リスキリングで大学や大学院、専門学校、教育訓練などに通う場合、奨学金や給付金などの経済的支援を利用できるケースがあります。ただし、「リスキリングをする人なら誰でも利用できる専用の奨学金」があるわけではありません。
社会人の学び直しでは、日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金のほか、厚生労働省の教育訓練給付金、リ・スキリング等教育訓練支援融資、学校独自の奨学金などを検討できます。
この記事では、2026年10月時点の公的情報をもとに、リスキリングに利用できる主な支援制度の違いや、返済の有無、利用前に確認したいポイントを解説します。
この記事の要約
- 社会人のリスキリングでも、条件を満たせば奨学金を利用できる場合があります。
- JASSOの貸与奨学金は、社会人の学び直しにも活用できます。
- 返済不要の支援を探すなら、教育訓練給付金も重要な選択肢です。
- 一定の求職者等は、教育訓練費用と生活費を対象とする「リ・スキリング等教育訓練支援融資」を利用できる場合があります。
- 制度によって対象となる学校・講座、申請時期、年齢、雇用保険の加入状況などが異なるため、申し込み前に公式情報を確認することが重要です。
リスキリングに奨学金は使える?
リスキリングのために大学や大学院、専門学校などで学ぶ場合、一定の条件を満たせば奨学金を利用できる可能性があります。
文部科学省の「マナパス」では、社会人の学びへの経済的支援として、教育訓練給付制度、JASSOの奨学金、大学・地方公共団体等の奨学金制度、教育ローンなどが紹介されています。
文部科学省「社会人の学びへの経済的支援」によると、JASSOの貸与奨学金は、大学、短期大学、大学院、高等専門学校、専修学校などで学ぶ人が一定の要件を満たした場合に利用できます。また、貸与奨学金の審査では年齢上限を設けていないため、社会人の学び直しにも活用できます。
ただし、社会人であれば自動的に奨学金を利用できるわけではありません。学力や家計などの要件があり、進学先や申込区分によって条件も異なります。
そのため、「リスキリングだから奨学金を借りられる」と考えるのではなく、「どこで何を学ぶのか」「どの制度が対象になるのか」から確認することが重要です。
JASSOの貸与奨学金は社会人の学び直しにも利用できる
JASSOの国内向け貸与奨学金には、主に無利子の第一種奨学金と、有利子の第二種奨学金があります。いずれも貸与型のため、原則として卒業後などに返還する必要があります。
JASSO「貸与奨学金(返済必要)」では、大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)・大学院などで学ぶ人向けの制度が案内されています。
特に社会人が大学院などへ進学して学び直す場合には、JASSOの奨学金が選択肢になることがあります。
一方、家計基準などは申込者の状況や学校区分によって異なります。例えば大学院の第一種・第二種奨学金では、本人や配偶者の住民税情報などをもとに貸与額算定基準額が算出されます。
したがって、「年収が○万円なら必ず利用できる」といった単純な判断はできません。最新の募集要項やJASSOの基準を確認しましょう。
過去にJASSOを利用した人は「再貸与」が利用できる場合もある
過去にJASSOの奨学金を借りていた人が、社会人になってから再び大学などで学び直す場合には、一定の要件を満たすことで「再貸与」を利用できる場合があります。
JASSO「奨学金の貸与をもう一度受けたい皆さんへ」では、過去に修業年限分の奨学金の貸与を受けた人でも、大学等に入り直した際に一定の要件を満たせば、改めて貸与を受けられる制度が案内されています。
過去に奨学金を利用した経験があるからといって、最初から対象外と考える必要はありません。再び学ぶ場合は、進学先の学校の奨学金窓口に確認しましょう。
リスキリングでは奨学金以外の支援制度も確認しよう
社会人がリスキリングの費用を抑える場合、奨学金だけを探すのではなく、返済不要の給付金や融資制度も含めて比較することが重要です。
| 制度 | 主な特徴 | 返済 | 主な確認先 |
|---|---|---|---|
| JASSO貸与型奨学金 | 大学・大学院・専門学校等で学ぶ人向け | 原則必要 | JASSO・学校 |
| 学校・自治体・民間の奨学金 | 給付型・貸与型など制度によって異なる | 制度による | 学校・各団体 |
| 教育訓練給付金 | 指定された教育訓練の受講費用の一部を支給 | 不要 | 厚生労働省・ハローワーク |
| リ・スキリング等教育訓練支援融資 | 教育訓練費用と訓練期間中の生活費を融資 | 原則必要 | ハローワーク・労働金庫 |
このように、同じ「学びにかかる費用を支援する制度」でも、仕組みは大きく異なります。
特に、返済不要の制度を利用できる可能性がある場合は、まず給付制度の対象になるかを確認し、そのうえで不足する費用について奨学金や融資を検討するとよいでしょう。
教育訓練給付金はリスキリング費用の有力な支援制度
社会人がリスキリングを考えるとき、奨学金とあわせて確認したいのが厚生労働省の教育訓練給付制度です。
教育訓練給付制度は、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講・修了した場合などに、受講者本人が支払った教育訓練経費の一部が支給される制度です。
厚生労働省「教育訓練給付制度」では、教育訓練の内容やキャリア形成への効果などに応じて、次の3種類が案内されています。
- 専門実践教育訓練
- 特定一般教育訓練
- 一般教育訓練
専門実践教育訓練給付金
専門実践教育訓練は、労働者の中長期的なキャリア形成に資する教育訓練が対象です。
2026年10月時点では、一定の条件を満たす場合、教育訓練経費の50%、年間上限40万円が基本となります。資格取得や就職などの条件を満たした場合には70%、さらに受講開始前と比較して賃金が5%以上上昇するなどの条件を満たした場合には80%、年間上限64万円まで支給される仕組みがあります。
ただし、すべての学校や講座が対象ではありません。厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練であることや、受給資格などの条件を満たす必要があります。
特定一般教育訓練給付金
特定一般教育訓練は、速やかな再就職や早期のキャリア形成に役立つ教育訓練が対象です。
2026年10月時点では、教育訓練経費の40%、上限20万円が基本です。資格取得などを行い、訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として就職するなど、一定の条件を満たす場合は50%、上限25万円まで支給されます。
なお、特定一般教育訓練では受講開始前の手続きが必要になる場合があります。受講することを決めてから慌てて申請するのではなく、早めにハローワークで確認しましょう。
一般教育訓練給付金
一般教育訓練は、専門実践教育訓練や特定一般教育訓練以外の、雇用の安定や就職の促進に資する教育訓練が対象です。
ただし、ここでも重要なのは「自分が受講したい講座が対象かどうか」です。リスキリング目的の講座であっても、すべてが教育訓練給付金の対象になるわけではありません。
受講を検討している講座が決まったら、厚生労働省の教育訓練給付制度の検索システムなどを利用して、対象講座か確認しましょう。
リスキリング等教育訓練支援融資とは?
教育訓練給付金や奨学金だけでは費用をまかなえない場合に確認したいのが、リ・スキリング等教育訓練支援融資です。
この制度は2025年10月に始まったもので、スキルアップなどを目指す人を対象に、教育訓練費用と教育訓練期間中の生活費を融資します。
厚生労働省「リ・スキリング等教育訓練支援融資」によると、主な対象者には、ハローワークに求職の申し込みをしていること、雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者ではないこと、労働の意思と能力があることなどの要件があります。
さらに、訓練開始時点で過去3年以上の就業経験があること、訓練開始前にキャリアコンサルティングを受けてジョブ・カードを作成すること、年齢要件などもあります。
したがって、在職中のすべての社会人が利用できる制度ではありません。対象になるかはハローワークで確認する必要があります。
教育訓練費用だけでなく生活費も対象になる
この制度の特徴は、教育訓練にかかる費用だけでなく、訓練期間中の生活費も融資対象となる点です。
教育訓練費用については年間120万円、生活費については月10万円を限度として融資を受けられます。対象期間などによって上限は異なり、年収200万円未満の人や離職者、収入証明がない人については原則として最大1年間分、それ以外の場合は最大2年間分が対象となります。
ただし、これは給付金ではなく融資です。原則として返済が必要なので、将来の返済額を考慮して利用する必要があります。
一定の条件を満たすと一部返済免除がある
リスキリング等教育訓練支援融資には、一定の条件を満たした場合に債務残高の一部が免除される仕組みがあります。
厚生労働省によると、指定された教育訓練を修了したこと、訓練終了後1年以内に雇用保険被保険者として就職し1年以上継続的に雇用されたこと、訓練修了後の賃金が訓練開始前と比較して5%以上上昇したことなど、複数の条件を満たす必要があります。
条件を満たした場合、賃金が5%以上上昇すると残債務の30%、10%以上上昇すると残債務の50%が一部免除される仕組みです。ただし、貸付時点の年収が500万円以上の場合は、一定の条件を満たしても返済免除の対象外となります。
制度には細かな要件があるため、利用を検討する場合は必ず厚生労働省の最新情報と、住所地を管轄するハローワークで確認してください。
リスキリングの支援制度を利用する前に確認したい5つのポイント
リスキリングの費用支援を探すときは、制度名から探すよりも、まず自分の学び方や状況を整理するとスムーズです。
1.何を学ぶのかを決める
最初に、大学、大学院、専門学校、資格講座、職業訓練など、どの教育機関・講座で学ぶのかを確認しましょう。
支援制度によって対象となる教育機関や訓練が異なるため、「リスキリングをする」という情報だけでは利用できる制度を判断できません。
2.受講したい講座が指定講座か確認する
教育訓練給付金を利用する場合、厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練が対象になります。
受講したい講座が決まっている場合は、講座名や教育訓練施設をもとに対象講座か確認しましょう。
3.自分が制度の対象者か確認する
同じ講座を受講する場合でも、雇用保険の加入期間や離職状況、年齢、過去の就業経験などによって利用できる制度が変わる場合があります。
特に教育訓練給付金は雇用保険との関係が深く、リ・スキリング等教育訓練支援融資には求職申込みや就業経験などの条件があります。
4.申請時期を確認する
支援制度では、受講後に申請できるものだけでなく、受講開始前に手続きが必要なものがあります。
「講座に申し込んでから支援制度を探す」のではなく、受講を決める前に利用できる制度と申請期限を確認することが大切です。
特に教育訓練給付金の一部やリスキリング等教育訓練支援融資では、受講前の確認・手続きが重要になります。
5.複数制度を併用できるか確認する
奨学金、給付金、融資をすべて自由に併用できるとは限りません。
例えば、リスキリング等教育訓練支援融資には、融資対象となる費用について給付または融資を受ける制度を利用していないことなどの要件があります。
複数の支援制度を検討している場合は、それぞれの制度の併用条件を確認しましょう。
リスキリングの費用支援は「給付→奨学金→融資」の順に確認しよう
リスキリングの費用を抑えたい場合、まず確認したいのは返済不要の給付制度です。
教育訓練給付金の対象になる講座であれば、受講費用の一部について給付を受けられる可能性があります。そのため、希望する講座が決まったら、最初に教育訓練給付金の対象か確認するとよいでしょう。
大学や大学院などへ進学する場合は、JASSOの貸与奨学金や学校独自の奨学金も確認します。
さらに、求職中など一定の条件に該当し、教育訓練費用や生活費まで必要な場合は、リ・スキリング等教育訓練支援融資を検討する方法があります。
ただし、融資は返済が必要です。利用する場合は、借入額だけでなく、利率、返済期間、将来の収入なども考えて判断しましょう。
支援制度を探す基本的な順番
- 学びたい学校・講座を決める
- 教育訓練給付金の対象か確認する
- JASSOや学校独自の奨学金を確認する
- 自治体・民間団体の支援制度を確認する
- 不足する費用について融資制度を検討する
リスキリングと奨学金についてよくある質問
リスキリングをする人なら誰でも奨学金を利用できますか?
いいえ。リスキリングをすることだけを理由に、誰でも奨学金を利用できるわけではありません。
JASSOの場合は、進学する学校の種類や申込区分に応じて、学力・家計などの条件があります。学校独自や民間団体の奨学金も、それぞれ募集条件が異なります。
社会人でもJASSOの奨学金を利用できますか?
一定の条件を満たせば利用できる場合があります。文部科学省は、JASSOの貸与奨学金について年齢上限を設けていないため、社会人の学び直しへの活用が可能と案内しています。
ただし、年齢だけで利用可否が決まるわけではなく、学力や家計などの要件があります。進学先の学校とJASSOの最新情報を確認してください。
奨学金と教育訓練給付金は同じ制度ですか?
同じではありません。
JASSOの貸与奨学金は、必要な資金を借りる仕組みで、原則として返還が必要です。一方、教育訓練給付金は、一定の条件を満たした場合に教育訓練経費の一部が支給される制度で、原則として返済する必要はありません。
仕事を辞めてリスキリングする場合も支援を受けられますか?
制度によって異なります。
教育訓練給付金には離職者が対象となる場合があります。また、リ・スキリング等教育訓練支援融資は、ハローワークへの求職申込みなどを要件とする制度です。
一方で、在職者を前提とする制度もあるため、「離職したから使える」「離職したから使えない」と一律には判断できません。現在の雇用保険の状況などを確認して、ハローワークへ相談しましょう。
まとめ|リスキリングは奨学金だけでなく支援制度を比較しよう
リスキリングで大学や大学院、専門学校、教育訓練などに通う場合、条件を満たせば奨学金や給付金などの経済的支援を利用できる可能性があります。
特に社会人の場合は、JASSOの貸与型奨学金だけでなく、厚生労働省の教育訓練給付金も重要な選択肢です。教育訓練給付金は返済不要の支援であるため、対象となる講座を受講する場合は優先的に確認しましょう。
また、2025年10月からは「リ・スキリング等教育訓練支援融資」も始まっています。一定の求職者等を対象として、教育訓練費用に加えて訓練期間中の生活費も融資する制度ですが、原則として返済が必要です。
重要なのは、「リスキリングだから奨学金」と決めつけず、自分が受講する学校・講座と現在の就業状況から利用できる制度を確認することです。
まずは学びたい講座を決め、教育訓練給付金の対象か、JASSOや学校独自の奨学金を利用できるか、その他の支援制度がないかを確認しましょう。
制度の条件や金額、申請期限は変更される場合があります。申し込みの際は、必ず各制度の公式情報や学校、ハローワークの窓口で最新情報を確認してください。