では「技能者育成資金融資」を確認する
- 一定の教育訓練では「リ・スキリング等教育訓練支援融資」も選択肢になる
- 専門学校などへの進学なら、JASSOの対象校・対象課程か確認する
制度によって対象者や金額、申請時期、返済の有無が異なるため、「年収だけ」「職業訓練を受けるだけ」といった一つの条件だけで判断することはできません。
まずは受講予定の訓練を確認したうえで、ハローワークや訓練実施機関に相談し、自分が利用できる制度を一つずつ確認しましょう。